炭水化物、インスリン抵抗性、メタボリック症候群とは? わかりやすく解説

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炭水化物、インスリン抵抗性、メタボリック症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 10:15 UTC 版)

悪性腫瘍」の記事における「炭水化物、インスリン抵抗性、メタボリック症候群」の解説

1980年代スタンフォード大学教授内分泌学者、ジェラルド・リーヴン(Gerald Reaven)は、「高血糖インスリン(Insulin)の過剰分泌ならびにインスリン抵抗性(Insulin Resistance)と高インスリン血症(Hyperinsulinemia)こそがメタボリック症候群(Metabolic Syndrome)の根本的な原因である」と考え、「高血糖とインスリン過剰分泌もたらすのは炭水化物および砂糖果糖である」とした。 1988年アメリカ糖尿病協会(The American Diabetes Association)が主催した「バンティング・レクチャー」(Banting Lecture, インスリンの共同発見者の1人フレデリック・バンティング(〈Frederick Banting, 1891~1941〉に敬意払っている)に出席したリーヴンは、メタボリック症候群肥満糖尿病高血圧とも密接に関係している趣旨述べた炭水化物食べて高血糖になり、そのたびインスリン注射する、というのを繰り返していると、さまざまな合併症や癌を患う危険性上昇しインスリン強制的な注射インスリン強制分泌促進する薬物服用は、身体深刻な不利益もたらすインスリン療法受けている患者は、インスリン療法受けていない患者比べて心血管疾患(Cardiovascular disease)で死亡する危険性上昇する。さらに、インスリン高血糖抑え込もうとすると、心血管疾患発症率低下せず、死亡率上昇する体重については、インスリン注射していただけ10以上も増加した血糖値正常範囲内(9099であっても血糖値90未満人間比較すると、膵臓癌累積発生率有意増加し空腹時の血糖値が110を超えると、あらゆる癌で死亡する確率有意上昇する。「GLUT5」と呼ばれる果糖輸送体乳癌発生に関わっている。 たとえ運動していても、炭水化物食べている限り高血糖防げず、インスリン感受性運動終えた途端に低下するインスリン抵抗性高くなる)。インスリン抵抗性運動では防げない。 「インスリン感受性が低い」ということは、「インスリン抵抗性が高い」(インスリン効き目が悪い)状態を意味する炭水化物が多い食事高血糖有意惹き起こす砂糖を含む飲み物高血糖明確な原因となる。 インスリン抵抗性に伴い血糖値慢性的に高い状態が続くと、高血糖全身酸化ストレス(Oxidative Stress)を与え体内AGEsAdvanced Glycation End Products, 「最終糖化産物」と呼ばれる)が作られやすくなる。これは身体の老化強力に促進する物体で、タンパク質に糖が結合することでタンパク質変性する果糖AGEsブドウ糖以上に強力に生成しブドウ糖摂取したときの10倍もできやすくなる。インスリン全身脂肪細胞強く作用し摂取した炭水化物中性脂肪合成して脂肪細胞内に閉じ込め脂肪細胞肥大していく。脂肪細胞は、肥大するにつれてサイトカイン・ストーム」(Cytokine Storm, 「免疫機能暴走」)を惹き起こし、これは全身有害な影響もたらすサイトカイン・ストームは「高サイトカイン血症」(Hypercytokinemia)とも呼ばれ、もともと身体備わっている免疫系統(Immune System)が「サイトカイン」と呼ばれる炎症信号伝達分子制御不能状態で過剰に放出する現象であり、ヒトや動物みられる生理的な反応である。サイトカインそのもの感染に対して身体が示す免疫反応一部であるが、この分子が突然大量に放出されると、多臓器不全(Multisystem Organ Failure)を惹き起こしたり、死につながる。そして、メタボリック症候群患っているということは身体インスリン抵抗性惹き起こしていることと同義である。さらにメタボリック症候群は、肥満糖尿病アルツハイマー病さらには各種の癌とも密接に関わっている。また、砂糖および果糖は脳においてもインスリン抵抗性惹き起こし、脳の神経組織破壊しアルツハイマー病惹き起こす直接の原因となる。 砂糖および果糖インスリン感受性低下させ、内臓脂肪蓄積促進し空腹時の血糖値インスリン濃度上昇させ、肝臓脂肪蓄積させ、ミトコンドリア機能妨害し炎症誘発刺激し脂質異常症インスリン抵抗性惹き起こし糖尿病発症促進する砂糖膵臓癌初めとする各種の癌を患う可能性高める。これの摂取を断つことが、癌の予防治療への取り組みとなりうることを示唆している。砂糖摂取を減らすことにより、脂肪肝肥満各種疾患防げ可能性出てくる。 5大陸18か国に住む135,335人を対象行われた大規模な疫学コホート研究結果が『The Lancet』にて発表された(2017年)。これは炭水化物摂取量および脂肪の摂取量と、心血管疾患罹るリスクおよびその死亡率との関係についての調査であった。これによると、炭水化物摂取増やせ増やすほど死亡率上昇し脂肪の摂取増やせ増やすほど死亡率低下するという結果示された。とくに、飽和脂肪酸摂取量多ければ多いほど、脳卒中罹るリスク低下したまた、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸問わず脂肪の摂取死亡率低下させ、心筋梗塞および心血管疾患発症とは何の関係も無かった飽和脂肪酸摂取は、冠状動脈性心臓病脳卒中心血管疾患発症とは何の関係も無く飽和脂肪酸がこれらの病気明確に関係していることを示す証拠は無い。 また、多価不飽和脂肪酸摂取量増やし飽和脂肪酸摂取量減らしても、心血管疾患発症リスク減らせない。 肥満インスリン抵抗性メタボリック症候群2型糖尿病患っている患者が、炭水化物摂取制限し脂肪置き換えて食べると、最大限効果得られる可能性がある。さらに、84時間亘って絶食状態にあった被験者と、84時間亘って脂肪「だけ」を摂取し続けた被験者血中の状態は「全く同じ」であった双方とも、血糖値インスリン濃度低下し遊離脂肪酸ケトン体濃度脂肪分解速度いずれも上昇した体重減らしたい人、心血管疾患危険因子減らしたい人にとって、炭水化物少なく脂肪トランス脂肪酸を除く全ての脂肪飽和脂肪酸一価不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸)が多い食事はその選択肢となりうる。 炭水化物は、脂肪タンパク質比べてインスリン分泌はるかに大きな影響を及ぼすインスリン食事における満腹感減少させ、摂食行動にも影響を及ぼす炭水化物摂取を減らすと、インスリン抵抗性緩和される炭水化物制限する食事は、インスリン濃度が高い患者有益である証拠示された。食後の血糖値の上昇とインスリン分泌を最も強力に促進するのは炭水化物である。タンパク質インスリン分泌刺激するが、インスリン拮抗する異化ホルモングルカゴン(Glucagon)の分泌誘発する一方食べ物含まれる脂肪分は、インスリン分泌にほとんど影響与えない。この生理学的な事実は、低糖質・高脂肪食が人体有益であることを示す理論的根拠となる。 炭水化物少なく脂肪が多い食事は、空腹感満腹感大い影響与える。炭水化物多く脂肪少な食事カロリー制限食)と比較すると、高脂肪食は体脂肪減少させ、身体のエネルギー消費量増加促進するまた、炭水化物制限する食事は、低脂肪食よりも大幅に体重減らし心血管疾患危険因子減少させる炭水化物少な食事は、血糖値とその制御大幅な改善つながり薬物服用回数減らせるだけでなく、服用の必要も無くなる可能性があり、この食事法は2型糖尿病改善回復にも効果的である証拠示された。 ケトン食ミトコンドリア機能血糖値改善し酸化ストレス減少させ、糖尿病性心筋症(Diabetic Cardiomyopathy)から身体保護する作用がある。また、ケトン食記憶力改善死亡率の低下もたらし末梢軸索(Peripheral Axons)と感覚機能障害(Sensory Dysfunction)を回復させ、糖尿病合併症防げ可能性出てくる。 ケトン食療法炭水化物徹底的に避け脂肪大量に摂取する)は癌の治療予防に有効である可能性示している。癌細胞ケトン体エネルギー源にはできないため、ケトン食療法を「癌の治療手段として採用すべきだ」と考え研究者もいる。 ケトン食含めて炭水化物制限する食事法は安全であり、長期亘って健康を維持しさまざまな病理学的状態を防止または逆転させる力がある。ケトン食止めると(炭水化物摂取増やし脂肪の摂取を減らすと)、片頭痛癲癇発作再発する。 「炭水化物肥満およびそれに伴う疾患主要な推進力であり、精製され炭水化物糖分過剰摂取を減らすべきである」と結論付け炭水化物を「Carbotoxicity」(「炭水化物には毒性がある」)という造語表現する研究者もいる。 砂糖および果糖摂取肝臓への脂肪蓄積促すが、炭水化物および砂糖少な食事を摂ると、蓄積した脂肪急速に減少することが確認された。外部からの資金提供を受けることなく書かれ研究論文著者は、「身体の健康を守るために砂糖摂取制限すべきである」と結論付けている。 オーストリア医師ヴォルフガング・ルッツ(Wolfgang Lutz, 1913-2010)は、1967年に『Leben ohne Brot』(『パンの無い暮らし』)を出版し、「炭水化物摂取を減らすことこそが、脂肪燃焼させる唯一の方法である」「この食事法により、肥満糖尿病心臓病、癌を予防できる」「狩猟採集生活者として暮らしてきた人類動物の肉長き亘って食べてきた」「食べ物含まれる脂肪は、ほとんどの慢性疾患とは何の関係も無い」と断言している(ルッツ炭水化物1日摂取上限を「72gまで」と定めた)。ルッツによれば40年間で10000人を超える患者診察しクローン病潰瘍性大腸炎、胃疾患痛風メタボリック症候群癲癇多発性硬化症・・・この食事法を処方することでこれらの慢性疾患治療したという。 クイーン・エリザベス大学栄養学教授ジョン・ユドキンJohn Yudkin)は、著書Pure, White and Deadly』(1972)の中で、「肥満心臓病惹き起こす犯人砂糖であり、食べ物含まれる脂肪分は、これらの病気とは何の関係も無い」と断じている。1960年代、ユドキンはミネソタ大学生理学者アンセル・キース(Ancel Keys)と、「砂糖・脂肪論争」を繰り広げた。この論争では、「心臓病惹き起こす原因は(食べ物含まれる脂肪分にある」というキース主張通り、ユドキンの「砂糖原因である」との主張は通らなかった。1970年代後半アメリカ合衆国政府は「脂肪の摂取減らし炭水化物摂取増やせ」と国民呼びかけたが、肥満糖尿病心臓病患う国民の数は増加一途を辿るようになったサイエンス・ジャーナリストゲアリー・タウブス(Gary Taubes)は、炭水化物身体太らせるだけでなく、肥満心臓病糖尿病高血糖インスリン抵抗性メタボリック症候群原因であり、最終的には癌をも惹き起こす根本的な原因でもある趣旨明言しており、「砂糖肥満糖尿病心臓病メタボリック症候群引き起こす原因であり、これにはインスリン抵抗性が関わっている」「砂糖インスリン抵抗性直接の原因となる」「インスリン抵抗性は癌の原因となる」と断じている。

※この「炭水化物、インスリン抵抗性、メタボリック症候群」の解説は、「悪性腫瘍」の解説の一部です。
「炭水化物、インスリン抵抗性、メタボリック症候群」を含む「悪性腫瘍」の記事については、「悪性腫瘍」の概要を参照ください。

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