民間輸送型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 02:41 UTC 版)
「C-2 (航空機・日本)」の記事における「民間輸送型」の解説
川崎重工では2007年(平成19年)7月に、C-Xの機体フレームを利用した超大型貨物用高速民間輸送機「YCX」を開発し、民間向け貨物航空機事業に進出する方針を固めた。すでに2006年(平成18年)7月に、ファーンボロー国際航空ショーにおいて提案し、ある程度のスペックも公表した。それによると、機体の規模はほぼ変わらない(貨物室両脇にある座席、空挺降下ドア、MWS/RWR/CMDで構成される自機防御システム、編隊維持装置等が民間フレイターには不要)が、最大積載量は37.5t、37tでの航続距離は5,600kmというものだった。(オーバーサイズカーゴの好例である航空機エンジンで最も重いGE90-115B×2基の積載重量は16.4tとなり、この場合の航続距離で8,000km程度に相当する)川崎が狙う市場は積載量40t以下の中小型機で、大型セミトレーラーやトラックそのものを積めるなどの規格外積載能力が高いとして、旅客機を転用したボーイングやエアバスの機体に対抗する。開発に当たっては、XC-2が採用する各種の国産装備は型式証明等で必要な費用などを見た上で、YCXで引き続き採用するか検討し、また、製造や点検修理整備をアウトソーシングするかどうかは、費用と国内産業育成を天秤にかけて検討するなどとし、XC-2の機体をほぼそのまま民間向けへの改修が開発の主体となる。 防衛省からも検討資料が公開されているがファーンボローで川崎が出展した4枚のパネル/パンフで既にイメージは明らかにされており、空自での運用よりも滑走距離の制限を緩和することで最大離陸重量を設計限界までだした提案である。航空会社側がAn-124/Il-76/L-100の後継機候補と見ていることや、An-124では過大な需要にYCXが適していると製造者が考えていることも見て取れる。これによって同クラスの戦術輸送機(A400M/An-70/Il-76)とそれらを上回る高速性能は維持したままで同水準にまで航続距離とペイロードを引き上げており、更に日本の特殊な事情(タイトな航空路、空自基地間定期便での少量貨物の多頻度輸送、予算抑制のための運用性と取得性を考慮)により、数ある軍用貨物輸送機が民間での採用実績が乏しいエンジンを採用している(特にターボプロップ機はその傾向が強い)のに比べて、エンジンが民間で多数採用され運用実績を積み重ねているCF6-80C2を採用している点で優れており、また最大の優位点は高速度なため、いわゆる民間航空路線を使用可能ということである。これらにより結果として民間での導入に対するハードルを下げる機材となった。この特殊な優位性は、そもそも戦術貨物輸送機にターボファンエンジンを導入するという思想が世界に少ないという点から派生してきているが、併せて民間旅客機改造型フレイターに対しては4×4×16mの貨物室へ後部ランプから容積ギリギリの規格外貨物を収納可能な軍用カーゴシップとしての特徴を併せ持つ規格外貨物への対応能力が最大のセールスポイントである。 また、ランプの位置が低いことも民間フレイターには無い特徴であり、リフトローダーの様な特殊な積み降ろし機材を必要としないメリットがある。しかも同等フレイター(同クラスエンジン機材は767-300FやA300-600F)が、LD3コンテナ40個程度積載能力であるのに対して同36個積載(高い荷室高を生かして2段積みオプション:展開式の架台を使い最後部用には揚降機能可能、機内クレーンシステムオプションは2条のレールに4本のクレーンを装備)の一般貨物輸送能力も保持している。 規格外貨物の積載においては、イリューシンのIl-76余剰中古機(200機規模)によって市場が拓かれているが、昨今の航空不況により、運行費の安い新規双発機(777、787等々)は現在大量に発注されており、その航空機のエンジンのサイズ自体が大直径化している(現在の主要航空機エンジンは概ね747Fでしか輸送できない)のを初め大きく市場規模が拡大しつつ有る。また、戦術輸送機故の小規模空港での好運用性(747で車輪当たり重量18-23t、767で14-18t、巨大機A380で26tなものが、XC-2は10t)も滑走路面強度上の優位点である。 自衛隊機の民間転用は初めてで、防衛省や経済産業省も支持する方針とされ、2007年7月4日付け日経新聞によれば、防衛省経理装備局航空機課課長も「民間転用については、データ提供などで可能な限り協力する」としている。また転用の際には川崎も相応の負担をすることを希望している。 民間機仕様については、日本国外への輸出も検討されており、国内外の航空貨物大手に売り込む計画で、2012年(平成24年)の事業化を目指す。今後20年間のオーバーサイズ・カーゴ搭載機の需要の伸びは航空貨物需要の伸びの倍であると期待されており、近々旧ソビエト機の経年が問題になるので更新需要が見込まれる。 しかし需要予測調査の結果、販売期間を30年に設定した場合でも、その需要はわずか約90機(CIS地域35機、北米23機、アフリカ20機、中東12機、欧州1機)に留まるとの厳しい結果が出ている。また1ドル80円で試算した場合、30年間で90機を販売したとすると、1000億円規模の借入金が発生する見込みで、そのブレークイーブンには20年以上もの期間を要することも明らかになった。 2016年の国際航空宇宙展において川崎の担当者は「YCX」はコストが高くなるといった理由から提案を中断していることを述べた。 2017年1月19日、民間転用を事実上断念したことが日経ビジネスの取材により判明した。航空法による型式証明取得の困難さが原因として挙げられている。 YPXとは別に日本航空機開発協会(JADC)では、平成14年(2002年)度よりP-XおよびC-Xを民間旅客機(100席〜150席クラス)へ転用するための開発調査を行った(ただし、P-1の民間転用は改造するにしてもエアバス・ボーイングの既存機材と被るので製造者である川崎では慎重な姿勢と上記Wing Diaryの記事にあり)。
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