料亭時代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 06:01 UTC 版)
火野 孟(ひの はじめ) 業子がフランスで知り合った流れ者風の板前で、飄々とした印象と後ろ暗い雰囲気を持つ。髪型は角刈り。左の頬に傷がある。 パリの日本料理店で働いていた頃、ガストンに求婚された業子に「結婚の誓いを交わす前に『曙家の財産を強奪した罪』で逮捕する振りをして連れ出して欲しい」と依頼を受け、数人の仲間と手を組み、居酒屋で眠らせた警察官から制服、パトカーなどを借用して日本から来た刑事に扮して教会へ乗り込む。 実は出入りをしていた料亭「満玉」で夏世による美人局の被害に遭い、落とし前として店の権利書を駒谷達に奪われ、板前としての道を絶たれた上に父と妹に損害を与えてしまう。この為、父から嫌悪され絶縁。そして駒谷達の追求を逃れる為に出国。 「雨蝶」の事を近隣住人が「父娘で営業していた」と評する等、元から実家とは疎遠だった様子がうかがえるが、百合子に対しては「苦労を掛けている」と心配する場面もみられる。作中では帰国した様子は見られない。 マーテル家から持ち出した金の自らの取り分で、日本行きの航空券とエメラルドを購入し、借金の返済用として妹の百合子に渡して欲しいと業子に託して帰国させている。業子が帰国してからの彼の場面は、フランス、日本ともにすべて回想シーンとして描かれている。 火野 東吉(ひの とうきち) 孟と百合子の父。自宅で小料理屋「雨蝶」を経営していたが、孟が美人局の被害に遭い、同時に駒谷に権利書を奪われた上に、自身に生命保険金を掛けられ強請られてしまう。この為に孟とは絶縁。訪ねて来た業子にも「あいつの話なんて聞きたくない」などと罵声を浴びせている。 百合子の縁談に店の再起を賭けていたが、光伸の父から婚約破棄の理由が百合子のレイプによるものだと聞かされた直後、絶望して河原で割腹自殺した。 火野 百合子(ひの ゆりこ) 孟の妹。駒谷達に脅された孟を心配してうっかり店の権利書を出して来てしまう。孟の出国後は父と二人暮らしで店で接客をしていたが、父が出かけている間に店を狙う駒谷と夏世の仕向けたヤクザにレイプされている姿をビデオに撮影され、婚約者だった光伸に見せつけられた事から嫌悪され婚約破棄される。そして父の自殺などでとうとう心を病み、療養施設に収容される。 記憶喪失・失語症になっていたが、次第に回復をしてゆき、編み物をしたり油絵を習いたいと言い出し(この時に業子にセットを用意して貰っている)、月1回の恵による訪問を楽しみにして彼女の似顔絵を描いたりするまでになる。その後夏世らに誘拐されるが、殿山に救出されて間もなく退院。 父の死を始めとする不幸な事件に関しては記憶が欠落しているが、業子によって買い戻されて開店していた「雨蝶」で女将に復帰。その翌日に店の前で恵と夏世を見かけたと業子に報告した事が、恵の悪事を暴く。唯一の肉親である孟との再会を望んでいる。 勢多 光伸(せた みつのぶ) 老舗の織物問屋「織勢」の跡取り息子。百合子と恋人同士で、「雨蝶」の借金を肩代わりする予定だったが、出入りしていた「満玉」で百合子がレイプされるビデオを見せられたり、写真を家に送り付けられた事にショックを受け、偶然に居合わせた業子に婚約破棄をしたいと告げ、やって来た東吉からも逃げてしまう。 筒井 利章(つつい としあき) 国会議員で恵の夫。父親から地盤を引き継いでおり、信用が必要だとして恵と政略結婚。駒谷に襲われかけていた業子を救い、やがて恵の姉と知らずに愛人関係になる。自身と繋がりの深い宮脇の陰謀で週刊誌に不倫疑惑の記事を掲載され、一時は誤解から業子を憎んでいた事もあるが、後に困窮した宮脇から真実を知らされ、業子の元を訪れ謝罪。一度は拒まれるが、その直後に当て逃げ事故で軽症を負い、帰宅途中だったパート店員によって「雨蝶」へ運び込まれ、医師の往診の後に業子に介抱を受けた事から復縁。そして悪事に手を染めた恵に恐れを感じて離婚と議員辞職、業子との再婚を切り出すが、業子の真意が元の生活に戻ることと知って恵と関係を再構築する。 不倫はしたが、裏金を渡そうとした権力者に立腹して立ち去ったり、宮脇の不正を嫌い、癒着を蹴るなど心優しく潔癖な面を持つ。家に来ている使用人を「ノンちゃん」と呼ぶ。 宮脇 善三郎(みやわき ぜんざぶろう) 国会議員。自身の派閥で目を掛けていた筒井の愛人となった業子に横恋慕。媚薬を使って無理矢理関係を結んだり、マスコミに偽の情報を流して筒井との仲を壊した事がある。 その後、業子の罠に掛かり、彼女と関係を持っている間に駒谷殺害現場に覚醒剤の入ったピルケースを落とされて殺人容疑を掛けられ、筒井に真実を話して救済を求めるが一蹴される(腹に一物ある人物と筒井に評される)。恵を利用して名誉を回復する計画を立てるが、業子から真実と本心を聞かされて若干改心した様子が見られ、「業子にはきついお灸をすえられた」「殿山を救いたい」と言い、恵に「業子は悪い人間ではない」と告げている。逮捕された様子はない。 殿山(とのやま) 宮脇の秘書。宮脇が覚醒剤を時折使用している事、それを駒谷が暴こうとしている事を懸念している。百合子との間柄を姉妹と偽った業子と関係を持ち、駒谷を殺害。業子の幇助でアメリカへ向かう。「政治家ひとり守れなければ、他でも通用しない」と業子に話して聞かせる程、宮脇への忠誠心が強い。 駒谷 文造(こまや ぶんぞう) 表向きは「駒谷ファイナンス」という不動産、建設、金融などを扱う企業を運営しているが、実態は脱税や高利貸しなどを行うヤクザで冷酷な性格。夏世と謀って火野家をどん底に陥れたとして業子に憎悪されていた。 そして税務署職員になりすました業子から不正を暴き立てられて「雨蝶」を手放し、同時に騙し取っていた東吉の死亡保険金も店のリニューアル資金として業子に奪い返される。その後、損害を出したとして夏世から金目の物を奪った上で知り合いのラブホテル経営者に売り飛ばしたが、窮地に陥り宮脇に連絡。しかし彼が覚醒剤関連で逮捕される様に仕向けた事に立腹した殿山に、河原で殺害される。 野田 夏世(のだ なつよ) 高級料亭「満玉」の仲居で駒谷の愛人。強欲な性格で様々な悪事に手を染め業子と対立。他の仲居達や女将からも良く思われてなかった様子が見られる。「雨蝶」を狙い孟に対しては美人局、百合子には男達を仕向けてのレイプ、そして撮影したビデオを公表しての婚約破棄などで追い込みを掛け、東吉の自殺を心から喜んでいた。 駒谷からエメラルドを渡され、帯留めにしていたが、実は業子が孟から預かったものであった為、老婆・インド人に変装した業子によって奪い返される。他にも借金の取り立て、新客の開拓など自分に出来なかった事を業子がやってのけた事などもあり、彼女に敵対心を抱く。その後、駒谷と仲間割れをして着物などを奪われ、ラブホテルで働かされていたが、業子への報復手段を用意して駒谷と再び結託し「満玉」へ戻る。そして筒井が業子と復縁したと知ると恵の嫉妬心を利用し、恵から業子に渡して欲しいと頼まれたピアスを偽物とすり替えて自分の懐へ入れる。しかしそれを身につけた事で顔にケロイドが発生。治療の為に業子が研究所に連れて行こうとしたところを人違いで恵に殺害され、目撃していた貴志によって車ごと沈められる。 満玉の女将 夏世と業子が働いていた料亭で女将をしている。懐の深い性格で他の仲居達同様に業子に良い感情を抱いており、彼女が「雨蝶」の女将になると聞いて心から祝福した。一方で夏世を始めとする駒谷ファイナンス関係者に対しては辛辣な態度を取る。 村瀬(むらせ) 銀座の高級宝石店「M」の店員で外商なども行なっている。恵が店を利用したのを機に、筒井の元を訪れてダイヤのピアスの購入を勧める。 のちに来店した業子が所持していたピアスがジルコニアにすり替わっていた事に疑念を抱き、話題にした事が恵の悪事を暴くきっかけになる。
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