専門図式とは? わかりやすく解説

パラダイム

(専門図式 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/30 09:02 UTC 版)

パラダイム (paradigm) とは、科学史家科学哲学者トーマス・クーンによって提唱された、科学史及び科学哲学上の概念。一般には「模範」「範」を意味する語だが、1962年に刊行されたクーンの『科学革命の構造The structure of scientific revolutions)』で科学史の特別な用語として用いられたことで有名になった。しかし、同時に多くの誤解釈や誤解に基づく非難に直面したこと、また、概念の曖昧さなどの問題があったために、8年後の1970年に公刊された改訂版では撤回が宣言され、別の用語で問題意識を再定式化することが目指された。


  1. ^ トーマス・クーン(中山茂 訳)『科学革命の構造』(みすず書房、1996年)18頁。
  2. ^ 『科学革命の構造』、第二章。
  3. ^ 野家啓一『現代思想の冒険者たち24 クーン』講談社、1998年、214~218頁。ISBN 4-06-265924-7 
  4. ^ 野家啓一『現代思想の冒険者たち24 クーン』講談社、1998年、219頁。ISBN 4-06-265924-7 
  5. ^ アルキメデスの「砂粒を数えるもの」に引用されている。アリスタルコスの論文(「太陽と月の大きさと距離について」)はひとつ残されているが、そこには地動説の主張はない。
  6. ^ 天羽康夫(1976) スミス『天文学史』についての一考察、高知大学学術研究報告 社会科学・社会科学篇(25). p.101-102.


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専門図式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 21:08 UTC 版)

パラダイム」の記事における「専門図式」の解説

1962年初版において、クーンは、パラダイム科学者集団アイデンティティ関連主張していた。しかし、この宣言においては、自らの導入する概念が、科学者集団にとってではなく歴史家観点にとって意義を持つものであることが明示される同時に焦点当てられているのが、“専門携わるための共通な教育専門的出発点とをもった専門家たちの集団としての科学者集団であると、問題が再定義された。 その上で、かかる専門家集団において意思疎通容易ならしめ、専門的判断安定せしめる共通の基礎があることを指摘し、それをこそ問題としており、それを指し示す用語として「専門図式」を提案した。この専門図式には、四つ重要な要素がある。それらをクーンは、記号的一般化特定のモデル対す確信価値見本例と呼んだが、とりわけ重要視されるのが最後見本例(exemplars)である。 科学者研究現場で受け入れているものごと例えF=maのような式があるとして、それがいかなる点でいかなる手段によって彼らがそうするようになったのか、言い換えれば科学者がある実験に際していかにして「力」とか「質量」とか「加速度」を取り出すことを習ったかをクーンは問う。 実験において、ある問題から別の問題へと移行するうちに、F=maのような式は変形される。一度変形された式は、いままで関連付けられなかったものとの関連付けられ、今まで文献には出てこなかったようなものにさえなる。では、こうした変形とは一体いかなるものであり、そのやり方学生はどこで学ぶのだろうかクーンによればこうした変形一種アナロジー捉えることである。すなわち、今まで出会ったことのない問題を、出会ったことのある問題同様に見なすことなのである。たとえばF=maのような法則スケッチは、一つ道具として機能する。つまり、いかなる類似点を見つけるべきかを教え見出されるべき状況ゲシュタルト形態)を与えてくれるのである科学者は、二つあるいはそれ以上特徴的問題間のアナロジー捉え類似点見出し記号関連付け、既に有効であることが証明済み方法でそれらを結びつけるこのような様々な状況の間の類似性見出す能力は、学生例題ペン鉛筆で、あるいは実験室の中で実習行なうことによって得られるのだ、とクーン指摘するこうしたスケッチは、当然ながらポパーのような科学哲学者たちの描く科学像とは異なっている。ポパーらの考えによれば科学知識何よりも理論ルール表されているのだから、それらを学習しなければ学生問題を解くことができない。 しかし、未訓練素人が、いくら理論ルール教え込まれても、それが“実験室どのような見え方をするのか”が分からなければ、何に着目すればよいのかすら分からず、つまりは実態的な作業としての研究取り組みようがない。実験機器計器の針の位置が針の物理的な位置上の意味を持つことを理解し得ないならば、霧箱の中を走る「斜線」が宙に浮かぶ不思議な直線にしか見えないならば、研究作業不可能である。 理論ルール等々がいくら単なる知識として学習されても、それをいわば“適用する仕方が分からなければ実際研究過程においては役には立たないのだ。全く具体的かつ個別的な一つ一つ実験観測の場において、何に対して反応し、何に着目すればよいのか学生習得するのは、学生が「例題を解く」過程において、問題を解くことそれ自体ではなく問題を解くことを通じて類似的関係を「発見」することに習熟するからである。 そしてこのとき、“理論概念適用する”という言い方が、もはや正しくないことに注意しなければならない。すなわち、学生が「例題を解く」ことによって習熟する事柄とは、実際研究過程における知識システムないしネットワークにおける働き即して、そしてその場合にのみ理論法則などが意義をもつということでもあるからだ。言い換えれば研究過程先立って独立ないし孤立した状態において存在する理論概念があり、研究者がそれらを“適用するわけではないのだ。いかなる理論であれ概念であれ、ある知識ネットワークの一要素としてのみ、理論概念といったものが知識としての意義獲得するのであるこうした次元によって科学特徴付けることをクーンは、マイケル・ポランニー [1966=1980] にならって暗黙知識」と呼び、それは科学携わるルールというよりも、科学実際に携わることによってのみ学ばれる位置付けた。こうした主張は、科学個人的直感の上置こうとする非合理主義として非難浴びた。しかし、この非難あたっていない。そうしたものを直感と呼ぶとしても、それは、すでに成果挙げてきている専門家集団取捨選択重ねてきたものとして共有されたものであり、新人たる学生はこの集団メンバーになる準備一環として訓練において、その「直感」を獲得するからである。

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