パラダイムとはなにか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/04 07:42 UTC 版)
パラダイム概念はその一般的受容において大きな画期をもたらしたが、それはクーン自身の意図したところとはかなり異なるものであった。また、そうした受容にもとづき、クーンはカール・ポパーたちから科学の合理性と客観性を否定する相対主義者・非合理主義者と断罪され、厳しい論難を浴びたが、実際にクーンの側の展開ないし転回をもたらしたのは、実証主義的科学論からの批判ではなかった。 ポパーとの論争が繰り広げられた1965年の学術会議[Lakatos and Musgrave 1970]の席上、物理学者のマーガレット・マスターマンは、クーンの議論が科学的活動の実相をとらえていると評価する一方で、クーンを批判するポパー派を、思弁的な哲学理論と科学理論を等置し、哲学理論の正当化のために都合のいい科学理論を引き合いに出す誤謬に陥っていると批判し、クーンを擁護したが、同時に核心たるパラダイム概念が多義的であいまいに過ぎると指摘した。この指摘を踏まえ、1969年、クーンはパラダイム概念の放棄と、それに代わる専門図式(disciplinary matrix)なる概念の導入を公式に宣言した。
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