パラダイムとは何か
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 06:39 UTC 版)
パラダイムとはもともと、人称や時制による語型変化を示す代表的な事例(範例)という意味で使われてきた言語学上の用語であった。言語学においては、例えばLatin Verb Conjugation Paradigms (ラテン語動詞の活用変化のパラダイム)というような形で用いられる。なおクーンはパラダイムという用語を用いるにあたって、こうした言語学上の用法を意識していたと思われる。そのことは、クーンがクーン『科学革命の構造』第二版で追加された「補章 --- 1969年」の中で、パラダイムという用語の言い換えとして用いたdisciplinary matrix(専門母体)の4番目の要素が見本例 (exemplars) である ことに示されている。 クーンによれば、パラダイムとは、ある一定の専門領域の科学者集団の中で共有されている普遍理論、背景的知識価値観、規範、テクニックなどの諸要素から構成される複合的全体であるとされるが、その含意はパラダイムが科学的活動の中心的構成要素として科学者集団の維持=再生産機能を持つものすべてを包含するものであるということである。そのため、マーガレット・マスターマン(英語版)が「パラダイムの本質」 で指摘したように、クーンの用法では、パラダイムは何十という意味内容を持つ多義的な概念となった。パラダイムはむしろ、今後の科学史や科学社会学などの研究のなかで、その内容を精査していくべきものなのである。
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