地中海戦線
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「イラストリアス (空母・初代)」の記事における「地中海戦線」の解説
イラストリアスは竣工と同時に地中海戦線に配備された。8月22日に重巡洋艦ヨーク (HMS York, 90) と軽巡洋艦シェフィールド (HMS Sheffield, C24) に護衛されてイギリスを離れ、ジブラルタルへ向かった。給油後、イラストリアスは8月30日にジブラルタルを出港し、地中海艦隊へ加わるため、戦艦ヴァリアント (HMS Valiant) などと共に地中海を通ってアレクサンドリアへと向かった(ハッツ作戦)。9月2日にマルタの南西沖で地中海艦隊(司令長官カンニガム中将、旗艦ウォースパイト)と合流する。大型艦3隻(イラストリアス、ヴァリアント、バーラム)が地中海艦隊に増強されたことにより、地中海の戦力バランスはイギリス側に傾いた。イギリス海軍の士気も高まった。4日にはイラストリアスと空母イーグル (HMS Eagle) の搭載機がロドス島を空襲し、5日アレクサンドリアに到着した。 9月15日、戦艦ヴァリアント、重巡洋艦ケント (HMS Kent, 54) 、駆逐艦7隻と共にアレクサンドリアから出撃する。第3巡洋艦戦隊と合流後、16日から17日の夜にベンガジを空襲し、イタリア駆逐艦ボレア (Borea) と貨物船2隻を撃沈し、機雷も敷設した。9月28日、マルタへの兵員輸送に当たる軽巡グロスター (HMS Gloucester, C62) とリヴァプール (HMS Liverpool, C11) がアレクサンドリアから出港。その護衛として、イラストリアスや戦艦ウォースパイト(HMS Warspite)、ヴァリアントなども出撃した(MB5作戦)。グロスターとリヴァプールは無事マルタに到着し、2隻が兵員を降ろしたあと艦隊は帰投した。 10月、マルタへの補給作戦(MB6作戦)に参加、軽巡エイジャックス (HMS Ajax) の砲撃で大破したイタリア駆逐艦アルティリエーレを始末するためソードフィッシュ3機を放ったが、魚雷は1本も命中しなかった(パッセロ岬沖海戦)。帰投途中の10月13日から14日にかけての夜にレロス島を空襲した。 詳細は「タラント空襲」を参照 この頃、カニンガム提督は隷下の空母2隻(イラストリアス、イーグル)によるターラント奇襲を計画し、10月21日夜の実施を目指した。だがイラストリアスで事故が発生して延期を余儀なくされ、またイーグルも燃料系統の損傷により奇襲作戦に参加できなくなった。イラストリアスはイーグルのソードフィッシュ5機を受け入れた。11月7日、地中海艦隊(旗艦ウォースパイト)は輸送船団護衛をかねてアレクサンドリアを出撃する(ジャッジメント作戦)。折しもイタリア海軍は10月下旬からはじまったイタリア軍のギリシャ侵攻のため主力部隊をターラントに集結させていたので、英海軍にとって好都合だった。地中海艦隊は、牽制と陽動を兼ねた偵察部隊、カニンガム提督の本隊、ラムリー・リスター少将の空襲部隊にわかれており、11月11日に空襲部隊は本隊と分離してターラントにむかった。同11日夜、イラストリアスはソードフィッシュ21機を放った。タラント軍港にはイタリア海軍の主要艦艇が揃っており、ソードフィッシュの夜間奇襲攻撃は喪失2機と引き換えに大戦果を挙げた。戦艦3隻(リットリオ、カイオ・デュイリオ、コンテ・ディ・カブール)が大破着底し、2隻は戦線に復帰できたが、コンテ・ディ・カブール (Conte di Cavour) は修理未完了のまま放棄された。12日、イラストリアスは本隊に合流して帰途についた。イタリア王立空軍の空襲を受けたが、直衛機で撃退した。 北アフリカ戦線ではイタリアのエジプト侵攻により連合軍と枢軸国軍の間で陸戦が繰り広げられ、イギリス軍は12月上旬からコンパス作戦を発動していた。陸軍支援のため、地中海艦隊はバルディア(英語版)近郊のイタリア陸軍に艦砲射撃を実施する(MC5作戦)。イラストリアスは砲撃部隊(ウォースパイト、ヴァリアント、バーラム、モニター艦、護衛部隊)の上空支援、対潜哨戒、弾着観測をおこなった。 地中海の制空権を握れないイタリア王立空軍 (Regia Aeronautica) を支援するため、ドイツ空軍 (Luftwaffe) が助っ人として登場した。ハンス・ガイスラー中将が率いる第10飛行団(英語版、ドイツ語版)で、1940年末にシチリア島など5つの航空基地に展開した。第10飛行団はイラストリアス撃沈を命じられ、パイロット達は洋上に浮かべた標的をイラストリアスに見立てて猛訓練をおこなったという。カニンガム中将が評したように、ドイツ空軍(ルフトバッフェ)とJu 87 (Junkers Ju 87 Stuka) はイタリア空軍と比較にならないほどの脅威となった。 1941年(昭和16年)1月初頭、イラストリアスはMC4作戦/エクセス作戦 (Operation Excess) に参加する。1月7日、カニンガム提督が指揮するA部隊(ウォースパイト〈旗艦〉、ヴァリアント、イラストリアス、随伴駆逐艦)はエジプトのアレキサンドリアを出撃した。A部隊は、マルタ島に向かう輸送船団を護衛していた。途中でジブラルタルからきたH部隊および輸送船団と合流した。 1月10日、地中海艦隊はマルタ南方海面でイタリア空軍とドイツ空軍に襲われる。まずサヴォイア・マルケッティ SM.79(魚雷装備)2機がイラストリアスを襲ったが、直衛戦闘機が撃墜し、ヴァリアントは投下された魚雷を回避した。つづいてシチリア島に配備されていたドイツ空軍第1急降下爆撃航空団(英語版)第1飛行隊と第2急降下爆撃航空団(英語版)第2飛行隊のスツーカ 合計43機が地中海艦隊を攻撃した。イラストリアスの直衛機は補給のため母艦に着艦しようと低空に降りており、また直衛機の緊急発進も間に合わず、高度4,000メートルで飛来したドイツ空軍機を阻止できなかった。イラストリアスは命中弾6発と至近弾3発を受ける。500kg徹甲爆弾は飛行甲板の装甲を貫通して大穴をあけ、またエレベーターへの命中弾で損傷が拡大する。イラストリアスは炎上し、200名ほどの戦死者と負傷者を出した。操舵装置が破壊されたが機関は無事であり、駆逐艦4隻に護衛され速力17ノットで退避を開始、同日夜マルタに到着した。 ヘルマン・ゲーリング空軍元帥は、修理中のイラストリアスを葬ろうと尽力した。1月16日、メッサーシュミットに護衛されたスツーカ 44機がマルタ島を空襲する。イラストリアスに爆弾が命中した。19日、またしてもスツーカ 42機の空襲をうけたが、ハリケーン戦闘機の迎撃もあり、イラストリアスは至近弾2発で済んだ。イギリス海軍はイラストリアスをマルタ島から脱出させることにした。23日夕刻、駆逐艦4隻と共にマルタを離れ、軽巡パース (HMAS Perth, D29) にも護衛されて、25日アレクサンドリアに戻る。マルタで13日間も標的と化していたイラストリアスが撃沈されず、乗組員と造船所工員の必死の努力によって応急修理に成功し、アレクサンドリアに撤退できたのは奇跡であった。アレクサンドリアでもさらに修理を受け、それからイラストリアスは完全な修理のため3月10日にアレクサンドリアを離れてスエズ運河、南アフリカ経由でアメリカに向かい、5月12日にバージニア州のノーフォーク海軍造船所に到着した。 イラストリアスは1941年(昭和16年)12月にアメリカを離れ、イギリスに戻った。だが、この航海中の12月16日に同行していた空母フォーミダブル (HMS Formidable, R67) と衝突して艦首を損傷し、その修理にさらに時間を費やした。
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地中海戦線
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「スーパーマリン スピットファイア」の記事における「地中海戦線」の解説
「地中海の戦い (第二次世界大戦)」も参照 防塵用フィルターのボークス(Vokes)を機首下に装備したスピットファイア Mk. Vが、ドイツ軍やイタリア軍と対峙していた北アフリカ、地中海、中東へ派遣された。最初に派遣されたのは補給が困難となったマルタ島で、1942年に空母イーグルから発艦して直接マルタ島の飛行場に降り立った。この進発を皮切りにスピットファイアが主に空母で送られたが、一時的にイギリス海軍がドイツ空軍の空襲により制海権を失いかけると、ジブラルタルからマルタ島まで直接無補給でスピットファイアを送る試みがなされた。この試みで、大型増槽の装備と武装の削減を施されたMk. Vが巡航で1,770 kmを無補給で飛び、17機のうち1機を除いてマルタ島にたどり着いた。その後もイギリス海軍の協力を得て、スピットファイアだけで270機以上がマルタ島に送られ、ドイツ空軍やイタリア空軍との戦闘を繰り広げた。 北アフリカでは、ボークス装備にともなう空気抵抗によって速度の低下及び機動性の劣化が避けられなかったため、小型のアブキール・フィルターが現地部隊によって開発された。これによって、速度の低下、機動性の劣化は多少改善された。また、より高性能なMk. VIIIが送られるとシシリー島やイタリア戦線でアメリカ空軍と連携して戦線を支えた。しかし、イタリア戦線でも制空任務への役割が低下すると、地上攻撃に従事した。
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