医療体制の逼迫とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 医療体制の逼迫の意味・解説 

医療体制の逼迫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 03:21 UTC 版)

日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況」の記事における「医療体制の逼迫」の解説

日本救急医学会日本臨床救急医学会4月9日声明発表し、「救急医療体制の崩壊をすでに実感している」と危機感示した発熱などの症状がある病人救急搬送しても病院受け入れられず、殆どの場合救急救命センター受け入れざるをえなくなっている結果重症救急患者受け入れができなくなっていると指摘した日本医師会横倉義武会長当時)は2020年4月26日福岡県状況について「医療崩壊一歩手前」と強い危機感示したPCR検査体制拡充については「3月20日ごろから検査拡充訴えたが、政府はなかなか動かなかった」、政府緊急事態宣言については「もう少し早く判断してもらいたかった」と指摘した。また日本医師会中川俊男会長2020年6月就任)は7月22日に、「23日からの4連休を『我慢の4連休』としていただきたい」と述べ県境越え移動不要不急外出避けるように呼びかけた。 日本感染症学会学術講演会が8月19日から21日にかけて開かれこの中で学会理事長である舘田一博は「今、日本第2波まっただ中にいる。この先、どう推移するのか注意必要だ」とする見解示した12月入り全国的に感染者増大する中で、12月21日日本医師会など医療関係9団体合同記者会見開き新型コロナウイルス感染症感染拡大と医療体制の逼迫を受けて医療緊急事態宣言」を出した日本医師会中川会長冬季流行するインフルエンザ比較しても、新型コロナは「別格脅威だ」と指摘感染者増加止まらないことで、「誰もが平等に医療受けられる日本の医療制度風前のともしびになっている」と危機感訴えた。 ただし、これらの主張対し国際政治学者三浦瑠麗は「(指定感染症二類相当対応のために)ごく少数病院だけにコロナ患者集中させた結果、そこが悲鳴を上げている」と病院側の体制不備があるにも関わらず、「全て国民責任にしている」と追及したうえで「なぜ医療体制こんなに簡単に崩壊してしまうかについての分析はひとつもない」と批判 し、元厚生労働省医系技官作家医師木村盛世も「毒性の強くない新型コロナ指定感染症二類相当(一部I類)という高いレベル指定してしまったため、新型コロナ患者受け入れ病院限定されてしまった。これが医療崩壊危機実態」と評している。 また、現場医療従事者からも「二類相当措置見直しは必要」との意見もあり、日本赤十字社医療センター呼吸器内科部長出雲雄大12月17日テレビ朝日系報道ステーション』に出演し濃厚接触者認定される基本的に2週間自宅待機なければならない当院では1度53人が濃厚接触者になったことがあり、全員PCR検査をしたら陽性者は1人だけで、つまり52人は特に症状がなく感染もしていないのに、2週間働けない状況であった。当然人員足りなくなり病棟閉鎖したり、外来救急手術止めたりなければならない」「入院重症患者さんを中心とするべきだと思う。濃厚接触者洗い出しなどの作業保健所等でしているが、そのようなマンパワーをほかに割いていくべきだ」と現状訴え現状指定感染症二類相当からインフルエンザと同じ五類引き下げ主張したまた、感染者の入院調整などを担当する保健所からも同様の声が上がっており、大分県東部保健所長の内田勝彦(全国保健所長会会長)は、「私が勤め保健所では感染症法上で2類分類される結核報告数は年に30件ほどだが、新型コロナ報告は(12月上旬の)2週間で約80件。結核でいうと3年弱の業務量が2週間押し寄せた東京大阪は、一気通常の100倍上の負担であり、土日出勤は当然で、深夜までの長時間労働回していますが追いつかない」と状況訴え、「2類相当という方針を、感染拡大した地域だけでも変えるなど、柔軟に対応していただきたい」と提言している。 一方で2020年末から21年入り感染した人工透析患者への対応が難しくなっており、日本透析医会でコロナ対策にあたるワーキンググループ菊地勘は透析分野では医療崩壊起こっているという意見表明した2021年1月13日政府が既に同月7日東京都など1都3県発出していた特措法に基づく緊急事態宣言地域大阪府など2府5県を加えて追加発出決めたが、中川日本医師会会長記者会見で「現実は特に首都圏など緊急事態宣言対象地域において、通常の入院患者受け入れを断るなど、すでに医療崩壊の状態になっている。さらに、このまま感染者数増加が続くと、医療崩壊から医療壊滅になってしまう恐れがある」と危機感表し政府全国的な緊急事態宣言視野迅速な対策求めた。その一方で一部公立病院などにコロナ患者対応が集中し民間病院コロナ患者受け入れ態勢不十分な点がみられるなど、特措法感染症法問題コロナ患者民間病院受け入れ消極とされる医師会問題指摘されている にもかかわらず中川はほぼ毎週行われている定例会見で、国民対する「気の緩み」「自粛疲れ」といった精神的な問題などを批判し緊急事態宣言全国的な拡大国民への行動制限何度も訴えるなど、中川日医に対して国民任せだ」「上から目線偉そうだ」などといった世論反発大きくなっていた が、その後中川以下複数日医執行部役員が、まん延防止措置適用中4月都内行われた日本医師連盟組織候補である自見英子参議院議員政治資金パーティー参加したことが明るみ出たことで、識者世論による中川日医執行部対す批判がさらに拡大している。 新型コロナ患者病床増加させられない一因として、2020年から21年冬季にかけての第三波見られた点では、コロナ患者受け入れる際は入念な感染防護対策が必要で、通常よりも人手手間がかかるため、看護師スタッフ確保目詰まりがあることや、コロナ改善した後もリハビリ必要な高齢患者らの入院長引いてしまうことが挙げられている。また、コロナ病床大幅に増やせば、通常医療圧迫されるという問題指摘されており、2021年3月以降国内では変異株流行が置き換わったことで若年層でも感染重症化しやすいとの指摘があり、入院患者重症者数を徐々に押し上げ、さらに医療逼迫大きな要因となっている。 2021年4月まん延防止措置発令され都府県のうち、感染者増大している大阪市神戸市仙台市内では急病人らの搬送先がすぐに決まらない救急搬送難事案」が増加しており、病床逼迫影響があるとみられる宮城県仙台医療圏では新型コロナ患者病床使用率が9割を超えており、大阪府でも吉村洋文知事同月12日会見で「重症治療をしてくれている医療機関に対して新型コロナ以外の一般医療の一部制限要請しコロナ重症者の病床確保する中身としては急ぎではない予定入院手術延期要請する」と一部医療機関に対して医療制限要請したことを公表している。この状況について日本医科大学特任教授北村義浩は「(大阪府では)自分治療法選べない、死に方選べない確率高まっている。これはもう社会崩壊医療崩壊ではなく社会崩壊に近い」と評している。 2021年7月緊急事態宣言下での東京五輪開催最中首都圏中心に感染者増大顕著に表れ東京都では同月28日一日新規感染者初めて3,000人を突破した重症化リスクのある65歳上の高齢者感染者COVID-19ワクチン優先接種効果もあってか低水準推移しているものの、この時点ワクチン接種十分に行き届いていない4050代中心とした入院患者増加している傾向見られている。また、同年春に見られた「救急搬送難事案」(前述)が再び増加しており、大阪見られ新型コロナ専用病床増床確保とともに医療機関通常医療制限検討する通知東京都同月26日出したことが明らかになっている。新型コロナウイルス感染症対策分科会尾身茂会長は、同月28日衆議院内閣委員会閉会中審査で「医療逼迫が既に起き始めているというのがわれわれの認識だ」と答弁し、翌29日参議院内閣委員会閉会中審査でも「今、まさに今まで1年半コロナ対応の中で最も厳しい状況にいる」「このまま接触機会増加が続くと、先般大阪のように、自宅療養中に重症化して亡くなる人が出てくる。そういうことも当然、想定して今から対策を打つ必要がある」と答弁し危機感強めている。 8月に入るとこれまで首都圏中心感染者増大がさらに全国波及した同月10日には東京消防庁救急隊臨時編制した隊を含め全て出場中となり救急要請応えられない態となった。同月13日には全国1日当たりの新規感染者20,000人を突破する事態陥った総務省消防庁同月11日救急車到着して搬送先の病院がすぐに決まらない救急搬送難事案」が同月8日までの1週間全国で2,897件あったと発表7月最初の週から1カ月余り2.5倍に急増している。感染者増悪による入院調整保健所などの業務逼迫により難航する傾向出ており、特に東京都内では自宅療養者が20,000人を突破するなど、専門家都内医療提供体制は「深刻な機能不全に陥っている」と指摘する声がある。さらに同月15日までの1週間に「救急搬送難事案」が全国で3,361件と急増しコロナウイルス感染した疑いがあるケースは約半数上ったそのような最中千葉県柏市新型コロナウイルス感染し自宅療養をしていた妊娠8か月妊婦容態急変しかかりつけ産婦人科医保健所などで入院調整が行われたものの入院先が決まらず、その結果自宅出産する事態となり、新生児早産のため病院搬送されたが死亡するといった事例起きるなど、新たな問題発生している。 8月22日東京大学医学部附属病院瀬戸泰之病院長菅義偉首相面会瀬戸は「新型コロナウイルス感染症医療が重要である一方でコロナ以外の医療重要なので、両立させることが重要だ首相に申し上げた」と、記者団説明した8月23日田村憲久厚生労働大臣小池百合子都知事会談し都内医療機関対し改正感染症法に基づく協力要請同日付で行う事を決めた要請では不急入院手術延期など通常医療制限視野入れ入院患者受け入れ病床確保臨時医療施設など都が要請した施設への人材派遣などに協力するよう求める。同法に基づく国の要請初めてとなる。また、同日から東京都では増悪した自宅療養中の感染者酸素投与受けられる酸素ステーション」の運用開始している。

※この「医療体制の逼迫」の解説は、「日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況」の解説の一部です。
「医療体制の逼迫」を含む「日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況」の記事については、「日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「医療体制の逼迫」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「医療体制の逼迫」の関連用語

1
病床使用率 デジタル大辞泉
96% |||||


医療体制の逼迫のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



医療体制の逼迫のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS