ツツガムシ病とは? わかりやすく解説

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ツツガムシ病

ツツガムシ病はOrientia tsutsugamusi を起因とするリケッチア症であり、ダニ一種ツツガムシによって媒介される患者は、汚染地域草むらなどで、有毒ダニ幼虫吸着され感染する発生ダニ幼虫活動時期と密接に関係するため、季節により消長みられるまた、かつては山形県秋田県新潟県などで夏季河川敷感染する風土病であったが(古典型)、戦後新型ツツガ虫病の出現により北海道沖縄など一部地域除いて全国発生みられるようになった

疫 学

 ツツガムシ一世代に一度だけ、卵から孵化した後の幼虫期哺乳動物吸着し組織液を吸う(図1)。その後土壌中で昆虫の卵などを摂食して生活するわが国リケッチア(以下、)を媒介するのは、アカツツガムシ(Leptotrombidium akamushi )、タテツツガムシL. scutellare )、およびフトゲツツガムシL. pallidum )の3種であり、それぞれのダニ0.1~3%がをもつ有毒ダニである。ヒトはこの有毒ダニ吸着される感染する吸着時間は1~2 日で、ダニから動物への移行にはおよそ6 時間以上が必要である。ダニからダニへ経卵感染により受け継がれもたないダニ無毒ダニ)が感染動物吸着して獲得できず、有毒ダニならない。したがって自然界げっ歯類などの動物ヒトへの感染増幅動物はならずダニライフサイクル完結させるために重要となる。
新型ツツガムシ病媒介するタテツツガムシ、およびフトゲツツガムシは秋~初冬孵化するので、この時期関東九州地方中心に多く発生みられる(図2)。また、フトゲツツガムシ寒冷な気候抵抗
性であるので、その一部越冬し融雪とともに活動再開するため、東北北陸地方では春~初夏にも発生がみられ、そこではこの時期の方が秋~初冬より患者が多い。したがって全国でみると、年間に春~初夏、および秋~初冬の2 つの発生ピークみられるまた、古典型ツツガムシ病原因となったアカツツガムシは現在消滅した考えられ夏期発生ピークみられない

ツツガムシ病
ツツガムシ病

図2. ツツガムシ病の月別地方別患者発生数1998 年

ツツガムシ病

図3. ツツガムシ病の患者数および届出都道府県数の推移19502001年

我が国では1950 年伝染病予防法によるツツガムシ病の届け出始まり1999 年4 月からは感染症法により4 類感染症全数把握疾患として届け出継続されている(図3)。感染症法施行後患者数をみると、1999 年(4~12月)には588 人、2000 年(1~12月)には急増して754 人が報告された。2001 年には460 人に減少したが、今後の動向注目されるまた、毎年数人死亡例報告され依然として命を脅かす疾病であることがうかがえるまた、ツツガムシ病は広くアジア東南アジアにも存在しており、輸入感染症としても重要である。

病原体

ツツガムシ病の起因オリエンティア・ツツガムシOrientia tsutsugamushi )であり、大きさはおよそ0.5×2.5 μm である(写真1)。他のリケッチア同様に細胞外では増殖できない偏性細胞内寄生細菌である。本には血清型存在しKatoKarp、およびGilliam3種類は標準型とよばれ、その他にも、Kuroki、およびKawasaki など新しい型も報告されている。

ツツガムシ病

臨床症状
潜伏期は5 ~14 日で、典型的な症例では39 上の高熱伴って発症し皮膚には特徴的なダニ刺し口(写真2)がみられ、その後数日体幹部を中心に発疹写真3)がみられるうになる

ツツガムシ病
ツツガムシ病
写真2. ダニ刺し
須藤恒久著 「新ツツガムシ病物語」より)
写真3. 発疹
須藤恒久著 「新ツツガムシ病物語」より)

発熱刺し口、発疹は主要3徴候とよばれ、およそ90%以上の患者みられるまた、患者多く倦怠感頭痛訴え患者半数には刺し近傍所属リンパ節、あるいは全身リンパ節腫脹みられる臨床検査ではCRP陽性ASTおよびASL などの肝酵素の上昇がおよそ90%の患者みられるまた、治療が遅れると播種性血管内凝固をおこすことがあり、致死率が高い。
発生時期がその年の気候により影響を受けることわが国には夏~秋に発生の多い日本紅斑熱存在することなどから、年間通して、本症を含むダニ媒介性リケッチア症を常に疑うことが重要である。また、ヒト移動に伴い汚染地域に出かけて感染し帰宅後発症する例もあるので、汚染地域だけでなく広く全国医療機関注意が必要である。


病原診断
確定診断は主に間接蛍光抗体法、および免疫ペルオキシダーゼ法による血清診断行われている。診断抗原にはKatoKarp 、およびGilliam標準型加えて、Kuroki 、およびKawsaki 型を用いることが推奨されている。ある特定の血清型だけに抗体上昇する場合があり(つまり、血清学的な交差反応株間みられない場合がある)、流行合わせて新し血清型使用しないと、診断できないことがあるためである。判定は、急性期血清IgM抗体有意上昇している時、あるいは、ペア血清抗体価が4倍以上上昇した時を陽性とする。
また、ワイル・フェリックス反応ではOXK 陽性となるが、陰性のこともあるので注意が必要である。病原体診断には、末梢血中からのDNA 検出用いられている。EDTA全血からバフィーコート分画分離しDNA抽出後、nested PCR 法による検出なされるまた、この方法で血清型別も可能である。分離マウス培養細胞用いて行われるが、P3 実験施設が必要であり、時間もかかるので診断には実用的でない

治療・予防
ダニ媒介性リケッチア症の一般的な治療法、および予防法準じて行う。治療には、早期に本症を疑い適切な抗菌薬投与することが極めて重要である。第一選択薬テトラサイクリン系抗菌薬であり、使用できない場合クロラムフェニコール用いる。βラクタム系抗菌薬無効である。
本症の予防利用可能ワクチンはなく、ダニ吸着を防ぐことが最も重要である。具体的には、発生時期知り汚染地域立ち入らないこと、立ち入る際にはダニ吸着を防ぐような服装をすること、作業後には入浴し吸着したダニ洗い流すこと、などである。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
つつが虫病4類感染症定められており、診断した医師直ち最寄り保健所届け出る報告のための基準以下の通りである。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断血清学診断なされたもの。
病原体検出
例、血液からの病原体分離など
病原体遺伝子検出
例、PCR 法など
病原体対す抗体検出
例、血液からの間接蛍光抗体法あるいは間接免疫ペルオキシダーゼ法で抗体価の4倍以上の上昇か、IgM 抗体上昇など


国立感染症研究所ウイルス第一部 小川基彦)





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