アーキテクチャー
英語:architecture
「アーキテクチャー」とは、主に「建築・建築様式・建築学・構造・基本設計」などの意味で用いられる英語由来の言葉である。
「アーキテクチャー」の基本的な意味
「アーキテクチャー」は、一言でいえば「構造や設計の全体像」を指す言葉である。建築分野では、建物の構造やデザインの全体的な概念を表す。情報技術の分野では、コンピューターシステムやソフトウェアの設計や構成を指す語として用いられる。「アーキテクチャー」は学問分野としての「建築学」を指す語でもある。また、権力論の文脈では「環境介入権力」とも表現される概念を指す語としても用いられる。
「アーキテクチャー」の語源
日本語の「アーキテクチャー」は英語の architecture をカタカナ表記した語である。英語の architecture は、ラテン語の「architectura」を語源とする。これは、ギリシャ語の「ἀρχιτεκτονία」(arkhitektonia)に由来し、建築家を意味する「ἀρχιτέκτων」(arkhitektōn)と、技術や芸術を意味する「τέχνη」(tekhnē)が組み合わさった言葉である。
また、英語の architecture は architect(建築家・建築技師・設計者)の派生語である。architect もまた、arkhitektōn を語源とする語彙である。
「アーキテクチャー」の類語・言い換え表現
「アーキテクチャー」の類語には、「構造」、「設計」、「構成」などがある。いずれの表現も「対象物の全体的な形状や機能を示す」という点で共通しており、文脈にもよるが「アーキテクチャー」の言い換え表現として使える場合が多い。
とはいえ「アーキテクチャー」という表現に特殊なニュアンスが込められている場合もあり、完全に置換可能と言い切れる場面はそう多くない。
「アーキテクチャー」の主な用法、使い方
「アーキテクチャー」はさまざまな文脈で使われる。アーキテクチャー(建築)
建築の分野における「アーキテクチャー」は、建物の構造やデザインの全体的な概念を指す語である。建築物の形状や機能、材料、構造体の配置などが含まれる。例えば、伝統的な日本建築の様式(アーキテクチャー)は、木造で独特の屋根や柱梁構造が特徴的である。 アーキテクチャー(architecture)は抽象的な「建築様式」を指す場合が多く、集合的に architectures といえば具体的な建築物を指す場合が多い。
コンピューター・アーキテクチャー
計算機科学の分野では、コンピューターシステムの設計や構成を指して「コンピューター・アーキテクチャー」もしくは単に「アーキテクチャー」と呼ぶ。(伝統的に末尾の長音記号を省いて「コンピュータ・アーキテクチャ」のように表記する習わしが根付いている、が、これは解消されつつある)
コンピューター・アーキテクチャーには、ハードウェアやソフトウェアの構成要素やそれらの接続・連携・相互作用が含まれる。例えば、CPU、メモリ、ストレージなどのハードウェア構成や、オペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェアの設計が「アーキテクチャー」に該当する。
ソフトウェア・アーキテクチャー
ソフトウェア・アーキテクチャーは、ソフトウェア開発におけるプログラムの設計や構成を指す語である。ソフトウェア・アーキテクチャーは、ソフトウェアの機能や性能、拡張性、保守性などを左右する設計図である。開発時の構想として大いに重視される要素である。
ネットワーク・アーキテクチャー
ネットワーク・アーキテクチャーは、情報システムを構築する際の「コンピューターネットワークの設計や構成」を指す語である。ネットワーク・アーキテクチャーには、ネットワークのトポロジーやプロトコル、通信機器(ハードウェア)の配置などが含まれる。
「環境介入権力」としての「アーキテクチャー」
社会思想の文脈では「権力の構造」を示す概念のひとつとして「アーキテクチャー」の語が用いられる。日本語では「環境介入権力」「環境管理型権力」ともいう。このアーキテクチャー(環境介入権力)は、端的にいえば「環境設計によって人々の行動を(物理的に)促進したり制限したりする」力である。
たとえば、公園のベンチの中央に設けられた肘掛けは、肘掛けとしても機能しつつ、ベンチの上に横たわることを物理的に禁じている。
また、電車のロングシートに設置される凹凸は座り心地を改善し、ポールは立った乗客の安全確保に役立つが、どちらも「2人分のスペースを占領するような座り方」を間接的に禁じている。
このような、あらかじめ選択の余地をなくすように環境を設計することで行動に介入することを、アーキテクチャー(環境介入権力)と呼ぶ。
アーキテクチャー【architecture】
アーキテクチャー [architecture]
アーキテクチャ
( アーキテクチャー から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/26 04:25 UTC 版)
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アーキテクチャ(architecture)は、英語で「建築学」、「建築術」、「構造」を意味する語である。
分野によってはアーキテクチュア、アーキテクチャ、アーキテクチャーともいうが同じ意味であり、英語での発音は/ˈɑrkətɛktʃər/ であり、アーキテクチャーが一番近い。
語源
語源は古代ギリシャ語の「αρχιτέκτων arkhitekton」(アルキテクトーン)である。これから、ウィトルウィウスが著書『De Architectura』の中で architectus(アルキテクトゥス)というラテン語を使った。この語は「architectura」(アルキテクトゥーラ)と変化し、これからおそらくはフランス語を経由し、英語の architecture(アーキテクチャ)になった。
αρχιτέκτων arkhitekton は、「主な」「第1」「長」などの意味の αρχώς arkhos(アルコース)と、「職人」、「工匠」、「名匠」、「大工」などの意味の τέκτων tekton(テクトーン)からなる。
ただし、ウィルウィトスが使った architectus は、直接には αρχιτέκτων arkhitekton ではなく αρχιτεκτονική arkhitektonike(アルキテクトニケー)もしくは αρχιτεκτονική τέχνη arkhitektonike tekhne(アルキテクトニケー・テクネー)に由来するという説もある(ブルーノ・ゼヴィ Bruno Zevi など)。
建築
建築学でアーキテクチュアとは建築の様式のこと。建築物の構造や設計法工法を含めた全体を意味する用語であるが、庭園や船舶等もarchitectureで、明治時代にarchitectureを造家学、neder architectureを造船学、landscape architectureやlandscape gardeningを造園学、と和訳していた。
ウィトルウィウスの『De Architectura』は世界初の建築の専門的理論書であるとされ、その思想性は現代においてもたびたび参照されている建築原典である。このことからアーキテクチュアという言葉に思想性、または設計思想といった意味の含みがもたらされたとされる。
コンピュータ
コンピュータ分野では、IBMがSystem/360でこの用語を使用し、以後は広く使用されるようになった(詳細はコンピュータ・アーキテクチャ#歴史的観点)。System/360におけるそれの定義としては、コンピュータ・プログラムから見た機械の標準化され文書化された仕様であり、個々の機種やモデルに特有な実装は含まれていない。具体的には、レジスタ等の仕様、CPUの命令セット、入出力命令であるチャネルへのコマンドが、一般購入も可能なマニュアルとして出版された。System/360は当初から製品ラインナップを用意するつもりで開発され、シリーズ化された。
コンピュータの分野で翻訳する場合は「設計思想」などと意訳されることもある。
その後、コンピュータに関する構造や設計全般に「アーキテクチャ」の語が使われるようになり、また歴史を遡りSystem/360以前のマシンにも適用される「ノイマン型アーキテクチャ」という用語にも使われるようになり、またノイマン型とは異なり命令用メモリとデータ用メモリを別々に持つものを指すための「ハーバード・アーキテクチャ」という用語にも使われている。
インテルのマイクロアーキテクチャなどは特定の実装を含んでいる。
「x86アーキテクチャ」はIntel 8086のアーキテクチャおよびその命令セットアーキテクチャ、およびその後に登場したそれと互換性を備えたプロセッサと命令セットを広く指す。これは当初からシリーズ化するつもりで開発されたわけではなかった。
「ARMアーキテクチャ」は、ARM社により設計され、いくつかのライセンスモデルで[1]ライセンスされているもので、この命令セットは「(基本的に)固定長の命令」「簡素な命令セット」というRISC風の特徴と「条件実行、定数シフト/ローテート付きオペランド、比較的豊富なアドレッシングモード」といったCISC風の特徴を併せ持ち、低消費電力、小さなコア、比較的高いコード密度といった優れた特性を持った結果、モバイル機器では圧倒的なシェアを得て標準的な存在となっており、現在皆が持ち歩いているスマホはこの「ARMアーキテクチャ」のほうである。またAppleのMacBook Airなどに搭載されているApple M1やApple M2もこのARMアーキテクチャである。
文脈にもよるのだが、最近では(特に、パーソナルコンピュータやタブレットやスマホなどの個人ユーザ(素人、アマチュア)向けの記事などでは特に説明が無いと)「命令セットアーキテクチャ」の意味で使っていることが多い(前述のSystem/360における定義では、チャネルの仕様が含まれる点が違う)が、今でもコンピュータのプロフェッショナルがさまざまなコンピュータについて話題にする場合は、もっと広い意味で使われることもよくあり、実装を含んだ意味、特定のコンピュータまたはコンピュータシリーズの共通仕様、あるいは企業や組織における採用技術標準化などの意味でも使用されており、代表的な用語には以下がある。
そして2010年代後半や2020年代になり、大学や研究所などで研究が熱心に行われるようになってきている量子コンピュータの分野では「量子コンピュータアーキテクチャ Quantum Computer Architecture」[2][3]、「量子計算アーキテクチャ」[4]などという用語も使われるようになっている。
自動車
自動車産業では1970年代から始まった『複数車両で共有される構成部品のセット』という考え方をプラットフォームとよび、より技術的な側面からはこれを『車両アーキテクチャ』ともよんでいる。
社会思想
人間の行為を制約したりある方向へ誘導したりするようなウェブサイトやウェブコミュニティの構造、あるいは実際の社会の構造もアーキテクチャと呼ぶ。
ジョージ・リッツァは著書『マクドナルド化する社会』において、アーキテクチャの具体例としてファーストフード店の硬いイスをあげている。客を長居させず、それによって回転率を上げるような設計になっている。
ローレンス・レッシグは、著書『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』において、人間の行動を制約するものとして、法律、規範、市場、アーキテクチャの4つを挙げた。
取締りと刑罰によって行動を制約する(法律)、道徳を社会の全員に教え込んで行動を制約する(規範)、課税や補助金などで価格を上下させて行動を誘導する(市場)といった手法のほかに人間の行動を制約する手法として、社会の設計を変えることで社会環境の物理的・生物的・社会的条件を操作し人間の行動を誘導するという、「アーキテクチャによる制約」が考えられる。社会の仕組みを変え、ある選択肢を選びやすくする・ある行動を採ることが不快になるようにするといった環境に変えることにより、社会の成員が自発的に一定の行動を選ぶように誘導し、取り締まりを行ったり子供たちに規範を教育するよりも安いコストで社会を管理することができる。
経済学
行動経済学の分野で、「選択アーキテクチャー」という言葉が使われている。
経営戦略
最新の経営の分野では、アーキテクチャ[5]を産業連関のビジネスモデル、構成、仕組み、構造、構築という意味で使われている。システムより上位概念である。昨今のネットワーク化した社会においてのエコシステムも、アーキテクチャである。
アーキテクチャの視点で経営戦略を構築する必要が出てきた。
アーキテクチャは、ビジネスアーキテクチャとテクノロジーアーキテクチャからなっている[5]。
- ビジネスアーキテクチャは顧客のプロセスやバリューチェーンを意味する。
- テクノロジーアーキテクチャは、データ、ソフトウェア、ハードウェアを指す。
脚注
- ^ “Armテクノロジーのライセンスとサブスクリプション”. Arm. 2025年3月26日閲覧。
- ^ “Quantum Computer Architecture / 量子コンピュータアーキテクチャ”. 2025年3月26日閲覧。
- ^ “量子コンピュータ研究センター 量子コンピュータアーキテクチャ研究チーム”. 理化学研究所. 2025年3月26日閲覧。
- ^ 国立大学法人大阪大学、富士通(2023年3月)「量子コンピュータの実用化を早める新たな量子計算アーキテクチャを確立」
- ^ a b “アーキテクチャとは”. アイ&カンパニー. 2016年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月29日閲覧。
関連項目
外部リンク
アーキテクチャー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/24 07:50 UTC 版)
「Exstream」の記事における「アーキテクチャー」の解説
Windowsプラットフォーム上の開発環境で作成したデザインを、パッケージと称する中間構造に構成し、これをWindows、Linux、Unix、メインフレームといった多様なプラットフォームで稼働するEngineが解釈してドキュメントを生成するのが基本的な流れとなっている。この過程で静的な描画を先行して行い、パフォーマンスを有利なものとしているのが特徴である。 Engineは大量のバッチ処理を源流とし、業界最高の性能とされる。C++で書かれ、内部的な並列処理は行わないシングルスレッド処理である。バッチ、オンデマンドとも、リクエスト毎に独立したプロセスがOSで生成され、処理を行う。ただしRealtime Engineと呼ばれる方式により、あらかじめEngineを起動してオーバーヘッドをなくし、さらにレスポンスとスループットを向上するオプションもある。
※この「アーキテクチャー」の解説は、「Exstream」の解説の一部です。
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