アーキテクチャのライセンス供与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 09:53 UTC 版)
「MIPSアーキテクチャ」の記事における「アーキテクチャのライセンス供与」の解説
1990年初頭、ミップス・テクノロジーズ社は、プロセッサの設計をサードパーティーにライセンス供与しはじめた。プロセッサ・コア、つまり主要な演算部分の単純さによって、これは「MIPSコア」として成功を収め、従来は同等のゲート数と価格のCISCプロセッサが占めていた様々な分野でMIPSコアが使われるようになった。ゲート数と価格は密接な関係があり、CPUの価格はキャッシュメモリ領域を除けば、ゲート数とピン数でほぼ決まっていた。サン・マイクロシステムズも追随してSPARCコアのライセンス供与を開始したが、成功したとは言い難い。1990年代後半にはMIPSは機器組み込み用プロセッサ分野の勝者となっていた。1997年、4800万個目のMIPSベースのチップが出荷され、MIPS CPUファミリはモトローラのMC68000ファミリを出荷個数で抜いた。この成功により、SGI社はミップス・テクノロジーズを1998年にスピンオフさせた。ミップス・テクノロジーズの収入の半分はライセンス料であり、残りはサードパーティーが生産するコアの設計から来ている。 1999年、ミップス・テクノロジーズ社はライセンス体系を整理し、32ビットのMIPS32(MIPS II にそれ以降の新規機能を追加したもの)と64ビットのMIPS64(MIPS V ベース)に分けた。このアナウンスと同時に、NEC、東芝、SiByte(後にブロードコムが買収)がMIPS64のライセンス供与を受けた。フィリップス、LSIロジック、IDTもすでに参加している。成功に成功が続き、MIPSはコンピュータに近い機器(ハンドヘルドコンピュータやセットトップボックスなど)の市場で最も使われているヘビー級CPUコアとなっている。モトローラ社もセットトップボックスに自社のPowerPCではなくMIPSコアを採用した。 いくつかのベンチャー企業もミップス・テクノロジーズ社よりアーキテクチャ・ライセンスの供与を受けて参入してきた。最初にMIPSプロセッサを設計したベンチャー企業はQuantum Effect Devicesだった。MIPS社でR4300iを設計したチームはSandCraft(英語版)社を設立し、NEC向けにR5432を設計し、後にSR7100を作った。これは、組み込み分野向けの最初のアウト・オブ・オーダー実行プロセッサである。DECで最初にStrongARMを設計したチームはふたつのMIPS関連ベンチャーを設立した。ひとつはSiByteでSB-1250というMIPSベースで最初のSystem-on-a-chip (SOC) を実現した製品を作った。もうひとつのAlchemy SemiconductorはAu-1000という低電力のSOCを作った。SiByteはブロードコムに買収された。AlchemyはAMDに買収されたが、後にAMDはAlchemyをRaza Microelectronics (RMI) に売却した。LexraはMIPSに似たアーキテクチャをベースにDSP機能を付加したチップをオーディオ機器市場向けに、マルチスレッド機能を付加したチップをネットワーク機器市場向けに出している。LexraはMIPSからライセンス供与を受けていなかったため、MIPSとの間で2件の訴訟となった。1件はLexraがMIPS互換であることを宣伝しないという条件ですぐさま解決した。2件目は長引き、両社を疲弊させた。結局、ミップス・テクノロジーズがLexraに対してフリーライセンスと賠償金を払うことで決着した。 MIPSアーキテクチャを使ったマルチコアデバイスを構築することに特化した企業も2社登場している。Raza Microelectronics, Inc. は低迷していたSandCraftから製品ラインを買い取り、通信およびネットワーク市場向けに8コアの製品を提供した。Cavium Networks は元々はセキュリティ・プロセッサのベンダーだったが、こちらも同じ市場向けに8CPUコアを集積したデバイスを開発し、後に最大32コア版を開発している。両社ともに社内でコアを設計しており、MIPSからコア設計を買うのではなくアーキテクチャのライセンス供与だけを受けている。
※この「アーキテクチャのライセンス供与」の解説は、「MIPSアーキテクチャ」の解説の一部です。
「アーキテクチャのライセンス供与」を含む「MIPSアーキテクチャ」の記事については、「MIPSアーキテクチャ」の概要を参照ください。
- アーキテクチャのライセンス供与のページへのリンク