走れメロス
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評価
主題の美しさと文体の力強さを維持したままテンポよく読み終えられるため、短編ながら太宰の代表作の一つとして現在でも高い評価を受けている。その反面、一部の声に学校教材独特の徳目を褒め称えることへの「白々しさ」や、寺山修司の「歩け、メロス」(1975年/昭和50年)[36]のように、メロスを「無神経な自己中心性・自己陶酔の象徴」と考える否定的意見もある[16][37]。
派生作品
映像
- ドラマ『走れメロス』(1955年、NHK)
- 映画『奇巌城の冒険』(1966年、東宝・三船プロダクション)- メロス役は三船敏郎(役名は大角)。
- TVアニメ『赤い鳥のこころ 日本名作童話シリーズ 第19回 走れメロス』(1979年、テレビ朝日)
- TVアニメ『走れメロス』(1981年、「日生ファミリースペシャル」にて放送、フジテレビ)
- 制作:東映動画
- 声の出演:あおい輝彦、マキノ佐代子、檀ふみ、古川登志夫
- 主題歌
- 「走れ!青春」作詞 - 保富康午 / 作曲 - 浜圭介 / 編曲 - 井上鑑 / 歌 - ささきいさお
- 「友よ友よ」作詞 - 保富康午 / 作曲 - 浜圭介 / 編曲 - 井上鑑 / 歌 - ささきいさお
- 原作と並行して、その舞台化を依頼された劇作家「高田」と彼との約束を破った旧友「城島」のストーリーが描かれる。
朗読
- 太宰治『走れメロス;駈込み訴え―[録音資料]』草野大悟 朗読(カセットテープ)、新潮社〈新潮カセットブック 43〈D-1-3〉〉、1988年2月1日。ISBN 978-4-1082-0143-9。NCID BA54818145、OCLC 26564237。
- 太宰治『走れメロス 畜犬談』奥野健男 監修、西田敏行 朗読(カセットテープ)、岩波書店、NHKサービスセンター〈文芸カセット[日本近代文学シリーズ]太宰治作品集 5〉、1988年6月6日。ISBN 978-4-00120025-6。NCID BA4936316X 。2022年9月10日閲覧。
- 太宰治『朗読の時間 太宰治』市原悦子 朗読(CD)、東京書籍〈朗読CD付き名作文学シリーズ〉、2011年7月18日。ISBN 978-4-487-80592-1。NCID BB0692423X、OCLC 749784282 。2022年9月10日閲覧。
- 「走れメロス」『国語二年生』光村図書出版、2016年。
- 補足資料:“走れメロス <単元8 < 教材別資料一覧 2年”. 光村図書出版. 2022年9月10日閲覧。
- YouTube動画「窪田等 朗読『走れメロス』作:太宰治」(2020年7月21日)[38]
舞台
CLIEが製作する朗読演劇シリーズで舞台化された。キービジュアルはしりあがり寿。
- 極上文學 第7弾『走れメロス』(2014年12月、製作:CLIE・企画:MAG.net・制作:Andem)
- 出演
- 宮﨑秋人、大河元気、佐藤永典、椎名鯛造、西村ミツアキ、鈴木裕斗、村田充、萩野崇、川下大洋、名高達男
- スタッフ
- 演出:キムラ真(ナイスコンプレックス)
- 脚本:神楽澤小虎(MAG.net)
- 音楽:橋本啓一
パロディ他
この作品は、メッセージ性の高さや尺加減のよさなどから、義務教育の国語の教科書などで扱われ、知名度が高いため、一話完結系の連載物などでパロディの材料にされることも多い。
- 『ヤッターマン』(第1作)第74話「ハシレメドスの友情だコロン」(1978年5月27日放送、フジテレビ) - ハシレメドス(←メロス)を塩沢兼人が演じている。
- 『オバケのQ太郎』(第3作)第184話「走れメロQ」(1985年11月7日放送、テレビ朝日) - 国語の授業で「走れメロス」を取り上げていたのだが、宿題を忘れた正太は立たされていた。正太は「宿題はやってあるが持ってくるのを忘れただけ」と言い、Q太郎はそれを信じ家まで宿題を取りに行く。先生には「時間内に持ってこなければトイレ掃除だ」と言われ、正太はQ太郎がなかなか戻らないため焦りだす。やがてQ太郎が学校に戻り正太と泣きながら抱き合い、「本当は宿題もやっていなかった」と嘘をついたことを明かす。それを聞いていた先生も一応は感動するのだが、ほどなく「でもトイレ掃除はやってもらうぞ」とあっさり言う。
- 『ザ・ウルトラマン』「鎧を着込んだウルトラマン」というコンセプトのオリジナルキャラクター・メロスの名前の由来になっている。
- AKB48 teamK 4thの楽曲『メロスの道』はこの作品をモチーフにしている。作詞は秋元康。
- 『蒼き流星SPTレイズナー』オープニング主題歌『メロスのように-LONELY WAY-』(歌:AIRMAIL from NAGASAKI)はこの作品をモチーフにしている。作詞は秋元康。
- 『走れセリヌンティウス』 - 漫画家ながいけんが、このタイトルのパロディ作を『ファンロード』誌上で発表している(後に「チャッピーと愉快な下僕ども」に収録)。原作とは全く逆で、王がメロスを信じつつも苦渋の決断をする善人、メロスは犯罪者で妹の結婚式をでっち上げ、セリヌンティウスを勝手に身代わりに立てて脱走をはかろうとする極悪人で、セリヌンティウスはメロスが戻らないことを最初から確信しており、処刑をまぬがれるために脱走、メロスを捕らえて「親友を救うために走る」というシナリオを実行させようとする。劇中の台詞も原作をいちいち反転させた利己的・邪悪なものばかりで、最後のオチも含めて全編にブラックユーモアが溢れる怪作となっている。
- 『新・必殺仕置人』第32話「阿呆無用」 - 佐渡へ出張仕事に向かう念仏の鉄(と仲間たち)が、寅の会の掟に際して、仲間の一人・巳代松を人質に置いていく。
- 『もーれつア太郎』(第1作)第71話「走れニャロメロス」
- 『ケロロ軍曹』(6thシーズン)第275話Bパート「ケロロ 走れケロロ であります」
- 『【新釈】走れメロス』(【新釈】走れメロス 他四篇)森見登美彦
- 『セリヌンティウスの舟』石持浅海
- 『風雲児たち 幕末編』(みなもと太郎) - 第2巻にて脱藩した吉田松陰をメロス、その罪をかぶった来原良蔵をセリヌンティウスに喩えたギャグを展開。
- 『ついでにとんちんかん』(えんどコイチ)アホその112「走れヌケス!の巻」
- 『団地ともお』第4話Bパート「あの坂をのぼっていくともお」
- 『燃える!お兄さん』第11巻「走れメロス!早見先生の巻」
- 『かのこん』第8巻「恋の骨折り損?」で、冒頭が「走れメロス」のパロディ。
- 2011年から2012年にかけて放送された大塚食品「MATCH」のCMで、メロスをモチーフにしたキャラクターが現代日本の高校生として登場[39][40]。演じたのは手越祐也[39][40]。
その他
この記事に雑多な内容を羅列した節があります。 |
- 津軽鉄道津軽21形気動車に「走れメロス」と車両の愛称が付けられている。
- 青森市中央市民センター前に、この作品の一節を刻んだ文学碑「友情の碑」が設置されている。
- 本作品をモチーフにしたパチスロ機がJPSよりリリースされた。
- 本作品名を曲名とする楽曲が多数存在するため、それらの作品を集めた『「走れメロス」音楽祭』[注 7]が太宰ゆかりの弘前市にて開催された[42][43]。
- 2013年度 塩野直道記念 第1回「算数・数学の自由研究」作品コンクールにおいて、文章から距離や時間を仮定するとメロスは行きも帰りも歩く速度でしか移動しておらず、最後のラストスパートでさえ時速5.3キロにすぎないとの結論を出した研究『メロスの全力を検証』が最優秀賞をとった[44]。しかし、様々な足止め要素を考慮すれば、メロスはもっとがんばったとも考えられる[45]。
注釈
- ^ 太宰の書く「古伝説」(上述)とはこれを指す。
- ^ あるいは『寓話 Fabulae』第257章「友情でお互い同士結ばれた者」とも[14]。
- ^ ギリシア語で「壁」「市壁」を意味する。このモイロスがドイツ語圏でメーロスとなった[13]。
- ^ 元々シチリア島南西岸の町セリヌスから派生した形容詞で、その出身者という意味を込めていると思われる[15][16]。
- ^ 1世紀の共和政ローマの独裁官ウァレリウス・マクシムスによる『著名言行録』(全9巻)のうち第四巻七節「友情」 Dē amicitiā [24]、原文と訳の抜粋:Damon et Phintias...mutua culturum benevolentia... ダモンとピンシアスは...同等の好意を育む...[23][25][26]。
- ^ 滝口 (2013), pp. 76–78の1 - 7のうち、1のディオドロス・シケロス(Diodorus of sicily)『世界史断片』(前1世紀)および2のキケロ 『義務論』De Officiis 3.44-45(前1世紀)。3のウァレリウスも、異なる「ピンシアス」とカナ表記するが、上で注記したように原文には“Phitias”とあるので変異はない[26]。
- ^ 「走れメロス」音楽祭実行委員会の主催[41]。地元音楽関係者、弘前ペンクラブや弘前読書人倶楽部有志らにより構成。
出典
- ^ a b 長谷川 (1967), p. 535.
- ^ a b “走れメロス”. 青空文庫. 2024年6月5日閲覧。
- ^ 角田 (1983), pp. 11–13.
- ^ 佐野 (2021), p. 142.
- ^ 杉田 (2001), p. 289.
- ^ “中学校国語教科書における「定番教材」の比較研究”. 小林 厚志. 2024年7月8日閲覧。
- ^ 「走れメロス」『太宰治全集4』、筑摩書房 1998年 303頁(石橋 (2013), p. 15、注1引き)
- ^ 石橋 (2013), pp. 15, 18.
- ^ 石橋 (2013), p. 19.
- ^ 滝口 (2013), p. 75。小栗「註解」を角田 (2001), p. 136より孫引きで再掲。
- ^ a b 五之治 (1999), pp. 39–59.
- ^ 滝口 (2013), pp. 75–76.
- ^ a b 杉田 (2001), p. 297.
- ^ 滝口 (2013), pp. 78–79.
- ^ 杉田 (2001), p. 298.
- ^ a b c d e f g h i 杉田 (2002), p. [要ページ番号].
- ^ a b 杉田 (2001), pp. 288, 297.
- ^ a b 滝口 (2013), p. 79.
- ^ 杉田 (2001), pp. 292, 300.
- ^ Guerber (2010).
- ^ “Friedrich Schiller, Damon und Pythias, 1799” (ドイツ語). NETZFIT. 2021年9月29日閲覧。
- ^ a b c 杉田 (2001), p. 323.
- ^ a b c 滝口 (2013), p. 76.
- ^ 杉田 (2001), p. 296.
- ^ (ラテン語) Factorum et dictorum memorabilium libri IX/Liber IV#Ext., ウィキソースより閲覧。 著名言行録 第4巻 Ext. 1.
- ^ a b Valerius Maximus, IV, 7, ext. 1893, p. 172.
- ^ 杉田 (2001), p. 288以降、杉田 (2002), p. [要ページ番号]
- ^ “Damon and Pythias” (英語). Encyclopedia Britannica. Encyclopædia Britannica, Inc.. 2022年9月12日閲覧。
- ^ “Damon and Pythias”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2023年10月2日閲覧。
- ^ 小学館『プログレッシブ英和中辞典』第4版. “Damon and Pythias”. コトバンク. 2023年10月2日閲覧。
- ^ 赤い鳥の本 ; 第9冊
- ^ 『デイモンとピシアス』:新字新仮名 - 青空文庫
- ^ 檀 (1949), p. 134.
- ^ 小野 (2001), pp. 56–57.
- ^ 檀 (1949), pp. 111–134.
- ^ 寺山 (1975).
- ^ 中村 (2021), p. 41, 「走れメロス」「無神経さをメロスに与えることによって、最初から一つの滑稽譚の様相を見せている」として、「走れメロス」を辛辣に批評したのは寺山修司であった。「妹の結婚に兄がいなければならぬというのも、説得力の乏しい理由」であり、それは「ある種の思い上がり」で、「このエゴチストの道化の頭を去来しているのは、ひたすら、自分のことばかり」「卑劣漢」で、ここに信頼・友情・反抗・正義・感動などを読み取るのは「極めて困難である」と寺山はいう。.
- ^ 窪田 2020.
- ^ a b 『すべてに一生懸命で憎めないキャラクターの‘高校生メロス’が登場! 手越祐也さんが‘走れメロス’衣装で出演 大塚食品 「マッチ」新CM 6月18日(土)から全国の各放送局にて放映開始』(プレスリリース)大塚食品、2011年6月17日 。2022年9月10日閲覧。
- ^ a b “手越祐也扮する“高校生メロス”「マッチ」新CM、今度は親友の海水パンツから逃げる!”. クランクイン!. ブロードメディア (2012年5月25日). 2021年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月29日閲覧。
- ^ 川村昇一郎 (2017年2月23日). “「走れメロス音楽祭」を開催したい。太宰ファンのみなさまご協力ください!”. CAMPFIRE(キャンプファイヤー). CAMPFIRE. 2021年9月29日閲覧。
- ^ “25日、弘前市で「走れメロス音楽祭」”. Web東奥. 東奥日報社 (2017年6月22日). 2017年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月11日閲覧。
- ^ 「「走れメロス」音楽で表現」『陸奥新報』陸奥新報社、2017年6月27日。2021年9月29日閲覧。
- ^ “村田一真「メロスの全力を検証」< 2013年度 塩野直道記念 第1回「算数・数学の自由研究」作品コンクール 最優秀賞「塩野直道賞 中学校の部」受賞作品 < 過去の受賞作品”. 一般財団法人 理数教育研究所 Rimse. 2021年9月29日閲覧。。
- ^ 「「走れメロス」は走っていなかった!? 中学生が「メロスの全力を検証」した結果が見事に徒歩 検証した村田少年「メロスはまったく全力で走っていないことが分かった」。」『ねとらぼ』アイティメディア、2014年2月6日。2021年9月29日閲覧。
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