観光バス 観光バスの概要

観光バス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/24 06:56 UTC 版)

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観光バスの例(団体貸切で弟子屈町硫黄山まで運行されたはとバス

日本の観光バス

観光バスとは、一般的に路線バス高速バスと違う車体の車輌を用い、日数・時間・距離などに応じて1台ごとに貸切料金を得る方式で顧客や主催者の依頼に応じた行程で運行するものをいう。ここでは、特記ない限り、観光バス(道路運送法に規定される「一般貸切旅客自動車運送事業」の形態として運行されるバス)または特定バス(道路運送法に規定される「特定旅客自動車運送事業」の形態として運行されるバス)について記述する。

運営

事業

従来は免許制で、多くは路線バス事業も展開している日本国有鉄道→JRバスか私鉄か大手専業系バス会社が貸切バス事業も行っていたが、2000年道路運送法が改正され、バス事業自体が免許制から許可制に変わり、貸切バスを中心に異業種や新規事業者の参入が相次いだ。同時に既存のバス会社も、主として経営効率化の見地から、貸切バス事業を含むバス事業の分社化や吸収合併などの業界再編がさかんに行われている。2000年代中頃からは、インバウンド需要の高まりを受け、訪日外国人旅行客の輸送を専門とする事業者の新規開設が相次いでいる。このような事業者は免税店[2]や外国資本の企業[3]が母体となっているケースが多い[4]

結果として競争が激化し、事業者の経営が不安定となり、乗務員は少ない人員による長時間勤務を強いられ、過労や賃金の低下など労働条件の悪化が指摘されている。2007年2月18日には、スキー場からの帰りの「あずみ野観光バス」(長野県北安曇郡松川村)の貸切バス(旅行会社が募集した会員制スキーバス)が大阪モノレールの橋脚に衝突、27人が死傷する事故が発生した。事故の原因としては、長時間勤務による過労からの居眠り運転が指摘されており、同社については、2006年6月に労働基準監督署から、長時間労働を改善するよう是正勧告がされていたという。この事故については、後日スキーバスを催行した旅行会社サン太陽トラベルから法外に安い運賃での運行に加え、乗務員不足状態での臨時便運行を強要されるなどのいわゆる「下請けいじめ」同然の行為を受けていたことが明らかとなった。その後、あずみ野観光バスは「ダイヤモンドバス」に社名を変更し営業継続している。2007年2月21日の毎日新聞によると、労働基準法などに違反するとして、2005年に行政指導を受けたバス会社が全国で85社に上ると報じられた。これは法改正された2000年の20社に比べて、4倍以上に増加したことになり、労働条件の悪化を伺わせる現象である。 事故後バス事業者向けに各種安全対策が取られたが、その後2012年の関越自動車道高速バス居眠り運転事故を契機に旅行会社に対しても行政指導が行われ安全策の向上が図られた。しかし、2016年の軽井沢スキーツアーバス転落事故をはじめとする重大事故が相次いでいる。

安全対策制度

上記の吹田スキーバス事故をきっかけに、公益社団法人日本バス協会では、平成23年(2011年)より「貸切バス事業者安全性評価認定制度」を開始した[5]。申請は貸切バスを3年以上営業している事業者の任意で、安全性に対する取り組み状況を協会が審査し、評価された事業者名を公表する。評価レベルは1~3の星の数で示され、星付きの認定シールをバス車体に貼ることができる。

また、国土交通省は、2012年の関越自動車道高速バス居眠り運転事故発生を受けて、翌2013年に「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」を策定し、事業者に対して安全を確保するための基準強化を行なった[6]。国土交通省ネガティブ情報等検索サイトでは、過去の3年間に行政処分を受けた貸切バス事業者を検索できるほか、各地方運輸局の公式サイトでも行政処分情報を公表している[7]

また、貸切バスを手配の介在する「ランドオペレーター」についても「貸切バス等の安全確保対策に関する行政評価・監視」の中間公表において、総務省は「ランドオペレーターに対する法規制の仕組みの構築」の必要性を検討している[8]

運用

乗務員

中型車以下の場合は運転士1名の場合や、夜行運転の場合は運転士2名だけの場合があるが、一般的に運転士1名と車掌(バスガイド)1名の構成で運行され、ガイドは車内サービス、観光案内をマイクを使って行い、車内清掃や後退誘導も行う。後退時、左折時巻き込み事故の防止の点からも保安的要素もあり運転士を補助している。多くは女性である。貸し切りの場合、団体によっては運転手のみでガイドが乗務しない場合もある。運転士は必ず大型か中型(またはマイクロ限定条件つき)の二種運転免許を所持し、道路状況の判断や渋滞回避、大きな車体を観光地の駐車場へ入れ込むなど運転者としての最高レベルの技能を要求される。多くは男性である。但し、2000年の道路運送法改正以降は原則として車掌乗務が不要となっており、近年は観光目的の運行でも運転士1名のみでのケースが増えはじめ、車体後部モニターカメラ、ワンマン運行支援システム、GPSと連動した自動ガイドシステムなどのサポート設備も次第に普及してきている。

貸切

学校の修学旅行や遠足などの行事、社員旅行など、団体で貸し切っての運行が多く、拾い集めることはあっても乗客は固まって行動し、客扱いは一団となって行われる。停留所があるわけでもないので、乗り降りは路線バスに比べると少ない回数となる。また、団体の中に添乗員と呼ばれる世話人なり幹事がいる場合、情報伝達はその世話人などを通して行うので簡単に行える。乗客が均質なことが多く、トラブルの発生は少ない。

運賃・料金

貸切(観光)バス会社は、時間・距離に応じて運賃の上限・下限を定めて各運輸局に届出ている。従って運賃は自由に決められるものではなく、上限運賃を上回ったり、下限運賃を下回ることは道路運送法[9]違反であり、違反した場合、行政処分[10]もある。また、貸切バスを配車できる事業者は出発地・到着地いずれかに営業区域(都道府県単位)を有する事業者でなければならなく、全国どこでも配車できるわけではない[11]

  • 時間制運賃 - 実拘束時間に時間賃率を乗じる。出庫・帰庫点検2時間+3時間(3時間未満は3時間として計算される)計5時間は最低保証となり、1時間以内の利用であっても5時間と計算する。1日当たり13時間(拘束時間)を上限とし、2日以上は1日平均9時間を上限とする(待機料金も時間制運賃に計算する)。キロ制運賃と併用して計算する。
  • キロ制運賃 - 走行キロに1kmあたりの運賃額を乗じる。各運輸局管内にて上限額・下限額が決まっている。10km未満の場合は10kmとして計算する。時間制運賃と併用して計算する。
  • 深夜早朝運行料金 - 22時から翌5時の間に時間単位で適用する(最大2割増)。
  • 交代運転者配置料金 - 長距離・長時間・夜間運行の際に交代運転手を配置した場合に適用する(時間制運賃+キロ制運賃で計算する)。
  • 回送料金 - 時間制運賃・キロ制運賃に含まれて計算する。
  • 航走料金 - フェリーにより航走にかかる時間に適用(乗船時間が8時間を超える分は、時間制運賃に計算しない)。
  • 特殊車両割増料金 - 最大5割増となる。

乗務の制限

貸切バスの勤務時間は国土交通省の勤務時間等基準告示[12]に定められており1日の拘束時間は原則13時間以内、運転時間は2日を平均して1日当たり9時間以内でかつ連続運転時間は4時間以内と定められている。

貸切バスの高速道路走行を伴う運行では先の「1日あたり9時間」に相当する乗務距離の上限は670kmと定められている。670kmを超えて運行する場合は別の運転者を用意、つまり「二人乗務」としなければならない。これは国土交通省の指針[13]であり、バス会社別の労使協定によりこの指針よりも短く設定されている場合もある。逆に、小規模なバス会社では人手不足から一人で一日に670km以上の距離を運転するケースもある。

台湾の観光バス

台湾では台湾観光局が各地の旅行会社と提携する観光バスサービスの台湾観巴(Taiwan Tour Bus)が運営されている[14]。これらの観光バス(ガイド付)は事前予約制で台湾高速鉄道(台湾新幹線)や台湾鉄道の駅、空港、ホテルまでの送迎サービスがあり各観光地との間で半日または1日のコースが設定されている[14]

なお、台湾では鉄道主要駅等と観光地をつなぐ交通機関にシャトルバスの台湾好行があり、エリアごとに観光地を巡回する乗降自由のバスとなっている[14]




  1. ^ 徳光・木佐の知りたいニッポン!~安全・安心の運行を! 進化する貸切バス政府インターネットテレビ、内閣府、2015年3月26日
  2. ^ ワールドキャビン (「ALEXANDER&SUN」系列)、ケイ・エス・エバーグリーン観光及び子会社のジャパン・グリーン(「光伸真珠」系列)など。
  3. ^ 外資系の観光バス事業者としては、2004年に韓国の旅行会社「株式会社旅行博士」の出資により設立された「旅行博士観光バス(母体変更により2008年トラベル・テースト・ジャパンに改称)」が初である。その後、「パンスター」系列の「サンスターライン」、「友愛観光バス」(「ハナツアー」系列)、「スプリングワールドバス(「春秋航空」や「「春秋航空日本」の母体である上海春秋国際旅行社系列)などの事業者が設立されている。
  4. ^ 北海道に本拠地を置く新日国際交通 北海道のように、地方の貸切バス事業者の買収により設立されるケースもある。
  5. ^ 動画でみる・認定制度早わかり日本バス協会
  6. ^ 輸送の安全を確保するための貸切バス選定・利用ガイドライン (PDF)”. 国土交通省自動車局 (2014年4月1日). 2014年5月28日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2017年4月5日閲覧。
  7. ^ 一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の状況、国土交通省関東運輸局。
  8. ^ “貸切バス等の安全確保対策に関する行政評価・監視「ランドオペレーター」に関する中間公表” (日本語) (プレスリリース), 総務省, (2017年3月31日), http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/000112999_00001.html 2017年4月5日閲覧。 
  9. ^ 30条2項及び9条の2第1項事業の健全な発達を阻害する競争をしてはならない
  10. ^ 警告処分や再違反の場合、事業用自動車の使用停止
  11. ^ 道路運送法第20条 発地及び着地のいずれもがその営業区域外に存する旅客の運送をしてはならない
  12. ^ 「事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」
  13. ^ 「一般貸切旅客自動車運送事業に係る乗務距離による交替運転者の配置の指針」
  14. ^ a b c 台湾まるごとガイド”. 台湾観光局. 2019年3月5日閲覧。
  15. ^ “菰野東部交通株式会社が運行する貸切バスにFree Wi-Fiの提供を開始” (PDF) (プレスリリース), ワイヤ・アンド・ワイヤレス, (2017年3月22日), https://wi2.co.jp/jp/assets/press/data/20170322_Komonotoubu_Bus_Wi2Free.pdf 2018年5月13日閲覧。 
  16. ^ ”新車”USBポート・コンセントを装備した大型観光バス6台を導入しました”. 関東自動車 (栃木県) (2017年5月9日). 2018年5月13日閲覧。
  17. ^ やんたけバス研究所 岡山の二階建てバス 下津井電鉄編 中央観光バス経由で下津井電鉄に導入されたネオプラン・スカイライナーについて、車内にエレクトーンが設置されていたと紹介されている。
  18. ^ 神奈中観光の公式ページ内バスタイプのご紹介で、車内装備を示すマークに「上高地仕様」とある。
  19. ^ 「関西の観光バス、号車番号『逆番』でGO!」朝日新聞大阪本社版夕刊2004年5月28日「ほんま?関西伝説」
  20. ^ この傾向は関西で顕著だが、東海の一部の事業者でも見受けられる。
  21. ^ 高速道路料金の引下げの実施について国土交通省


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