観光バス事業者へのしわ寄せと安全性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 05:40 UTC 版)
「ツアーバス」の記事における「観光バス事業者へのしわ寄せと安全性」の解説
2000年と2002年に道路運送法が改正され、バス事業の規制緩和が行われたことにより貸切バス事業へ参入する会社が急増した。これにより貸切バス事業者間で過当競争状態が生まれ、貸切バス運賃の値下げを希望する旅行代理店と、運賃を値下げしてでも稼働率を上げたいという貸切バス事業者の思惑も相まってダンピングが進行し、運賃の低下が急速に進んだ。加えて、貸切バス事業者(特に零細事業者)が、燃料費高騰などに伴う運行経費抑制と運転手不足から、運転手一人あたりの稼働率を上げる方策をとり、結果的に運転士の過労運転が問題となった。 ツアーバス運転士の過労運転が原因とされる事故としては、吹田スキーバス事故(2007年2月、添乗員が死亡)、関越自動車道高速バス居眠り運転事故(2012年4月、乗客7人が死亡)などの例がある。法令により労務管理がなされている高速路線バスに比べて、高速ツアーバスは安全面に問題があると指摘された。 これについては監督官庁である国土交通省が吹田スキーバス事故を受ける形で、省内に「貸切バスに関する安全等対策検討会」を設置し、2007年6月6日から同年10月15日まで検討会を開催、同年10月に報告をまとめた。これを受け、2007年12月14日に通達「貸切バスにおける交代運転者の座席の確保等の安全確保の徹底」(平成19年12月14日国総観事第297号、総合政策局観光事業課長から(社)日本旅行業協会・(社)全国旅行業協会等あて通知)により、交替運転者が車内で身体を伸ばして休息できる設備の確保を徹底させるとともに、2008年6月2日には旅客自動車運送事業運輸規則を改正し、着地における乗務員の睡眠施設等の確保義務を明確化した。 また、長距離運行にかかる安全面への対応としては、2008年には国土交通省から「一般貸切旅客自動車運送事業に係る乗務距離による交代運転者の配置」に関する試行的指針が示され、運転者の1日の最大走行距離は、勤務時間等基準告示で定められた2日を平均した1日当たりの運転時間の上限(9時間)の運行距離に相当する670キロメートル(高速道路のみ走行の場合)とされた。ただしこの指針には拘束力がなく、違反した場合の罰則規定もない。 ただしこれらの指導は、ツアーバスを主催する旅行代理店に対する指導ではなく、運行に携わる貸切バス事業者に対するものが中心であったことから、行政による指導監督としては不十分という結果となり、2010年の総務省による行政指導、さらには高速バスとツアーバスの「一本化」に向けた動きとして「新高速乗合バス制度」の発足につながることとなる。
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