いすゞ・スーパークルーザーとは? わかりやすく解説

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いすゞ・スーパークルーザー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/10 06:30 UTC 版)

いすゞ・スーパークルーザーHD


P-LV719R+IKコーチ 関東自動車

いすゞ・スーパークルーザーは、1986〜1996年にいすゞ自動車が製造・販売していた大型観光バス

ボデーは当時アイ・ケイ・コーチ(旧・川重車体工業)が標準で架装、他に富士重工業(FHI)製と西日本車体工業(NSK)製があったが、本稿では標準ボディーであるアイ・ケイ・コーチ(IKC)製を主軸に述べる。

なお、ここではスーパークルーザー以前の1950〜1980年代前半モデルについても記述する。

1960年以前のいすゞ観光バス

BC151P(富士重工車体) 1962年式 自家用
BA341P(川崎航空機車体) 年式不明 伊豆下田昭和乗合自動車

BX系

BX95等の長尺シャシをベースにスペシャルボデーを架装した観光バスが1950年代に流行する

BA/BC系

以降観光車にはエアサスが普及し始める。

なお、この頃から既に左ラジエーター、右排気管配置であり、このいすゞ大型リアエンジンバスの特徴は、排出ガス識別記号KL代[1]まで一貫して続く。

1960〜1970年代前半までのいすゞ観光/高速バス

BU/BH系

73SC・ハイデッカーI・II・III・IV・V

BU/BH系

73SC 東海自動車 BU20K
  • 1973年
    • 川重が丸型ボディから73SC型ボディにフルモデルチェンジすると同時に、V170型を直噴にした8MA1型(315ps)を載せ、BH21Pとなる。

翌1974年、川崎重工業から自動車事業部分社化され、川重車体工業株式会社が発足、以降いすゞ製シャシ向け以外の架装を行わなくなる。また、このモデルは韓国セハン自動車(現・大宇バス)でもライセンス生産されていた。

C*A系

(この時代の路線系についてはいすゞ・C系を参照)

ハイデッカーII

K-CSA650 南部バス
  • 1975年 CRA580/650
  • 1976年
    • ハイデッカーI型(通称H1)登場。全高は3.3m。架装は川崎車体。外観的には標準床車を段上げしたセミデッカー的なスタイルになっており、天井の前端がスラント窓となっている。
  • 1977年
    • ハイデッカーシリーズの第2弾として ハイデッカーII型(通称H2)登場。全高はこちらも3.3m。前窓上を拡大したフラット屋根となった。
  • 1979年 K-CSA580/650
    • 昭和54年自動車排出ガス規制に適合し、K-C*A系となる(K-が54年規制適合記号)。搭載エンジンに10PB1型(320ps)が追加され、車両型式もCSAとなる。新規V10エンジンの搭載をアピールし、大型トラックのニューパワー同様にCSAには「V10SS」、CRA・10PA搭載型には「V10S」のエンブレムが付く。
  • 1980年
    • ハイデッカーシリーズ第3弾としてハイデッカーIII(通称H3)がいすゞとの共同開発で登場。リベットレスボディ(基本構造はモノコックのまま)を採用し、ヘッドライトは横並びの角形4灯式で、フロントガラスが上下の2枚ガラスとなり、側面は大型のカーブドガラスが採用されている。後面窓も大型の曲面ガラスになっている。
    • 同時にハイデッカーシリーズ第4弾のハイデッカーIV型(通称H4)ボディ登場。縦並びの角形4灯式ライトが特徴で[注 2]、全高は3.4mとなり側窓上にカーブが付くデザインとなる。こちらもいすゞと共同開発したリベットレスボディである。同時にハイデッカーIとIIもリベットレスボディにあらためられる。
  • 1981年
    • ハイデッカーシリーズ第5弾として、IV型をベースに、側窓上をフラットにした廉価版のハイデッカーV型ボディ(H5:横型4灯式ライト)が追加される。
  • 1983年
    • ハイデッカーI型、ハイデッカーII型のフロントパネルを変更。ハイデッカーIII型に近い形状となる。

なお、73SCボディのCPA/CQA(BU系ホリゾタルエンジン搭載車)がハイデッカーシリーズと共に併売されていた。こちらも1983年にフロントパネルを変更した。

輸出先での使用例として、タイの例がある。同国では国内メーカー製の路線バスボディ(冷房付き・非ワンマン仕様)を架装し、バンコク大量輸送公社英語版によりバンコク都市圏の路線バスとして現在も使用されている。

P-LV2AAX系

ハイデッカーIV・9m
P-LV217H トキワ観光

(この時代の路線系についてはいすゞ・キュービックを参照)

  • 1984年 P-LV219S/219Q/217H
    • 昭和58年排出ガス規制に適合。この際、車両型式の表記ルールが変更され、P-LV2AAX系となる。2はエアサスを、AAの二桁数字が搭載エンジンを、Xのアルファベットでホイールベースを表している。エンジンは高出力/標準出力とも10PC1型(330ps/295ps)に統合。ホイールベース6.5m(S)、5.8m(Q)の2種はそのままに、新たにホイールベース4.2mのLV217Hが追加される。エンジンはV型8気筒の8PC1-N型240psを搭載、国産初の大型幅・全長9m観光車であった。後に8PC1-S型260psを搭載した。K-車同様に「V8SS」のエンブレムが装着された。
  • 1986年
    • マイナーチェンジ。後面のスタイルが変更され、固定窓の隅のリベットが消滅した。
  • 1987年
    • スーパークルーザーHD登場に伴い生産終了。

なお、ハイデッカーシリーズがスケルトンボディ化された後も、標準床仕様は73SCボディで併売され、1987年まで生産された。

スーパークルーザー

シリーズの概要

FHI-15型HD1ボディのLV219S → LV719Rの例

フロントオーバーハング給油口ホイールボルト数(10スタッド)に注目
  • このスーパークルーザーから観光系は前軸が独立懸架となり、型式がLV7AAXという表記になった。同時に、2軸のまま各軸の許容荷重バランスを向上させるため、ホイールベースを350mm短縮(S:6.5m→R:6.15m/Q5.8m→N5.45m。前軸を後退させ、重心位置に近づけた。)、フロントオーバーハングを延長して燃料タンクを移設した。各軸の負担荷重の増大に対しては10スタッドホイールを採用する事で対応している。(詳細はスーパーハイデッカー項を参照の事。)この事により富士重製や西工製の他社シャシ・旧LV219と同型ボディでも、フィラーキャップ(給油口)位置やトップドアと前輪の間隔等で外観上の識別は容易である。
  • 9m車はスーパークルーザーシリーズとしての架装はされず、P-LV217Hが継続販売されている。また富士重工業(FHI)製車体車も登場した。

シリーズの変遷

P-LV719系

  • エンジンは10PC1V10エンジンを搭載、SHDとUFCは330ps、ホイルベースはRのみ。HDは330psと295psの高/低馬力、RとNの2種類のホイールベースが用意された。
    • P-LV719R 全長12m(WB=6.15m)
    • P-LV719N 全長11.3m(WB=5.45m)

U-LV771系

  • 1990年、平成元年排ガス規制に適合させるため、マイナーチェンジを実施。エンジンは10PD1型(355PS/310ps)V10エンジンが搭載された。新たにABSがオプション展開された。UFC、SHD、HDの高/低馬力とホイルベース展開は従前のまま。
    • U-LV771R 全長12m(WB=6.15m)
    • U-LV771N 全長11.3m(WB=5.45m)
  • 1994年にフェイスリフトを行い、ヘッドライトが角型4灯式から異形2灯式に変更された。このヘッドライトは90年以降のエルフフォワード810EXと同じもの。西工ネオロイヤルC型・92MCと富士重17型・後期型(日産ディーゼル製シャーシー以外)もこのヘッドライトを装着している。
  • 9m車は同時にU-LV270Hとなり、エンジンは8PD1型275psを搭載、富士重工業(FHI)製車体のみとなった。また、翌1991年には、車幅はスーパークルーザーと同じで全長7m車のグランドロイヤル(GR43*F、車体は北村製作所製)を新たに追加している(いすゞ・ジャーニーQを参照)。

KC-LV781系

  • 1995年、平成6年排ガス規制に適合させるため、マイナーチェンジを実施。 エンジンは10PE1型(380ps/325ps)V10エンジンが搭載された。また、衝撃吸収式ステアリングが採用された。UFC、SHD、HDの高/低馬力とホイルベース展開は従前のまま。
    • KC-LV781R 全長12m(WB=6.15m)
    • KC-LV781N 全長11.3m(WB=5.45m)
  • 9m車は同時にKC-LV280Hになり、エンジンは8PE1型285psを搭載した。
  • 同年、アイ・ケイ・コーチからいすゞ全額出資のいすゞバス製造株式会社に社名変更。
  • 1996年12月11日、ガーラ(初代)にフルモデルチェンジしたことを受け、いすゞバス製造製の純正ボディのスーパークルーザーは生産を終了した。純正ボディ以外のシャーシ供給は1998年まで続けられた。
  • ガーラの初期型で10PE1型搭載車の型式は「KC-LV781R1(またはN1)」である。スーパークルーザーの場合は末尾に数字がつかないことで区別される。

純正以外のボディ

富士重工業(FHI)製

  • BU / BH + 11型/13型
  • C*A / LV219 + 13型/15型
  • LV217H / LV270H / LV280H (HD-9m) + 15型/17型
  • LV719 / LV771 / LV781 + 15型
  • LV771 / LV781 + 17型

西日本車体工業(NSK)製

参考文献

  • 村上龍雄『私の知っているバス達《いすゞ自動車》 戦後のいすゞバスの歩み』 ぽると出版〈バスラマエクスプレス02〉1996年11月、ISBN 4-938677-62-8

脚注

注釈

  1. ^ 奇しくも同じいすゞから、50年後の2019年に国産車で唯一の総輪ディスクブレーキを採用した大型バスであるエルガデュオ連節バス)が登場した。
  2. ^ のちに路線バスエルガミオエルガで復活したが、両車種のフルモデルチェンジとともに消滅した。

出典

関連項目




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