枕 枕の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/27 07:18 UTC 版)

枕の一例
小さなパイプをつめた枕。つめものだけ手早く洗って乾かせる。

冬季など寒い時期には、首の横から冷たい空気が布団の中に入り込むのを防ぐ役割も果たす。

歴史

現代のような寝具としての枕の使用の起源は古代のメソポタミア、バビロニア、アッシリア、フェニキア時代といわれている[3]

それ以前については、1924年南アフリカアウストラロピテクスの頭蓋骨の下に人為的に砕かれたが敷かれていたのが発見されたが、祭司的な意味で敷かれたのか、それとも実際に使われていたのか定かではない。古代においては丸太や平たい石をそのまま、あるいはマコモスゲなどのを束ねて枕として利用した。

古代エジプトでは現代のベッドの原形が誕生したが、頭部はヘッドレストを使用していたため、ベッドには枕止め用のヘッドボードがなくフットボードしかなかった[3]

枕の発生によりメソポタミア、バビロニア、アッシリア、フェニキア時代にはベッドにヘッドボードが設けられるようになった[3]

木材石材の加工や布の染色裁縫陶磁器製造の技術進歩に伴い、枕は重要な工芸品になり、まず中国で丹念に装飾された布製、陶磁器製の枕が広まり、中世ヨーロッパでも広く貴重品として売買された。貧しい人の間では、粗い布を縫い合わせたものに藁を詰めたものが広く用いられていたが、地域により骨や木、時には石に布を巻いたものが枕に用いられた。産業革命以後は、安価に大量生産された布を使い、様々な枕が作られるようになり、現在にいたる。

日本の古墳時代には、古墳の被葬者に対して、埴製(例、燈籠山古墳)・石製・琥珀製(例、竜田御坊山古墳)など多様な材質の枕を用いた。これらは権力者の文化であり、死者に用いる枕文化である。これらの枕文化は当時の加工技術を知る上でも重要な考古学資料となっている。

江戸時代以前の日本では(まげ)の形を崩さないようにする必要があった[2]。そのため、箱の上に布製の括り枕を取り付け高さを上げた枕が使用された[2]。 こうした枕は垜枕と呼ばれた。箱の多くには引き出しがついており、小物や金品など貴重品を入れる金庫の役目を果たしていた。そのため、盗人のことを「枕探し」と呼び、火事の時は枕を抱えて逃げた。また、引き出しに春画を入れることも多く、「枕絵」と呼ばれる所以となっている[4]

様々な文化において、枕は生や死と密接に結び付けられている。日本語のまくらは、たまくら、つまり魂の倉が語源であるとする説がある[5]。 かつては海難事故などで葬儀の時に遺体がない場合に、故人の使っていた枕を代用する風習があった[4]

まくら白書 2024年版では9割以上の人が枕を使用しているとの調査結果が報告されている。[6]

構造

適度な硬さを持つ物を加工し頭を載せやすくしたものと袋に詰め物をしたものに大別できる。

適度な硬さを持つ物

詰め物の芯材

枕カバー

枕の付属品として枕カバーがある[1]


注釈

  1. ^ ホテルなどでは、基本的には毎日交換する。家庭では毎日〜数日おきに、長い場合でも1週おき程度で交換することが望ましい。それ以上つけっぱなしにすると、汗などによって臭いが発生し、本人が気づかないうちに頭髪がにおうようになる。
  2. ^ 最近は百円均一の店で、枕を物干し竿でうまく干すための商品が販売されており、販売商品点数ランキングの上位にも登場することがある。

出典

  1. ^ a b c d e 意匠分類定義カード(C1) 特許庁
  2. ^ a b c 関ケ原町歴史民俗資料館
  3. ^ a b c 人と寝具の意外と知られていない長く深い縁”. 東洋経済オンライン. p. 1. 2021年9月29日閲覧。
  4. ^ a b 岩井宏實『日本の伝統を読み解く:暮らしの謎学』青春出版社、2003年、ISBN 4413040686、pp.137-140.
  5. ^ 花岡利昌『枕の人間工学 -安眠の条件-』光生館、1993年。ISBN 4-332-01010-8 
  6. ^ 01-1.現在、枕を使っていますか?


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