天然ガス自動車 天然ガス自動車の概要

天然ガス自動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/22 10:41 UTC 版)

山梨交通のCNGバス
富士山を擁する山梨県では、県独自の補助制度により多数のCNGバスが導入された。
仙台市営バスのCNGバス
バスの屋根部分に積載されたCNGガスボンベ

概要

タイ王国ラヨン県の天然ガスステーション内のタンク

天然ガス自動車には、圧縮天然ガス自動車(CNG自動車)、液化天然ガス自動車(LNG自動車)、吸着天然ガス自動車(ANG自動車)がある[1]

圧縮天然ガス(CNG[2])を使用する圧縮天然ガス自動車(CNG自動車)には、天然ガスのみを燃料とする天然ガス専焼車、天然ガスとガソリンを切り替えることができるバイフューエル車、吸入空気に天然ガスを混合させて着火源に軽油を使用するデュアルフューエル車、天然ガスエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車がある[1]

液化天然ガス(LNG)を使用する液化天然ガス自動車(LNG自動車)は天然ガスを超低温容器に液体で貯蔵して走行する[1]。吸着天然ガス自動車(ANG自動車)は天然ガスをガス容器内の吸着材に吸着させて貯蔵し走行する[1]

天然ガス自動車は、天然ガス産出国でガス有効利用のため利用されるようになり、イランパキスタンアルゼンチンインドブラジルなどを中心に普及している[1]。IGU「Triennium Work Report June 2018(Natural gas - the fuel of choice towards clean mobility)」によると、世界の天然ガス自動車の普及台数は2600万台で、中国では約535万台、イランでは約400万台、インドでは304万5268台となっている[1]。また天然ガスを産出する新潟県でも戦後の燃料不足期に新潟交通がガスを採掘して使用していた[3]

天然ガス自動車の特徴

天然ガス自動車のエンジンは、ディーゼルエンジンベース(バストラックに搭載)、ガソリンエンジンベース(バンなどに搭載)の双方がある。

天然ガスは発熱量あたりのCO2排出量が化石燃料の中で最も低く、地球温暖化対策としても重要視されている。またディーゼル自動車に比べ、排気ガス中の有害物質(黒煙NOxSOxなど)が大幅に少ないことから、環境対策として自動車燃料に使われるようになった。

富士急行のCNGバス「エバーグリーンシャトル」パンフレット(1995年)によれば、ディーゼル車と比較した天然ガス自動車の排出量の比較は以下のとおりである。

  • 窒素酸化物…60〜70%低減
  • 二酸化炭素…20〜30%低減
  • 硫黄酸化物…100%低減
  • 黒煙…100%低減
  • (参考)バス車両の室内騒音量…5〜6%低減
  • (参考)バス車両の価格…1台2,407万円(ディーゼル車は1,415万円)
  • (参考)バス車両の燃費…1kmあたり41円(ディーゼル車は1kmあたり17円)

圧縮天然ガス利用の場合は燃料が気体であるため、貯蔵性・運搬性に劣るという弱点がある。一方で燃料が気体であることから液体燃料より重量は軽く、燃料タンクを樹脂製にすることでタンク自体の軽量化[4]も可能となる。このことから、床下機器の配置に工夫を要するバス車両の低床化(特にノンステップバス)においては、ガスボンベを屋根上に搭載し床下から燃料タンクを廃することができるという利点もある。

天然ガス充填設備

天然ガス自動車用のガスステーションエコ・ステーションと呼ばれ、燃料運搬の都合から都市ガス事業者の工場やガスタンクに隣接することが多い。ガソリンスタンドやオートガススタンドと併設される場合もあるが、CNGの充填は営業時間が短く設定されていることが多い[注 1]。また、都市ガス事業者の広告ラッピングバスの多くが天然ガス自動車となっている。

天然ガス資源が豊富に産出・供給できる地域ではステーションおよび自動車が普及する傾向にあり、イラン中華人民共和国パキスタンアルゼンチンインドタイ王国などでは一国あたり数千箇所のステーションのインフラを持つ[5]

国によっては、天然ガスのカロリー量を調整するため、液体窒素、液化炭酸ガスなどの産業用ガスを付加して希釈する場合がある。タイ王国の石油・ガス最大手PTTなどは、国内500箇所のステーションの一部に液化貯槽を持ち、再ガス化した炭酸ガスを注入している[6]


注釈

  1. ^ たとえば、ガソリンスタンドやオートガススタンドが24時間営業の店舗でも併設のCNGスタンドは24時間営業ではない、等。
  2. ^ 石油系燃料はそれ自体がバルブ等がそれらに晒されることで潤滑に寄与するため。

出典

  1. ^ a b c d e f g h 天然ガス自動車の普及に向けて(第24版、2021年) 一般社団法人日本ガス協会、2021年10月1日閲覧。
  2. ^ : compressed natural gas
  3. ^ https://www.jstage.jst.go.jp/article/japt1933/31/5/31_5_222/_pdf
  4. ^ CNG燃料容器(タンク)の構造 本田技研工業
  5. ^ http://www.gas.or.jp/ngvj/spread/world_spread.html
  6. ^ [1]
  7. ^ 中原圭介『シェール革命後の世界勢力図』ダイヤモンド社、2013年、224頁〜
  8. ^ バスラマ・インターナショナル97号』「CNGとディーゼル、どちらがクリーン?」による。
  9. ^ MAN LION’S CITY 12 GMAN DE
  10. ^ ニュル24時間でダカールチャンピオン達が競演
  11. ^ ストールレーシング、CNGのプジョー207S2000をお披露目
  12. ^ モータースポーツ用 CNG-R コンセプト
  13. ^ a b c d e f あるCNGバスの“運命””. ぽると出版編集部ブログ (2019年3月17日). 2020年8月23日閲覧。
  14. ^ バスラマ・インターナショナル No.77』「特集:小型CNGバスの新しい動き」ぽると出版、2003年4月25日、ISBN 4-89980-077-0
  15. ^ ガス燃料エンジン用バルブシート材の開発 - 本田技研工業 > 論文サイト(更新日不明/2017年4月7日閲覧)


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