メタネーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/01 18:28 UTC 版)
メタネーション(英: Methanation)は、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)から都市ガスの主成分であるメタン(CH4)を合成する技術である[1]。
再生エネルギーなどから製造された水素を、さらにメタンへ変換することで、より取り扱いやすい燃料が得られる
歴史
「メタネーション」は、従来は石炭から合成天然ガスを生成するプロセスを指し、1984年にダコタガス化会社が実用化した[2]。
CO2の水素化で合成メタンを生成する技術は、1911年にフランスの化学者ポール・サバティエが発明しており[3]、2010年代頃以降は、脱炭素や温室効果ガス排出抑制の点からこのCO2の水素化技術が注目されるようになった[2]。
日本では、1993年に、東北大学、東北工業大学名誉教授の橋本功二がグローバル二酸化炭素リサイクル構想を提案。橋本と日立造船グループは1995年に世界初の実証実験を行った。ヨーロッパでは2009年ごろから取り組みが活発化した[4]。日本政府はグリーン成長戦略や第6次エネルギー基本計画において、2030年の合成メタンを4億m3、比率にして1%の導入を目標にしている。日本ガス協会では、2050年の導入目標を90%とし、水素の直接利用やバイオガスと併せて100%のカーボンニュートラル化を目指している[5]。
普及、実装
2019年6月、日本では気候変動対策に関する方針「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定された。「我が国の産業界や研究機関は、メタネーションにつながる要素技術、素材技術等にイニシアティブをとっていくことが求められている」とされた。それに伴い、大手事業者は以下の経営ビジョンを発表。[6]
2021年1月、大阪ガスはSOEC共電解の研究開発など、革新的なメタネーション技術の導入によって脱炭素化の更なる深化に取り組む。また、海外でカーボンニュートラルメタンを製造し、国内へ輸入するサプライチェーンの構築に取り組む。また、2024年度から2025年度にかけて、INPEXと共に鉱場内からCO2を回収して合成メタンを生成する実証実験を実施。これは、世界最大規模の設備であり400 Nm3/h[注釈 1]の合成メタン製造能力が予定されている。2021年7月、東邦ガスはメタネーション技術の実用化によるクリーンな合成メタンの大量導入をに取り組む。2030年までに、メタネーション技術を活用した都市ガス製造を開始する[7]。
2021年11月、東京ガスは脱炭素化に向け、メタネーション技術を自社コア技術として確立。官民合わせた協力体制や連携のもと、社会実装に向けたカーボンニュートラルメタンバリューチェーンを構築。横浜市鶴見区の近隣企業とCO2を融通することによるメタネーション実証実験を開始。最新の水電解装置や革新的メタネーション装置を導入し、地域におけるカーボンニュートラルの地産地消化に取り組む[8]。
実証実験
ドイツのETOGASとアウディは、2013年よりバイオガスから分離したCO2を使用して合成したメタンを、既存の導管網を使って天然ガス自動車向けの供給を行った。フランスのエンジーグループのGRTgazは、再生エネルギー電力で製造した水素と工場の排ガスから収集したCO2を使用した産業用メタネーションの実証実験「Jupiter1000」を2018年より開始した[9]。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はINPEX(当時の社名は国際石油開発帝石)、日立造船と共同で2019年にINPEX長岡鉱場内にメタネーションの試験設備を設置した[10]。2021年からは、大阪ガスもこの事業に参画している[11]。
東京ガスは、2022年より横浜市と共同で、同市鶴見区末広町の自社敷地内で実証実験を開始する。CO2源には市の下水処理場の消化ガスと、清掃工場から発生する排ガスを分離して使用する[12]。東京ガスの実証実験には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、山口大学[13]および三菱重工業グループ[14]も参加している。
IHI、西部ガス、九州大学等は北九州市若松町のひびきLNG基地内で再生可能エネルギーの余剰電力や近隣工場から発生する副生水素・未利用CO2を利用しメタンを製造する実証事業を2023年12月から開始した[15]。
技術
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