騎手・調教師の不適切事案続出と開催自粛
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 04:35 UTC 版)
「笠松競馬場」の記事における「騎手・調教師の不適切事案続出と開催自粛」の解説
2020年(令和2年)6月、関係者が勝馬投票券を購入した競馬法違反容疑で、所属の調教師1名、騎手3名が岐阜県警より任意による事情聴取と自宅や厩舎など家宅捜索を受けたことが公表された。岐阜県地方競馬組合(以下「組合」)は「警察の捜査に全面的に協力し、必要に応じて関係者に厳正な処分をする」とコメントしていた。その後、同年7月末の騎手(調教師)免許更新時に、尾島徹、佐藤友則、島崎和也、山下雅之の4名が免許を更新せず引退。共同通信や産経新聞などは「免許を交付されず引退した人物」が「馬券購入に関わった容疑で捜査中の調教師と騎手の4人」であるという趣旨の報道をしている。厳正な処分をするとしていた組合であったが、この「引退」に際して対外的な発表は行わず、またこの4人以外への調査が不十分であり、後の第三者委員会の設置へと繋がる事となる。 2021年(令和3年)1月19日には再び、所属する騎手、調教師などが競馬法で禁止される勝馬投票券を購入し、名古屋国税局から申告漏れを指摘されたという朝日新聞の報道を受け、「事実確認を行うため自粛する」として、予定していた19日から22日までの競馬開催を中止した。岐阜県知事の古田肇は同月19日の記者会見で第三者委員会を設けて事態の解明を行うとともに再発防止策の策定や、関係者の法令順守意識の徹底などに当たることを表明し、そのうえで2月の開催も休止し「遅くても3月には笠松競馬を再開したい」との見通しを述べたものの、真相の解明にはさらなる時間を要することから3月から5月までの開催も休止されることになった。 2021年(令和3年)4月1日には2020年(令和2年)及び2021年(令和3年)の不祥事を調査した第三者委員会による報告書が公開された。この中では2012年(平成24年)から2020年(令和2年)までの8年間に渡り最大8名の騎手グループが競馬法に反し馬券を購入し、確認できただけで約1億4000万円の利益を得てその所得を隠していたと報告された他、馬券購入の所得とは別に経費の水増し等によって脱税を行っていた者が10名、馬券を購入していた騎手グループに対し自身が担当する馬の当日のコンディションといった情報を伝え、見返りに報酬を受け取っていた関係者が数名、別件ではあるものの女性厩務員らへのセクシャルハラスメントを行っていた調教師1名が報告された(いずれも重複あり)。一方で疑惑のあった八百長については複数の騎手からの証言があったものの、あくまで騎乗に対する騎手の主観以上の証拠は無いため事実としては認定はされなかった。このうち2020年7月末に既に「引退」した4名は第三者委員会の連絡に応答がなかったため調査はされていない。この4名は2021年3月11日に競馬法違反で書類送検、3月30日に略式起訴、2021年4月12日に岐阜簡易裁判所により元調教師に罰金30万円、元騎手3人に罰金40万円の略式命令が出されている。 2021年(令和3年)4月21日、岐阜県地方競馬組合は再発防止策と以下の通り関係者の処分を発表し、前年に引退した尾島、佐藤、島崎、山下の元騎手・調教師4名を「中心的な役割を果たした」として事実上の競馬界からの永久追放となる「競馬関与禁止」処分とし、複数の現役騎手・調教師も一定期間の競馬関与停止とする処分を下した。また、組合の関係者では組合トップの管理者を務める古田聖人笠松町長を減給10分の1、3か月とするなど21人を減給や戒告などの処分とし、岐阜県知事の古田についても減給10分の1、3か月相当とした。さらに笠松町長が務めてきた競馬組合管理者を県の副知事が務めることになり、笠松町長は副管理者とした。競馬関与停止処分となった8名の騎手・調教師は4月21日付で地方競馬全国協会がそれぞれの免許を取り消し、さらに金銭を受け取った関係者のうち時効が成立していない騎手2人は刑事告発を受けた。なお、このうち2名は現金は受け取ったが賄賂だという認識は無かったと主張し、処分の取り消しを求めて岐阜県地方競馬組合および地方競馬全国協会を相手に岐阜地方裁判所に5月31日付で提訴している。加えて同年8月1日の免許更新時には度重なるセクハラ行為で重い処分を受けていた井上孝彦の調教師免許が更新されず、前日付で事実上の引退となった。組合は「地方競馬全国協会が決めたことなので仕方がない」とコメントするに留めた。 氏名職分処分処分理由騎手・調教師免許尾島徹 元調教師 競馬関与禁止 賄賂の供与、勝馬投票券購入 2020年(令和2年)7月31日失効 佐藤友則 元騎手 島崎和也 山下雅之 花本正三 元調教師 競馬関与停止5年 賄賂の収受、勝馬投票券購入 2021年(令和3年)4月21日取消 東川公則 大塚研司 元騎手 吉井友彦 湯前良人 元調教師 競馬関与停止2年 賄賂の収受、信用失墜行為(過失による所得の申告漏れ) 池田敏樹 元騎手 競馬関与停止1年 賄賂の収受 筒井勇介 2021年(令和3年)4月21日取消(処分取り消しを求め、岐阜地裁に提訴中) 高木健 競馬関与停止6か月 井上孝彦 元調教師 調教停止90日戒告・賞典停止30日戒告・賞典停止4日 信用失墜行為(セクシャルハラスメント)所属元騎手(佐藤友則)の指導・監督が著しく不十分信用失墜行為(意図的な所得の過少申告) 2021年(令和3年)7月31日失効 川嶋弘吉 調教師 戒告・賞典停止30日戒告・賞典停止4日 所属元騎手(山下雅之)の指導・監督が著しく不十分信用失墜行為(意図的な所得の過少申告) 水野善太 戒告・賞典停止20日戒告・賞典停止4日 所属元騎手(湯前良人)および所属騎手(高木健)の指導・監督不十分信用失墜行為(意図的な所得の過少申告) 田口輝彦 所属騎手(筒井勇介)の指導・監督不十分信用失墜行為(意図的な所得の過少申告) 柴田高志 戒告・賞典停止30日 所属元騎手(尾島徹、島崎和也)の指導・監督が著しく不十分 藤田正治 戒告・賞典停止20日 所属騎手(大塚研司)および元所属騎手(池田敏樹)の指導・監督不十分 森山英雄 所属騎手(吉井友彦)の指導・監督不十分 伊藤強一 所属元騎手(花本正三)の指導・監督不十分 後藤正義 所属元騎手(東川公則)の指導・監督不十分 このほか、不正行為に関与しなかった所属騎手10人のうち、2020年(令和2年)10月にデビューしたばかりの長江慶悟を除く9人は「競馬の公正を害する行為等を知ったにもかかわらず報告を怠った」ことが管理者指示事項に違反したとして戒告処分を受けた。 2021年(令和3年)4月27日、地方競馬全国協会は再発防止策を発表。調整ルームや騎手控室における通信機器の所持と使用厳禁を改めて徹底し、金属探知機を用いて所持物や身体検査を実施、通信機能抑止装置や電磁波遮蔽フィルムの設置も定められた。笠松競馬の再開時期については農林水産省、総務省と協議して決定するとして明言を避けた。 さらに一連の処分発表後の同年5月12日、所属の現役騎手1名が同年3月に笠松以外の競馬場で予想行為をしている元騎手がSNS上で実施した懸賞に応募し、現金10万円を受領していたことが判明した。組合はこの騎手について第一報での実名公表を行わなかったが、先の処分で戒告を受けている水野翔が同年3月18日に瀧川寿希也(川崎競馬元騎手)より10万円の振り込みを受けたことが明らかになっている。組合の調査に対し、当該騎手は「レースが中止されていたので生活費の足しにした」と話しており、この行為は組合の管理者指示事項に違反する「公正を害する恐れがある行為」として、5月25日、岐阜県地方競馬組合は水野と笹野博司調教師を以下の通り処分した。 水野は先述の井上調教師の免許失効後まもなく、騎手を引退した。この事案については組合や報道機関からのリリースが一切なく、地方競馬全国協会のデータベースで騎手免許が失効した状態になっていることでのみ確認が取れる。これにより、2021年(令和3年)8月時点で笠松競馬場に所属する騎手は9人となった。 氏名職分処分処分理由騎手・調教師免許水野翔 元騎手 騎乗停止15日 予想行為者が実施した懸賞に応募し金員の授与を受けたため 2021年(令和3年)8月失効 笹野博司 調教師 戒告・賞典停止2日 所属騎手(水野翔)の指導・監督不十分 岐阜県知事の古田は5月18日に「手続きや準備が順調に進んだ場合、再開は7月に入ってからとなる」と、開催再開時期の見通しを示したが、実際には岐南町・笠松町の公営競技施行団体の指定が8月4日までずれ込み、同競馬場におけるレース再開は同年9月8日〜10日より2021年(令和3年)度第1回開催を施行することを決定。その後、8月に数回にわたる「開催演習」を経て、同年9月8日より約8か月ぶりに競馬開催(新型コロナウイルス緊急事態宣言発令中のため無観客開催)を再開した。なお、再開に際してファンファーレ、馬場入場曲、締め切りチャイム、ゴール板の塗装などが刷新されている。
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