養殖法
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石蒔式 干潟に石を並べ、自然に付着した貝を育てる方法。生産性は高くないが容易に出来る。 垂下方式 日本で最も多く行われている筏方式は、1950年代以降急速に普及拡大した技法である。ロープや針金に等間隔で付着基材となるホタテガイの貝殻を固定し、貝殻に付着したカキを潮通しの良い海域に設置した筏に吊す方法。季節毎に筏の設置場所を移動し、湾内の広い水域を養殖場として利用できる。このため効率が良く成長が早く、1年で出荷可能な大きさにまで育ち、大量生産が可能になった。しかし、筏垂下では成長に伴うロスのほか台風や時化により付着基材からカキが脱落したり、波浪のため筏が損傷したりする事がある。一方、延縄(はえなわ)方式の養殖法を用いると脱落を減少させる事が可能であると報告されている。 篭方式は主に「殻付きカキ」として流通させるカキを養殖する方法として行われる。ある程度の大きさに育った稚貝を網や篭に入れ、筏から吊す方法。貝の成長に伴い脱落するロスを減少させられるが、網内の貝密度が高いと成長が悪くなる。この方法による生産品のいくつかは『一粒かき』として地域ブランド化され流通している。 杭打式の方式は、干潟に立てた竹杭に設置した横置きの竿や棚からロープや針金を吊す技法で、1930年代から1950年代まで行われ、筏方式の普及に伴い衰退した。 地蒔 干潟の泥砂底にある程度の大きさに育った稚貝を蒔いて育てる方法。古代ローマ時代から行われていたとされ、日本では1950年代後半まで有明海沿岸などで行われたが、ノリ養殖が盛んになり衰退した。 ひび建養殖法 広葉樹雑木の枝や竹を干潟に差し養殖する方法。江戸時代から1940年代まで行われた。 浮体養殖法 海底に鋼製の魚礁を設置し、魚礁と浮体となるブイの間をロープでつなぎロープに数カ所、種となる稚貝の付いた基材を取り付ける方法。ブイと海面間の距離を4〜5m とすることで「養殖場の上を船舶が航行できる」「ムラサキイガイなどの付着が垂下方式と比べ少ない」「海面下にあるため波浪の影響を受けにくく、波の強い外海に面した水域が使用できる」「魚礁としての集魚効果が高い」などの利点があると報告されている。 陸上養殖 食中毒の原因となる寄生虫や病原微生物が少ない地下海水を使う陸上養殖も、日本では行われている。JR西日本は大崎上島(広島県)で育てた陸上養殖カキを「オイスターぼんぼん」の商品名で出荷している。
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養殖法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 14:43 UTC 版)
広島でのカキ養殖は天文年間(1532-1555) から始まったとする説(養殖法は不明)が最も古いものになる。過去に行われていた広島カキの養殖方法は以下の通り。 寛政11年(1799年)『日本山海名産図会』広島牡蠣蓄養之法。法橋關月作。手前がひび建で、カキとともにノリ養殖も行われていた。ひび建に寄ってきた魚をとっているのもわかる。向こう側は活場になる。 昭和初期のもの。上が杭打式垂下、下がひび建。上図のひび建とやり方が異なることがわかる。 東広島市三津湾。 坂町鯛尾。向こう側が筏式、手前が干潮時の抑制棚で満潮時には潮に浸かる。 石蒔養殖法 干潟に小石をばらまいて、カキを付着させて育てる。寛永年間(1624-1643)に始まったとする説が最も古い。 地蒔養殖法 カキの稚貝を活場あるいはカキ田とよばれる干潟に直接ばらまいて育てる。これも最も古くから行われていた養殖法である。カキが埋没しないよう海底が砂礫であること、波浪・潮流の影響の少ない場所であること、など養殖適正地が限られていた。他の養殖法と複合で行われており、昭和30年代後半(1960年代初期)ごろ行われていた記録が残る。 ひび建(篊建)養殖法 干潟に竹や雑木を建てて、カキを付着させて育てる。そのまま育てて収穫する方法、“とや”と呼ばれる竹ひびを束にして育てる方法、途中でカキを落として地蒔養殖にて大きく育てる方法、あるいは途中で筏式垂下にて大きく育てる方法がある。 一般にひび建養殖は、江戸時代初期延宝年間(1673-1681)以前に東京湾大森でのノリ養殖(浅草海苔)から始まったと言われているが、広島カキにおいては寛永年間(1624-1643)に始まったとする説がある。昭和初期までひび建+地蒔が主流で、昭和30年代後半(1960年代初期)ごろ行われていた記録が残る。 これら近世・近代に発達した養殖法はその開発された地区の名で草津式・江波式・仁保式・海田式などと呼ばれていたが、それらはひび建と地蒔の方法に違いがあるもののほぼ同じ養殖法である。東北地方太平洋側では延縄式もあるが、広島では行われていない。現在主に行われている垂下式は近代に開発されている。 杭打式垂下(簡易垂下)法 干潟に1.3から1.4mほどの棚を作り、連と呼ばれる貝殻と竹の管を交互に針金で通した塊をぶら下げ、貝殻にカキを付着させて育てる。 垂下養殖自体は明治末期にまず真珠で試験されている。カキにおいては大正13年から14年(1924・25年)神奈川県金沢の水産試験場で試験実施、広島においては大正15年(1926年)頃県水産試験場草津支場が試験を行ったのが最初で、急速に広まり昭和30年ごろまで主流だった。かつては地蒔養殖と併用するものもあった。現在でも場所によっては行われており、筏式からの仕上げとして行われている例もある。 筏式垂下法 連を筏にぶら下げて、貝殻にカキを付着させて育てる。 筏式は杭打式と同様に大正15年県水産試験場草津支場が厳島大野瀬戸で試験を行ったのが最初で結果は良好であったが普及せず、昭和28年(1953年)県水産試験場が波浪に強い筏を開発したことにより昭和30年頃から急速に広まり、現在の主流となった。これ以前までの養殖場は干潟かその周辺に限られていたが、筏式が開発されたことによって沖合化による養殖場の面積拡大、更に深さ方向つまり立体的に活用できることで収穫量が大幅に上がった。 垂下法の連に用いられる貝はホタテガイで、かつてはカキの殻やセトガイ・イタラガイが用いられていた。 現在主に行われている筏式垂下法の行程は、1.連を海中に吊るしてカキ幼生をホタテガイに付着させる「採苗」、2.採苗した連を沿岸の棚に置いて潮の干満で一定時間空気中に晒すことでカキの成長を抑制し環境変化に対応できる抵抗力を付けさせる「抑制」、3.バラして新たな垂下連を作りカキ筏に吊るす「本垂下」、4.本垂下から収穫までの「育成」(3と4をあわせて「筏養殖」とも)、5.「収穫」、の順に行う。それぞれ費やす期間の差で養殖方法の名がついている。 ワカ : 採苗6月7月、抑制8月まで、本垂下10月まで、収穫2月から5月末まで。昭和43年(1968年)頃まで行われていた方法で、1年以内に収穫する。 イキス : 採苗7月8月、抑制9月まで、本垂下11月まで、育成にほぼ1年、収穫2年目11月から1月末まで。2年生カキ。カキがとれるシーズンの前半に流通するものはこれになる。 ヨクセイ : イキスの行程に抑制期間を3ヶ月に伸ばしたもの。2年生カキ。シーズン後半に流通するものはこれになる。 ノコシ : ヨクセイの行程に育成期間を伸ばしたもの。3年生カキ。シーズン最初に流通するものはこれになる。 フルセ : イキスの行程に抑制期間をほぼ1年に伸ばしたもの。3年生カキ。収穫時期はイキスと同じになる。 以下は、近年に行われている養殖法である。 シングルシード方式 粉砕したカキ殻にカキを付着させ水槽である程度の大きさに育てた後、網カゴやネットに入れて垂下して育てる。従来の垂下法よりも形の良い一粒ガキが育てられる。 海外では主流であり、日本の民間の生産業者で初めてこの方式の養殖に成功したのは廿日市市大野漁業協同組合の業者である。日本で注目されるようになったのはオイスターバーブームによって質のいい殻付き一粒ガキが重要視されだした2000年以降のことで、従来の連を作る垂下法は大量生産できるが形の良い殻のものをある程度揃えることには不向きであったため、収益性の高い一粒ガキを生産する目的で導入されている。 陸上養殖 海ではなく、陸上の汽水域内にある池に海水を入れて育てる。従来の方式と比べてノロウイルスに感染するリスクが低い。 フランスでは塩田の池で育てられている高級品があり、日本では広島の生産業者が大崎上島の旧塩田跡で平成初期までクルマエビ養殖が行われていた池で、殻付きカキとして生産されている。
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