養殖魚としての歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 15:05 UTC 版)
主に台湾の食用魚として養殖されている。 サバヒーは産卵期になると、台湾の南部海岸一帯などに稚魚の群が大挙して押し寄せてくるため、その稚魚を捕獲して養殖することが古くから(鄭氏台湾の時代、つまり17世紀頃から)行われてきた。日本統治時代の20世紀初頭には養殖水産物の85%、終戦時から中華民国統治時代初期にあたる1940年代後半には養殖魚の60%近くをサバヒーが占めていたという記録も残っている。現在でも、雲林県、嘉義県、台南県、高雄県など中部から南部にかけての県ではサバヒーの養殖が盛んに行われており、単一の魚種では世界一の養殖量とも言われている。なお、1979年には稚魚の人工孵化にも成功し、1984年から稚魚の量産が行われている。 養殖方法としては、浅水式と深水式の2通りがある。古くから行われてきたのは浅水式の養殖であり、水深30〜50cmの養殖池の中でまず小麦や米ぬかなどを用いてサバヒーの餌となる藻類を培養し、それで幼魚を育てるといった方法が取られる。成長は比較的早く、稚魚の養殖をはじめてから5〜6箇月程で出荷可能な大きさになる。出荷の最盛期は8月である。なお、餌となる藻類の培養のため、かつては養殖池に直接人糞をまいたりしていたこともあった。 浅水式養殖は、養殖方法としては比較的簡便であるが、その一方で気候の変化を受けやすく、冬季に寒波の影響を受けて水温が下がり、養殖魚が大量に死ぬことがあること、単位面積当たりの収穫量が低いことなどの難点もある。このため、近年では水深1.5〜2mの養殖池を用いる深水式の養殖も行われるようになってきた。この方式だと冬季でも水温があまり下がらず、また浅水式に比べて単位面積当たりの収穫量を1.5倍程度にできることなどの利点がある。ただし、池の底まで日光が届かず、餌となる藻類を育てることができないため、この方式による場合には人工飼料の給餌が必要となる。深水式の養殖が盛んなのは高雄県である。 台湾では大衆魚として人気のあったサバヒーも、人々の生活水準の向上に伴って近年は高級魚に押され気味であり、卸値が一斤(約600g)約70元(約210円)前後と、過去の半値近くの値段で取引されている(2015年時点のデータ)。このため、養殖業者の中には、サバヒーの養殖をあきらめて、エビやクロダイなど、高付加価値の魚に切り替える者も多い。 サバヒーは低温に弱く、水温が10℃以下になると被害が出はじめ、8℃以下となるとほとんどが死んでしまう。このため、年によっては寒波の影響で養殖魚が大量に死ぬといった被害が出ることもある。最近では、2004年及び2005年の旧正月頃にそれぞれ200万匹及び100万匹が凍死する被害が出た。通常、サバヒーの値段は比較的安定しているが、そのようなときには値段が高騰することもあり、2000年の冬にもそのような被害の結果、サバヒーの値段が普段の3倍くらいにまで跳ね上がったことが報道された。 なお、台湾以外に、フィリピンなどでもサバヒーの養殖が行われている。日本では食用にはされていないが、近年ではカツオの一本釣りの餌としての養殖が始まっており、良好な結果を得ている。
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