ふくいんしょ 【福音書】
福音書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/15 07:10 UTC 版)
![]() |
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2008年5月)
|
新約聖書 |
---|
![]() |
福音書 |
マタイ • マルコ • ルカ • ヨハネ |
言行録 |
使徒言行録 |
書簡 パウロ書簡・公同書簡 |
ローマ 1 コリント • 2 コリント ガラテヤ • エフェソ フィリピ • コロサイ 1 テサロニケ • 2 テサロニケ 1 テモテ • 2 テモテ テトス • フィレモン ヘブライ • ヤコブ 1 ペトロ • 2 ペトロ 1 ヨハネ • 2 ヨハネ • 3 ヨハネ ユダ |
黙示録 |
ヨハネの黙示録 |
![]() |
福音書(ふくいんしょ、ギリシア語: Εὐαγγέλιον[注 1], ラテン語・ドイツ語: Evangelium[注 2], 英語: Gospel[注 3])は、キリスト教の聖典の核心である、イエス・キリストの言行録である。通常は新約聖書におさめられた福音書記者による四つの福音書(マタイによる福音書、マルコによる福音書、ルカによる福音書、ヨハネによる福音書[注 4])を意味する。その他にトマスによる福音書などがあるが、それらは正典として認められなかった外典文書である。
日本正教会では福音経(ふくいんけい)とも呼ばれる。これは福音書を、奉神礼において詠まれる祈祷書(経典)の一つでもあると捉える考えに基づいている。
高等批評の立場からは、正典福音書のうちマルコによる福音書が最も古くに書かれたものであるとされている。
概説
「福音」とは、古代ギリシア語: εὐαγγέλιον, euangelion に由来する言葉で、「良い(eu- エウ、"good")知らせ(-angelion アンゲリオン、"message")」[1] 、"good news" という意味[5]である。つまり、マラトンの戦いの勝利の伝令のような戦争の勝利や出産など、喜ばしいことを伝える手紙などを指した。イエス・キリストの十字架刑と復活(紀元後30年頃)の後、イエスの弟子(使徒)たちは「神の国(支配)が到来した」というイエスのメッセージを世界に広げるために布教を始めたが、これを弟子たちは「良い知らせ」と呼んだのである[6]。四福音書中最初に書かれたと考えられるマルコによる福音書は、その冒頭を「イエス・キリストの良い知らせの初め」で書き出している。
イエスの言行録という意味でなく、「良い知らせ」という意味での福音という言葉の用例は、パウロの『コリントの信徒への手紙一』15:1にみられる。そこでパウロはイエスの死と復活こそが福音であるといっている。このことからもわかるように、福音書は単にイエスという人物の伝記や言行録ではなく、その死と復活を語ることが最大の目的となっている。
正典の福音書において見られるイエスの生涯における主な出来事としては以下のようなものがある。
福音書(福音)という言葉が現代のような特定の文学ジャンルを指すようになったのは2世紀のことであった。155年ごろのユスティノスの著作の中ではすでにこの用法が現れ、117年ごろのアンティオキアのイグナティオスもそのような意図で「福音」という言葉を用いていると見てもいいかもしれない。
イエスの十字架刑からの復活以降、いくつかの「福音書」が執筆されたが、その中で新約聖書に正典として受け入れられたのは四つであった。最初期のキリスト教神学者の一人、エイレナイオスは四つの福音書が特別な地位にあることを力説した。彼は著作『異端反駁』(Adversus Haereses)の中で、一つの福音書しか受け入れないキリスト者グループや新しい黙示文書を受容したヴァレンティアヌス派のようなグループを非難している。エイレナイオスは新約聖書の四福音書こそが教会の四つの柱であるという。「四つ以上でも以下でもない」と四が東西南北の四方位などをあらわす重要な数字であるという。エイレナイオスはさらに『エゼキエル書』1章にあらわれる四つの生き物(人の顔をしたもの、獅子、鷲、牡牛)を四福音書の予型であると見ている。ここから四福音書の福音記者のシンボルが生まれた。
「福音」について、聖書の第1コリント人への手紙15:3~5では、①キリストが私たちの罪のために死んだこと②葬られたこと③3日目に復活したこと④使徒たちに現れたこと、と定義している。また、ローマ人への手紙1:16において、この「福音」は信じる者に救いを与える神の力であるとされている。
日本語訳
16世紀のキリスト教伝道以来、福音書も含めて聖書は様々に翻訳されてきた。キリシタン時代はイエズス会などのカトリック宣教会が日本で、19世紀にはプロテスタントの宣教師達が中国などの国外で日本語への翻訳事業を試みている。開国後はヘボンらが組織的な翻訳事業を起こし、その結果が明治元訳となった。その後、聖書協会の主導で大正改訳、口語訳、新共同訳などの改訳が作られ、これらが日本語の中で広く知られる翻訳となったが、聖書ことに福音書は多くの個人や組織によって日本語に翻訳されている。
金装福音経
正教会においては、福音経を金色などに装飾し、イコンも加えられる事が多い。これは視覚的な象徴表現を多用する正教会にあっては、福音経も視覚的な象徴表現の対象となり、教会にとって最も重要な経典でありかつイイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の言葉・イイスス・ハリストスそのものを表す福音経は、奉神礼にあたって美しく示されて当然であると考えられてきた伝統に基づく。
外典福音書
新約聖書におさめられた福音書以外にも「福音書」と冠される著作が存在するが、これらは外典福音書と呼ばれる。外典福音書のほとんどは正典のものより後の時代に成立し、一部の信徒によってのみ用いられていたと考えられる。
脚注
注釈
- ^ 古代ギリシア語: エウアンゲリオン [eu̯aŋɡélion][1], 中世ギリシア語: エヴァンゲリオン [eβaŋˈɡelion][1], 現代ギリシア語: Ευαγγέλιο, エヴァンゲリオ [evaɲˈɟelio][2]
- ^ 教会ラテン語: エヴァンジェリウム [evanˈd͡ʒelium][3], ドイツ語: エファンゲリウム [evaŋˈɡeːli̯ʊm][4]
- ^ 古英語: godspell, "good"(良い)+"spell"(話、物語)[5]
- ^ ヨハネによる福音書を他の3つの福音書と比較したときに表現、思想の違いが多いことから、ヨハネによる福音書以外の3福音書を共観福音書と呼ぶ。
出典
- ^ a b c wikt:en:εὐαγγέλιον
- ^ wikt:en:ευαγγέλιο
- ^ wikt:en:evangelium#Latin
- ^ wikt:en:Evangelium
- ^ a b wikt:en:gospel#English
- ^ “14.福音書の中に何が書かれていますか?”. キリストと教会について54の質問. オプス・デイ. 2018年4月6日閲覧。
参考文献
![]() |
出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
|
- 『新聖書辞典』いのちのことば社
- 『聖書の権威』尾山令仁著 日本プロテスタント聖書信仰同盟 (再版:羊群社)
- 『キリスト教神学入門』アリスター・マクグラス 教文館
関連項目
外部リンク
- 口語訳新約聖書(ウィキソース) (日本聖書協会翻訳、1954年)
- ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『福音書』 - コトバンク
福音書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 05:52 UTC 版)
「史的イエス」、「共観福音書の問題」、および「Historical reliability of the Gospels」も参照 キリスト教の正典である四福音書『マタイによる福音書』『マルコによる福音書』『ルカによる福音書』『ヨハネによる福音書』はイエスの生涯の伝記、教え、イエスに帰される行動の主要資料である。そのうちの3書『マタイ』『マルコ』『ルカ』は内容、物語の構成、言語、段落構成に高度な類似性を示すことから共観福音書と呼ばれる。第四福音書すなわち『ヨハネによる福音書』は共観福音書とは異なり、叙述的な形式ではなく主題にそった内容になっている。学者の一般的な意見では『ヨハネによる福音書』に共観福音書の文章との直接的な関係を見出すことは出来ない。 新約聖書の著者は一般的にイエスの生涯の個々の出来事がいつ起きたかには(イエスの年代学(英語版))、またそれを世俗の出来事と同期させることにはほとんど関心を示さなかった。福音書は主に原始キリスト教の神学的文書として書かれたもので、著者にとって出来事の年次は重要ではなかった。福音書が歴史的な年代記ではなく神学的な文書であることは、一例としてイエスの生涯の最後の7日間についての記述が福音書の文章の3分の一を占めていることに表れている。福音書には近現代の歴史家が求める正確な年代に十分答える詳細は記されていないが、学者たちは福音書によってイエスの数々の人物像を再建して来た。しかし『ヨハネによる福音書』の最後に「イエスのなさったことは、このほかにも、まだたくさんある。」とあるように、福音書はイエスの生涯の出来事を網羅的に記載しているとは言えない。 福音書の個々の記述の歴史的信頼性について学者間で見解に相違があって、ほぼすべての学者の見解が一致するのはイエスが洗礼を受けたことと磔にされたことだけである。さらにE・P・サンダース(英語版)やCraig A. Evansなどの学者は、福音書に書かれている他の2つの出来事、すなわちイエスが使徒を召命したことと、エルサレム神殿で論争を起こしたこと(宮清め(英語版))が歴史的に確かであるとしている。 アウグスティヌスの見解(アウグスティヌス仮説(英語版))以来、福音書が書かれた順序と影響関係について学者間で議論され、マルコ優先説(英語版)では紀元70年頃に書かれた『マルコによる福音書』が他の福音書より先に書かれたとされ、『マルコ』の後に『マタイ』が成立し、『ルカ』は紀元70年から100年頃に書かれたと考えられている。通説とされる二資料説(英語版)によれば『マタイ』と『ルカ』は、『マルコ』以外にQ資料と呼ばれる学者の推定した資料を利用して書かれている。 福音書は3つの視点によって見ることが出来る。第1に文章としての文学的視点、第2にキリスト教がユダヤ教内の革新運動からどのように始まったかを観察する歴史的視点、第3にキリストの教えを分析する神学的視点がある。歴史的な視点では、福音書は資料として単にそれ自体でイエスの存在を明らかにするためだけに使われるのではなく、その内容を非キリスト教資料を含むその他の資料や歴史的背景と比較して、史的イエスについての結論を引き出す。
※この「福音書」の解説は、「史的イエスの資料」の解説の一部です。
「福音書」を含む「史的イエスの資料」の記事については、「史的イエスの資料」の概要を参照ください。
「福音書」の例文・使い方・用例・文例
- マタイによる福音書
- マタイ[マルコ, ルカ, ヨハネ]による福音書.
- 疲れた者、重荷を負う者はだれでも‐マタイによる福音書11:28
- 信念の変化と、聖書、特に4つの福音書に無誤性がないことを信じるキリスト教教会に関連するまたは、であるさま
- 超保守的な福音書メッセージ
- 人にしてもらいたいと思うことは何でも、汝らも人にしなさい(マタイ福音書7章12節)
- それは福音書に記録されていないが、正統であると見なされるイエスの格言
- 新約聖書の福音書の1つ
- 新約聖書の4つの福音書のうち最も短いもの
- 新約聖書の四大福音書の1つ
- 新約聖書の4つの福音書の最後のもの
- 福音書、使徒行伝、パウロの書簡と他の使徒書簡、ヨハネの黙示録の本を集めた物
- 同様の観点からキリストの人生での事象を記述する最初の3つの福音書
- シメオンの祈祷文句(ルカによる福音書、2章29-32節)
- 新約聖書の福音書以外のキリストの言葉
- 福音書の熱心な説教と支持
- 貧者、障害者、ためらうものそして盲人−−ルカによる福音書14章21節
- ジョゼフとメアリの家として福音書で言及される北イスラエルの歴史的にゆかりのある町
- 新約聖書の福音書の作者であると思われる精神的指導者のいずれも:マシュー、マーク、ルーク、およびジョン
- 汝芸術家ピーター、そして、この岩に、私は私の教会を建設する−マタイによる福音書
福音書と同じ種類の言葉
- 福音書のページへのリンク