福音書とは? わかりやすく解説

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ふくいん‐しょ【福音書】

読み方:ふくいんしょ

新約聖書のうち、マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネによる四つ文書イエス=キリスト生涯およびその言行内容とする。ゴスペル


ふくいんしょ 【福音書】

新約聖書』中、イエス生涯言行記録したもの。ふつう、マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの四福音書。この四書四人記者福音史家といい、それぞれ象徴定めてマタイ人間マルコ獅子ルカは牛、ヨハネがそれだとする。ただし原始キリスト教文献中には、「トマス福音書」「ヘブル人の福音書」などのように正典以外に福音書と呼ばれるものもある。福音書はまた「伝」で表記される場合もあり、例えば「マタイ伝」「ヨハネ伝」などとする。

福音書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/15 07:10 UTC 版)

聖書 > 新約聖書 > 福音書
啓典 > 福音書

福音書(ふくいんしょ、ギリシア語: Εὐαγγέλιον[注 1], ラテン語ドイツ語: Evangelium[注 2], 英語: Gospel[注 3])は、キリスト教聖典の核心である、イエス・キリスト言行録である。通常は新約聖書におさめられた福音書記者による四つの福音書(マタイによる福音書マルコによる福音書ルカによる福音書ヨハネによる福音書[注 4])を意味する。その他にトマスによる福音書などがあるが、それらは正典として認められなかった外典文書である。

日本正教会では福音経(ふくいんけい)とも呼ばれる。これは福音書を、奉神礼において詠まれる祈祷書(経典)の一つでもあると捉える考えに基づいている。

高等批評の立場からは、正典福音書のうちマルコによる福音書が最も古くに書かれたものであるとされている。

概説

福音」とは、古代ギリシア語: εὐαγγέλιον, euangelion に由来する言葉で、「良い(eu- エウ、"good")知らせ(-angelion アンゲリオン、"message")」[1] 、"good news" という意味[5]である。つまり、マラトンの戦いの勝利の伝令のような戦争の勝利や出産など、喜ばしいことを伝える手紙などを指した。イエス・キリストの十字架刑と復活(紀元後30年頃)の後、イエスの弟子(使徒)たちは「神の国(支配)が到来した」というイエスのメッセージを世界に広げるために布教を始めたが、これを弟子たちは「良い知らせ」と呼んだのである[6]。四福音書中最初に書かれたと考えられるマルコによる福音書は、その冒頭を「イエス・キリストの良い知らせの初め」で書き出している。

イエスの言行録という意味でなく、「良い知らせ」という意味での福音という言葉の用例は、パウロの『コリントの信徒への手紙一』15:1にみられる。そこでパウロはイエスの死と復活こそが福音であるといっている。このことからもわかるように、福音書は単にイエスという人物の伝記や言行録ではなく、その死と復活を語ることが最大の目的となっている。

正典の福音書において見られるイエスの生涯における主な出来事としては以下のようなものがある。

福音書(福音)という言葉が現代のような特定の文学ジャンルを指すようになったのは2世紀のことであった。155年ごろのユスティノスの著作の中ではすでにこの用法が現れ、117年ごろのアンティオキアのイグナティオスもそのような意図で「福音」という言葉を用いていると見てもいいかもしれない。

イエスの十字架刑からの復活以降、いくつかの「福音書」が執筆されたが、その中で新約聖書に正典として受け入れられたのは四つであった。最初期のキリスト教神学者の一人、エイレナイオスは四つの福音書が特別な地位にあることを力説した。彼は著作『異端反駁』(Adversus Haereses)の中で、一つの福音書しか受け入れないキリスト者グループや新しい黙示文書を受容したヴァレンティアヌス派のようなグループを非難している。エイレナイオスは新約聖書の四福音書こそが教会の四つの柱であるという。「四つ以上でも以下でもない」と四が東西南北の四方位などをあらわす重要な数字であるという。エイレナイオスはさらに『エゼキエル書』1章にあらわれる四つの生き物(人の顔をしたもの、獅子、鷲、牡牛)を四福音書の予型であると見ている。ここから四福音書の福音記者のシンボルが生まれた。

 「福音」について、聖書の第1コリント人への手紙15:3~5では、①キリストが私たちの罪のために死んだこと②葬られたこと③3日目に復活したこと④使徒たちに現れたこと、と定義している。また、ローマ人への手紙1:16において、この「福音」は信じる者に救いを与える神の力であるとされている。

日本語訳

16世紀のキリスト教伝道以来、福音書も含めて聖書は様々に翻訳されてきた。キリシタン時代はイエズス会などのカトリック宣教会が日本で、19世紀にはプロテスタントの宣教師達が中国などの国外で日本語への翻訳事業を試みている。開国後はヘボンらが組織的な翻訳事業を起こし、その結果が明治元訳となった。その後、聖書協会の主導で大正改訳口語訳新共同訳などの改訳が作られ、これらが日本語の中で広く知られる翻訳となったが、聖書ことに福音書は多くの個人や組織によって日本語に翻訳されている。

金装福音経

正教会の金装福音経(アテネの博物館で撮影)

正教会においては、福音経を金色などに装飾し、イコンも加えられる事が多い。これは視覚的な象徴表現を多用する正教会にあっては、福音経も視覚的な象徴表現の対象となり、教会にとって最も重要な経典でありかつイイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の言葉・イイスス・ハリストスそのものを表す福音経は、奉神礼にあたって美しく示されて当然であると考えられてきた伝統に基づく。

外典福音書

新約聖書におさめられた福音書以外にも「福音書」と冠される著作が存在するが、これらは外典福音書と呼ばれる。外典福音書のほとんどは正典のものより後の時代に成立し、一部の信徒によってのみ用いられていたと考えられる。

脚注

注釈

  1. ^ 古代ギリシア語: エウアンゲリオン [eu̯aŋɡélion][1], 中世ギリシア語: エヴァンゲリオン [eβaŋˈɡelion][1], 現代ギリシア語: Ευαγγέλιο, エヴァンゲリオ [evaɲˈɟelio][2]
  2. ^ 教会ラテン語: エヴァンジェリウム [evanˈd͡ʒelium][3], ドイツ語: エファンゲリウム [evaŋˈɡeːli̯ʊm][4]
  3. ^ 古英語: godspell, "good"(良い)+"spell"(話、物語)[5]
  4. ^ ヨハネによる福音書を他の3つの福音書と比較したときに表現、思想の違いが多いことから、ヨハネによる福音書以外の3福音書を共観福音書と呼ぶ。

出典

参考文献

関連項目

外部リンク


福音書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 05:52 UTC 版)

史的イエスの資料」の記事における「福音書」の解説

「史的イエス」、「共観福音書の問題」、および「Historical reliability of the Gospels」も参照 キリスト教正典である四福音書『マタイによる福音書』『マルコによる福音書』『ルカによる福音書』ヨハネによる福音書』はイエス生涯伝記教えイエス帰され行動の主要資料である。そのうちの3書『マタイ』『マルコ』『ルカ』は内容物語の構成言語段落構成に高度な類似性を示すことから共観福音書呼ばれる第四福音書すなわち『ヨハネによる福音書』は共観福音書とは異なり叙述的形式ではなく主題にそった内容になっている学者一般的な意見では『ヨハネによる福音書』に共観福音書文章との直接的な関係を見出すことは出来ない新約聖書著者一般的にイエス生涯個々出来事がいつ起きたかには(イエス年代学英語版))、またそれを世俗出来事同期させることにはほとんど関心を示さなかった。福音書は主に原始キリスト教神学的文書として書かれたもので、著者にとって出来事年次は重要ではなかった。福音書が歴史的な年代記ではなく神学的な文書であることは、一例としてイエス生涯最後7日間についての記述が福音書の文章の3分の一を占めていることに表れている。福音書には近現代の歴史家が求め正確な年代に十分答え詳細記されていないが、学者たちは福音書によってイエス数々人物像再建して来た。しかし『ヨハネによる福音書』の最後にイエスなさったことは、このほかにも、まだたくさんある。」とあるように、福音書はイエス生涯出来事網羅的記載しているとは言えない。 福音書の個々記述歴史的信頼性について学者間で見解相違があって、ほぼすべての学者の見解一致するのはイエス洗礼受けたことと磔にされたことだけである。さらにE・Pサンダース英語版)やCraig A. Evansなどの学者は、福音書に書かれている他の2つ出来事、すなわちイエス使徒召命したことと、エルサレム神殿論争起こしたこと(宮清め(英語版))が歴史的に確かであるとしている。 アウグスティヌス見解アウグスティヌス仮説英語版))以来、福音書が書かれ順序影響関係について学者間で議論されマルコ優先説英語版)では紀元70年頃に書かれ『マルコによる福音書』が他の福音書より先に書かれたとされ、『マルコ』の後に『マタイ』が成立し、『ルカ』は紀元70年から100年頃に書かれたと考えられている。通説とされる資料説(英語版によればマタイ』と『ルカ』は、『マルコ』以外にQ資料呼ばれる学者推定した資料利用して書かれている。 福音書は3つの視点によって見ることが出来る。第1に文章としての文学的視点、第2にキリスト教ユダヤ教内の革新運動からどのように始まったかを観察する歴史的視点第3キリスト教え分析する神学的視点がある。歴史的な視点では、福音書は資料として単にそれ自体イエス存在明らかにするためだけに使われるではなくその内容非キリスト教資料を含むその他の資料歴史的背景比較して史的イエスについての結論引き出す。

※この「福音書」の解説は、「史的イエスの資料」の解説の一部です。
「福音書」を含む「史的イエスの資料」の記事については、「史的イエスの資料」の概要を参照ください。

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