深世界教
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/11 15:00 UTC 版)
湊がかつて籍を置いていた新興宗教。山奥にコミューンを持ち、500人ほどの信者を抱えていた。 独自の終末思想を持ち、信者は皆一様に、胸元に”贖罪のための苦行”を意味する「PENANCE」の刺青を入れている。 あるとき初代教主が失踪してしまい、後に自らが執筆した自身の嘘と教団の欺瞞を認める記事が週刊誌に発表された。 コミューン内ではこれを巡り信者同士の内乱が発生し、子供を含む30人以上の死者を出す暴動事件にまで発展した。 事件後は蘭が二代目教主として君臨している。 蘭 一生(あららぎ いっせい) 深世界教二代目教主。背中まで伸ばした長い黒髪が特徴の中性的な顔立ちをした青年。 元々は少なくとも少年時代からの出家信者で、その容貌から目をつけられ大山から毎晩のように性的虐待を受けていた。しかしそのことがきっかけとなり、性的快楽をモーダルチャンネルにした洗脳術を身につけ独自に練磨をかけていった。本人は当時のことを「夜毎繰り返される所業は苦痛でしかなかったが、ベッドの上はまたとない学びの場でもあった」と回想している。 以降も催眠や話術など他者を支配するための様々な技術を会得していったようで、暴動事件後に二代目教主に就任した。 教主の座にはあるものの自らは無神論者。 自身の洗脳技術で他者の心を支配することが何よりの楽しみで、曰く「最も刺激的な遊び」とのこと。 カルト信者はおろか、盲目的に社会のルールに従い流行に踊らされる一般大衆までも、自ら主体性を放棄し縋りつく対象を求める「羊」とし、そういった人間をすべて支配した上で己の理想社会を創り出す事を目論む、野心に駆られた確信犯である。 曜堂については、自身の野望の障壁となると考えて一時引退後も部下に身辺を調べさせており、復讐対象だった大山を彼にデプログラムされたことも相まって最優先の抹殺対象として認識。 自身と同じく人の心を支配する術を持つ者として、他者の精神的自立やカルトの破折にデプログラムの技術を使う曜堂を「同じ世界に自分と同時に存在することは出来ない」とし、その関係をコインの裏表になぞらえていた。 曜堂をおびき出すべく湊を拉致し、自身の洗脳を施した上で、盗み出した後催眠暗示キーワード「金髪の黒羊」をも悪用。 「曜堂は自身の心をもてあそんだ洗脳者であり、親友を死に追いやらせた真の敵」として憎悪と殺意を抱かせ、彼女を奪還しにコミューン内に侵入した曜堂に刺客として差し向けた。 結果として曜堂を退けさせることには成功し、湊に同志として共に来ることを持ちかけたが、曜堂との対峙を通じて尊厳を獲得した彼女に返す刀で切りつけられ、指を切断された上、肩口にも大量出血するほどの深い傷を負った。 この時には釵(さい)のような得物を用いて迎撃を試みているが、一太刀で戦闘不能に追い込まれたため、どれほどの使い手だったかは明らかになっていない。 「蘭には二度と洗脳されない」と誓う湊に対し、「いつか再び湊の前に現れる」と宣言し最後は炎の中に姿を消した。 生死に関して具体的な描写はない。 北村 透(きたむら とおる) 深世界教教主主査。蘭の片腕であり、ターゲットの身辺調査から荒事まで、教団内での汚れ仕事を一手に引き受けている人物。 彩子の家から湊を拉致した際には、切り込み隊長として曜堂を急襲した。また実行部隊の指揮もとっており、犯行声明として「PENANCE」刺青入りの皮膚を遺した。 後日、曜堂のもとを再訪。教団が湊を人質に取っていることを伝え、警察を介入させない条件で直接対決するよう交渉を持ちかけた。 この時、曜堂が「デプログラムの依頼は遂行済みであり、もはや自分とは関係ない」として湊を見限ることも考慮。 彼女が曜堂と彩子との共同生活に、今まで手に入れることが決して叶わなかった”幸せな家族像”を見出していたことを示す遺留品をちらつかせ、情に訴えかける手段も使っていた。 コミューンへ帰還中、遊覧ヘリをジャックした曜堂の奇襲を受け、部下共々あっけなく倒された。 更に助手席にくくりつけにされた状態で、乗ってきた車ごとヘリからコミューン内の礼拝堂に落下させられ、曜堂の奇襲のダシに使われた。 信者に救出され自身は助かるも、車は爆発炎上。諸々の教団施設を焼き尽くす大火災へと発展する。 大山 神洋(おおやま しんよう) 本名:小山 洋(こやま ひろし) 深世界教初代教主であり、曜堂の「実験」対象としてデプログラミングされた人物。 うだつの上がらない半生を送っており、子供時代は本名の「洋」をもじった「ピロシキ」という仇名をつけられバカにされていた。 コンプレックスを払拭しようとする思いが誇大妄想にまで発展し、「神の声を聴いた再臨のメシア」として深世界教を立ち上げ初代教主の座につく。 この時、名前も「小山」から「大山」に変えるが、曜堂の指摘によればこの改名は「自分を大きく見せるためだった」とされる。 自身の性的嗜好を満たすため蘭を慰み者にするなど、教団を興した後も世俗的な部分は抜けておらず、曜堂から襲撃を受けたときは、彼をヤクザか他のカルトからの刺客と思いこんでいた。モデルガンを使ったロシアンルーレットで追い込みをかけられ失神、コミューンから拉致されてしまう。 その後は埠頭の倉庫街に監禁され、曜堂から睡眠や食事の制限、過去の全否定、罪悪感の煽り等を用いた「デプログラミング」とは名ばかりの逆洗脳を受けた。これにより教主としての面子は全て引きはがされ、「自分はペテン師のクズである」と刷り込まれ廃人同然となった。 後に教団の欺瞞と自身の嘘を記した手記が週刊誌に発表され、暴動事件が引き起こされた。 朱美(あけみ) 湊の親友であり、学校内での唯一の話し相手だった同級生。 日々激しさを増すいじめを受けるにつれ、カルトへの傾倒を深めていく湊をかねてから心配し続けていた。 出家を決意した湊を引き留める目的で深世界教の施設に同行したが、結果的には「ミイラ取りがミイラになる」形で彼女自身も出家信者となってしまう。 暴動事件では反逆者として多数の信者から暴行を加えられた挙句(湊も強制的に参加させられた)、首から下を地面に埋められるという凄惨なリンチを受けた。後に教団の欺瞞に気づいた湊に救出されるが、心身は既に衰弱しきっていた。 最期まで信仰を捨てず、謝罪する湊に対し、彼女の罪が「深世界教の神」に許されるよう願いながら息を引き取った。 スキンヘッドの信者 深世界教の信者。頭髪や眉は全くなく、側頭部には「PENANCE」の頭文字「P」の刺青を入れている。 蘭の差し金で曜堂への宣戦布告をほのめかすために、教団の教えを説きながらポリタンクに入った燃料をかぶり、路上で焼身自殺を図った。 レストランのテラス席でこの光景を見た湊は、コミューン脱出時の記憶がフラッシュバックし錯乱状態に陥るが、曜堂が後催眠暗示のキーワード「金髪の黒羊」で沈静化させた。 しかし、曜堂たちの死角から顛末を見ていた蘭の読唇術により、このキーワードが知られる結果となってしまう。 ミカ 深世界教の出家信者。蘭の洗脳が重度に進行しており、焦点の合わない目をしている。 洗脳の効果をデモンストレーションするために、湊の前で生爪を剥がされたが、このとき痛みを感じる素振りは一切見せず、「神が与えた苦行」として喜びの思いすら訴えていた。 蘭の発言によれば、湊を拉致した犯行声明として曜堂の元に届けられた皮膚は、彼女から切り取られたものである。
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