確信犯
「確信犯」とは、通俗的には「悪い事だと理解しながら敢えて行われる悪事、および、そのように敢えて悪事をはたらく者」の意味で用いられる表現である。ただし本来は「それが正しい行いであると確信して遂行される犯罪」を指す意味で用いられた法学用語である。
「確信犯」の本来の意味
「確信犯」は、そもそもは西欧の法哲学上の概念である。現行法では処罰の対象となるという意味においては「悪」であるとしても、政治的・宗教的・道徳的な普遍的価値観に照らせば「善」であると確信できる、そのような確信に基づいて行われる犯罪行為が、本来の意味における「確信犯」である。「確信犯」の現代的な用法・使い方
通俗的な用法における「確信犯」は、「悪行であると認識しつつ行われる行為」を指す意味で用いられている。多くの場合、違法行為というわけではないが他人が迷惑を被るような、倫理的・道義的に非難されるべき=慎むべき事柄について、それを私利私欲のために行う、といった状況を指す。この「確信犯」の通俗的な用法が、本来は俗用であり誤用である、と理解している者は決して少なくない。とはいえ、(1)すでに若者を中心に半ば定着した意味用法であり、(2)「いわゆる確信犯」の表現に使える手頃な代替表現も今ひとつ見出しがたく、さらに(3)本来の「確信犯」用法は「テロ」等の表現で代替されている、等々の事情・背景は覆しがたい。「確信犯」の誤用・俗用が今後もいっそう定着する見込みと、旧来の用法に訂正される見込みの、どちらが有力かと問われれば、前者であろうと推測される。
参考リンク
平成14年度「国語に関する世論調査」の結果について - 文化庁
確信犯の語源・由来
「確信犯」という言葉は、ドイツの刑法学者グスタフ・ラートブルフ(1878年~1949年)が提唱した法律用語「Überzeugungsverbrechen」に由来する。確信犯の類語・言い換え表現
「自分の行為が正しいという信念に基づき遂行される犯罪行為」という意味での確信犯の類語表現としては、義賊・思想犯・政治犯・国事犯・宗教的テロリズムなどが挙げられる。また「悪いことであると分かっていながら行う行為・またはそれを行う人」という意味での確信犯の類語表現としては、故意犯・故意犯罪・常習犯・わざと~した人、などが挙げられる。
確信犯の英語表現
本来の意味での確信犯の英語表現としては「crime of conscience」が挙げられる。また「わざと」「意図的に」「故意に」といった意味合いの副詞としては「deliberately」「intentionally」「purposely」「advisedly」「knowingly」「purposefully」などが挙げられる。
かくしん‐はん【確信犯】
読み方:かくしんはん
1 道徳的、宗教的または政治的信念に基づき、本人が悪いことでないと確信してなされる犯罪。思想犯・政治犯・国事犯など。
2 《1から転じて》悪いことだとわかっていながら行われた犯罪や行為。また、その行為を行った人。「違法コピーを行っている大多数の利用者が―だといえる」
[補説] 「時間を聞きちがえて遅れたと言っているが、あれは確信犯だよね」などのように、犯罪ほど重大な行為でない場合にも用いる。2の意はもともと誤用とされていたが、文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、「政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人」と、「悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人」の、どちらの意味だと思うかを尋ねたところ、次のような結果が出た。
平成14年度調査 | 平成27年度調査 | |
政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 | 16.4パーセント | 17.0パーセント |
悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 | 57.6パーセント | 69.4パーセント |
確信犯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/12 08:53 UTC 版)
確信犯(かくしんはん、独: Überzeugungsverbrechen - Überzeugungs:確信(による) Verbrechen:犯罪)とは、自分の道徳・宗教・政治・経済などの理念を確信して実行される犯罪である。言い換えると、己の信念に基づいて実行される犯罪である。行為者は「確信犯罪者」「確信犯罪人」(der Überzeugungsverbrecher)。ドイツの刑法学者グスタフ・ラートブルフの提唱による法律用語。義賊やテロリズムが代表例である。
注釈
出典
- ^ 「明鏡 第2版」(平成22年・大修館書店)「確信犯」②<俗>の解説による。
- ^ 「日本国語大辞典 第2版」(平成12~14年・小学館)「確信犯」②の解説による。
- ^ a b “「確信犯」の意味”. 文化庁月報 連載「言葉のQ&A」. 文化庁 (2012年5月). 2020年6月29日閲覧。
- ^ a b c “平成14年度(2002年度)「国語に関する世論調査」の結果について”. 文化庁 (2003年6月). 2015年6月15日閲覧。
- ^ 過失犯に対置される用語で、罪を犯す意思をもってした行為によって成立する犯罪のこと。殺人犯、窃盗犯など。精選版 日本国語大辞典「故意犯」による。詳細は「故意」を参照
- ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「確信犯」、平凡社百科事典マイペディア「確信犯」[1]
- ^ 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)「確信犯」名和鐵郎
- ^ a b “「確信犯」の意味 - 言葉のQ&A - 文化庁月報 平成24年5月号(No.524)”. 文化部国語課. 文化庁 (2012年5月). 2015年6月15日閲覧。
- ^ 自由国民社法律用語辞典P2759「確信犯」[2]
- ^ 川端博「ユストゥス=クリュンペルマン「錯誤の刑法上の取り扱い」」『法律論叢』第52巻第6号、明治大学法律研究所、1980年3月、 125-145頁、 ISSN 0389-5947。
- ^ [3][リンク切れ][4][リンク切れ][5][リンク切れ]。
- ^ アルトゥールカウフマン & 上田健二 2008, p. 66
- ^ 宮沢浩一「ラートブルフの刑法論 (二・完)」『法學研究 : 法律・政治・社会』第41巻第9号、慶應義塾大学法学研究会、1968年9月、 25頁、 ISSN 0389-0538。
- ^ アルトゥールカウフマン & 上田健二 2008, p. 75
- ^ 永尾孝雄「法と正義 : 思想史的考察」『アドミニストレーション』第6巻2-3、熊本県立大学総合管理学会、2000年2月、 72-88頁、 ISSN 2187-378X。
- ^ 例えば
大原康男「"確信犯"吉田茂の靖国参拝を見習え--総理大臣の靖国参拝に関する一考察」『正論』、産経新聞社、2004年9月、 62-71頁、 NAID 40006322656。
「絶好調マツモトキヨシは「今がピーク」だ--社長の「確信犯的経営」に敵も多い」『月刊テ-ミス』第13巻第2号、テ-ミス、2004年2月、 60-61頁、 NAID 40006072114。
宮本岳志「郵政ぐるみ選挙を問う--"確信犯"小泉首相の責任は免れない」『前衛』、日本共産党中央委員会、2001年11月、 47-56頁、 NAID 40002200464。
「4色印刷ならではの版ズレ確信犯 (特集 福田美蘭(みらん)名画をわれらに!) -- (複製「名画」花ざかり)」『芸術新潮』第50巻第8号、新潮社、1999年8月、 12-15頁、 NAID 40000935805。
佐々木ベジ「<敗軍の将,兵を語る>佐々木ベジ氏(フリ-ジア・マクロス前社長)「確信犯」でバブルに賭けたが…」『日経ビジネス』、日経BP社、1997年10月27日、 115-117頁、 NAID 40002806733。
- 1 確信犯とは
- 2 確信犯の概要
- 3 補足 - ドイツ語からの翻訳
- 4 脚注
確信犯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 23:39 UTC 版)
本来の意味は義賊やテロリズムなどの、自分の信念こそが正しい、社会体制は間違っている、だから変えねばならないと強く思って犯す罪のことである。
※この「確信犯」の解説は、「日本語の誤用」の解説の一部です。
「確信犯」を含む「日本語の誤用」の記事については、「日本語の誤用」の概要を参照ください。
確信犯
「確信犯」の例文・使い方・用例・文例
確信犯と同じ種類の言葉
- 確信犯のページへのリンク