シャゴホッド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 14:34 UTC 版)
「メタルギア (架空の兵器)」の記事における「シャゴホッド」の解説
ヴァーチャスミッション、スネークイーター作戦(『メタルギアソリッド3』)時に登場。ソ連の秘密設計局OKB-754(ソコロフ設計局)にて、ニコライ・ステパノヴィッチ・ソコロフが設計開発を行った核搭載型戦車。「シャゴホッド」(ШАГОХОД)はロシア語で「一歩一歩踏みしめるもの」を意味し、厳密に発音すると「シャガホートゥ」となる。 開発自体は1961年から始まり、試験調整のフェイズ1は1964年8月24日にKGBの手によりツェリノヤルスクにて、最終調整となるフェイズ2はGRUに奪取された後、エヴゲニー・ボリソヴィッチ・ヴォルギン大佐が管理する要塞・グロズニィグラードにて行われた。実戦配備前の状態だったため、機体には共産党指導の象徴である赤い星と共に英語のPrototype(試作機)に相当する「Прототип(プラタティープ)」と記載されている。 その運用思想は後に登場するメタルギアにも繋がるが、二足歩行戦車ではなく、機体下部にある2本のドリルを回転させることで移動する機体であり、運用思想以外はメタルギアとは完全に別系統の兵器である。メタルギアと並行して当時のソ連で正式採用を巡って開発競争を行った結果、最終的にはこの当時のソ連ではメタルギアではなく本機が採用され実機が開発された。しかしながら、本機の開発成功と運用失敗が、後のメタルギアの開発や運用に影響を与えている。 乗員:2名、全高:8.2m、全幅:6.4m、全長:22.8m、重量:152.5t、最高時速(ブースター未使用時):80km、最大航続距離:650km。主武装として、後部ユニットにRSD-10 ピオネール 中距離弾道ミサイル (IRBM) を1基搭載するランチャーを、前部ユニットにDShK38 12.7mm重機関銃が2門、同対空機関銃を1門、9M112コブラ対戦車誘導ミサイルを発射する9K112ランチャーを6門、大型の100銃身機関銃を1門装備している。格納庫だったグロズニィグラード中央棟を破壊した爆発に巻き込まれても正常に作動する耐久性があり、装甲は携帯対戦車火器であるRPG-7の直撃にも耐える剛性を有している。 基本的な移動手段は、前部ユニットの両側面部にある一対の油圧式シリンダー型脚部に取り付けられているドリルで、これを回転させて推進力を発生、後部ユニットを牽引して移動する。後部ユニットはホバークラフトのような形になっており、ロケットエンジンはミサイル発射時と緊急時以外には使用しない。単一の機体で完結しているメタルギアと違い、このように機体構成が大きく2つに分けられている点も特徴といえる。ドリル部は突き立てるようにしてまるで歩行するかのように機体を引きずることもでき、前方ユニットを起こして上半身とし、後部ユニットを下半身にしてドリル部分による打撃攻撃を行うこともできる。作中ではビッグ・ボスにより鉄橋ごと爆破され、落下した際に後部ユニットが切断され前部のみで稼動。しかし切断面が弱点となり、RPG-7を複数回にわたって撃ち込まれたことにより破壊された。 大陸を跨ぐ程の長大な射程をミサイルが得るには通常、推進用の巨大なブースターが不可欠であり、そのためICBM(大陸間弾道ミサイル)は固定式の巨大な発射設備(サイロ)が必要となる。ゆえに発射状態を保ったままでミサイルを移動するという事は不可能であったが、軍部はシャゴホッドにソ連からアメリカ本土への直接核攻撃を求めた。そこでフェイズ2と呼ばれる新たなミサイル発射システムを考案した。本機は後部ユニットのロケットエンジンで機体そのもの自体を時速300マイル(500km)まで加速し、その状態からIRBMを発射する事で槍投げのようにミサイルを加速する「射程合成延伸システム」を備えている。これによりICBMに比べて小型で移動が簡便だが射程距離で劣るIRBMのそれをICBM並に延長、ソ連領内からアメリカ全土へピオネールを到達させることが出来る。システムの完成によって、本機から発射されるミサイルの射程は2500マイル(約4000km)から6000マイル(約9600km)以上に延びており、ソ連領内からアメリカ本土への直接攻撃が可能となった。このシステムは約3マイル(約5km)の滑走路、またはそれに準ずるものがあれば機能するため、発射地点をある程度任意に変更することが可能。そのような長距離移動の場合は、先に4〜5機のヘリコプターにワイヤーで吊られて輸送される。このため、衛星や偵察機からは発見されない。 後に開発されたメタルギアに比べれば、上記のように発射地点にいくつかの条件が生じるため汎用性は低い。しかしソ連の道路移動式ミサイル発射台がアメリカにとって脅威であった1960年代においては、隠密展開即時発射が可能で、単独でもアメリカ本土への核攻撃が可能な能力を持つ本機は充分な(抑止が成り立たなくなり、冷戦という形を根底から覆すほどの)優位性となっていた。更にヴォルギン大佐はプロトタイプを元に量産を計画しており、ソ連全土への配備は勿論第3世界の独裁者や民族派にシャゴホッドの提供をエサに武装蜂起を促す事で、冷戦を灼熱の戦争に変える事を目論んでいた。 しかし最終的にはネイキッド・スネーク(後のビッグ・ボス)らの活躍によってプロトタイプのシャゴホッドは破壊された。そしてヴォルギンはスネークとの戦いの末に死亡し、開発者のソコロフもヴォルギンの拷問で瀕死の重傷を負った上、グロズニィグラードもザ・ボスによってデイビー・クロケットを撃ち込まれて崩壊してしまい、量産計画は完全に頓挫した(ソコロフは非正史扱いのスピンオフでは生存しており、大佐の方は後に「第三の子供」の力で復活する)。 その後は本機を参考にしたピューパが開発されたものの、核搭載戦車ではなくあくまでAI兵器の実験機の一つとして開発され、そしてピューパが破壊されて以降はメタルギアと比べての上記の汎用性の低さから兵器開発の主流から外れてしまい、シャゴホッドの系譜の機体がその後、開発されることはなかった。 『MGS3』の限定版には、1/144スケールのフィギュアが同梱された。非売品で配布されたメタルギアREXペーパークラフトにおいて、シークレットパーツが同梱されており、これを組み立てると本機が完成するが、ドリルやホバーではなく前部後部共にキャタピラが付いているなど、ゲーム中の本機とは異なる。ゲーム本編でのソコロフとの会話シーンでこのタイプの設計図らしきイメージ映像が流れるため、本機開発当初の草案の一つだった可能性がある。前部はピューパに酷似しており、ヒューイがピューパ開発の際に参考にした本機のデータは前部はこちら、後部はプロトタイプと考えられる。また、ゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズX』に観賞用フィギュアとして登場。メタルギアと開発競争をした事などが解説されている。
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