骨粗鬆症 ステロイド骨粗鬆症

骨粗鬆症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/23 00:52 UTC 版)

ステロイド骨粗鬆症

病態

骨粗鬆症とステロイド骨粗鬆症は病態が異なると考えられている。エストロゲンは直接破骨細胞による骨吸収を抑制し、NF-κB活性化受容体リガンド(receptor activator of NF-κB ligand、RANML)の発現を抑制し、破骨細胞の分化も抑制する。閉経後の女性の骨粗鬆症ではエストロゲンの分泌低下によって前述の抑制がなくなることや加齢によって骨吸収の増加が起こることで骨量が減少する。ステロイド骨粗鬆症では骨細胞と骨芽細胞のアポトーシスが主な病態になる。骨細胞と骨芽細胞のアポトーシスにより骨形成が抑制され骨量に加え骨質も低下する。ステロイド骨粗鬆症では始めに骨の内部の海綿骨の骨量・骨質が低下し、椎体圧迫骨折を起こす。後に外側の皮質骨にも影響が出て大腿骨頸部骨折や転子部骨折を起こす。

同じ骨密度でもステロイド使用者は非使用者よりも骨折のリスクが高い。またステロイド骨粗鬆症の骨折リスクは全身性ステロイドの用量依存性で、総投与量よりも現在量が骨折のリスクに相関する。

治療

ステロイド骨粗鬆症に関しては日本骨代謝学会が『ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014年改訂版』を作成している[32]。またアメリカには2010年に改訂された『米国リウマチ学会のステロイド骨粗鬆症の予防と治療の推奨』[33]を発表している。ステロイド骨粗鬆症の予防、治療において何よりも大切なことは全身性ステロイドの使用量、使用期間をできるだけ少なくすることである。局所ステロイドや免疫抑制薬を用いるなどして全身性ステロイドの使用量を減らせないか常に考えることが必要である。

2010年に改訂された『米国リウマチ学会のステロイド骨粗鬆症の予防と治療の推奨』では何mgまでのステロイドであれば、骨密度を減らさない、骨折率を上げないというような安全域はないため、全身性ステロイドを3ヶ月以上使う見込みのある人全員に生活指導をするように推奨している。生活指導をした上で「閉経後女性または50歳以上の男性」「閉経前女性または50歳以下の男性」に分けて治療推奨が示されている。

生活指導と評価

2010年に改訂された『米国リウマチ学会のステロイド骨粗鬆症の予防と治療の推奨』では以下のような生活指導と評価が、全身性ステロイドを3ヶ月以上用いる場合は必要とされている。

  • 適度な荷重運動
  • 禁煙
  • 過度の飲酒をさける
  • カルシウムやビタミンDの栄養指導
  • 転倒リスク評価
  • DXAのベースライン評価
  • 血清カルシジオール(25(OH)D)の測定(日本では健康保険適応なし)
  • ベースラインの身長評価
  • 脆弱骨折の評価
  • プレドニゾロン≧5mg/day相当使用の場合は椎体骨折のX線評価を考慮
  • 全身性ステロイドを3ヶ月以上使用の場合、カルシウム1200〜1500mg/dayを摂取
  • 全身性ステロイドを3ヶ月以上使用の場合、ビタミンDサプリメントの内服

なお、カルシウム製剤と活性型ビタミンD3製剤の併用は通常は行わない。

閉経後女性または50歳以上の男性の場合

閉経後の女性または50歳以上の男性の場合はFRAXで骨折リスクを計算する。10年以内の主要な骨折リスクが10%未満の時を低リスク、10〜20%のとき中リスク、20%より大きい場合とTスコア≦-2.5の場合と脆弱骨折の既往がある場合を高リスクと層別化する。低リスク群で全身性ステロイドを3ヶ月以上使用が見込まれないものは薬物療法は推奨されない。3ヶ月以上使用が見込まれる場合でもプレドニゾロン<7.5mg/day相当の場合は薬物療法は推奨されない。しかしプレドニゾロン≧7.5mg/day相当の場合はアレンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸の利用を推奨する。中リスク群で全身性ステロイドを3ヶ月以上使用が見込まれないものは薬物療法は推奨されない。3ヶ月以上使用が見込まれる場合は薬物療法が推奨される。プレドニゾロン<7.5mg/day相当の場合ははアレンドロン酸やリセドロン酸の投与が推奨される。プレドニゾロン≧7.5mg/day相当の場合はアレンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸の投与が推奨される。高リスクではプレドニゾロン≧5mg/day相当量を1ヶ月未満の場合はアレンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸の投与を推奨する。またプレドニゾロン<5mg/day相当量を1ヶ月以上またはどの用量に関わらず1ヶ月以上ステロイドを使用の場合はアレンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸、テリパラチドの投与を推奨する。

閉経前女性または50歳以下の男性の場合

閉経前女性または50歳以下の男性の場合の場合、脆弱骨折の有無と挙児希望の有無とステロイド投与期間と投与量で薬物療法は決定する。まず脆弱骨折がない場合は十分なデータがない。挙児希望がある場合は長期使用の安全性や胎児への安全性が確立していないため骨粗鬆症治療薬の投与は推奨されない。脆弱骨折がある場合は50歳以下の男性や挙児希望のない女性の場合はステロイド使用期間が1〜3ヶ月でプレドニゾロン≧5mg/day相当量を使用する場合はアレンドロン酸やリセドロン酸の投与を推奨する。プレドニゾロン≧7.5mg/day相当量使用する場合はゾレドロン酸も推奨される。ステロイド使用期間≧3ヶ月の場合はアレンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸、テリパラチドの投与が推奨される。

脆弱骨折がある挙児希望のある女性の場合はステロイド使用期間が1〜3ヶ月の場合は骨粗鬆症治療薬投与のコンセンサスはない。ステロイド使用期間≧3ヶ月ではプレドニゾロン≧7.5mg/day相当量使用する場合アレンドロン酸、リセドロン酸、テリパラチドの投与が推奨される。プレドニゾロン<7.5mg/day相当量使用する場合は骨粗鬆症治療薬投与のコンセンサスはない。

ステロイド骨粗鬆症の注意点

ステロイド骨粗鬆症はプレドニンゾロン7.5mg/day以上の内服をしている群では早期から骨折リスクが高いという報告があることから、ステロイド開始直後からステロイド骨粗鬆症の予防は必要になる[34]。FRAXが普及する以前によく用いられていた治療対象者はプレドニゾロン5〜7mg/day相当量以上、使用期間3ヶ月以上、Tスコア-1.0〜-1.5以下であった[35]。またステロイド骨粗鬆症による骨折リスクが高リスクの場合はBPの長期投与はやむをえないと考えられている。比較的リスクが高いステロイド骨粗鬆症においてテリパラチドはアレンドロン酸よりも腰椎骨密度をあげることが示されており新規圧迫骨折を防ぐ可能性が示唆されているが椎体以外の骨折に対する有用性は示されていない。

ステロイド骨粗鬆症の場合は定期的な骨密度の測定などのモニタリングが必要である。またステロイド骨粗鬆症で骨折が起きた場合はテリパラチドを投与することがある。


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