副甲状腺ホルモンとは? わかりやすく解説

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ふくこうじょうせん‐ホルモン〔フクカフジヤウセン‐〕【副甲状腺ホルモン】


副甲状腺ホルモン

【仮名】ふくこうじょうせんほるもん
原文parathyroid hormone

副甲状腺によって作られ体内でのカルシウム貯蔵利用関与している物質。副甲状腺ホルモンの量が正常よりも多くなると、血中カルシウム量の増大つながり疾患徴候である可能性もある。「parathormone上皮小体ホルモン)」、「parathyrinパラチリン)」、「pth」とも呼ばれる

パラトルモン

(副甲状腺ホルモン から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 15:03 UTC 版)

パラトルモン(parathormone)(パラソルモン)とは副甲状腺上皮小体)から分泌される84アミノ酸から構成されるポリペプチドホルモンである。 副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone, PTH)、上皮小体ホルモンとも呼ばれる。パラトルモンは、血液カルシウムの濃度を増加させるように働き、逆に甲状腺から分泌されるカルシトニンはカルシウムを減少させるように働く。パラトルモンは、血中のカルシウム濃度を増加させるが、パラトルモン受容体(PTH受容体)は骨、腸、腎臓の3箇所の臓器に発現が見られる[1]

機能

血中カルシウム濃度の上昇

器官 効果
カルシウムの放出を増大させる骨は大きなカルシウムの貯蔵器官である[2]。 骨の代謝は主に破骨細胞による古い骨基質の吸収反応と骨芽細胞による新しい骨基質の形成反応からなる。また骨吸収と骨形成は互いに共役しており、骨芽細胞は骨形成を行う一方、破骨細胞分化因子(RANKLRANKリガンド)の発現等によって破骨細胞分化の支持細胞としても働く。PTHは破骨細胞を間接的に刺激して骨吸収を促進するが、破骨細胞にはPTH受容体がなく、PTHの直接的な標的細胞はむしろ骨形成を行う骨芽細胞である。PTHは骨芽細胞の細胞膜上に発現するPTH受容体と結合し、骨芽細胞を刺激してRANKLを発現させる。破骨細胞前駆細胞は破骨細胞分化因子受容体(RANKRANKLに対する受容体)を発現しており、RANKLの刺激を受けて分化・細胞融合し、多核の破骨細胞を形成する。その結果、PTHにより破骨細胞形成が促進され、骨吸収が促進される。
腎臓 遠位尿細管[3]ヘンレ係蹄上行脚でカルシウムおよびマグネシウムの再吸収を亢進する。一方、無機リン酸(以下、リン)に関してはPTHの骨吸収促進作用によってカルシウムとともに骨より放出されるが、腎臓では近位尿細管におけるリンの再吸収を抑制して排泄させるため、結果的にリンの血中濃度は低下する。
ビタミンDの生成促進、25-ヒドロキシビタミンD3の1-αヒドロキシル化酵素の発現誘導により、腎臓における1,25-ジヒドロキシビタミンD(活性型ビタミンD)への変換を促進することで、小腸においてカルビンジン(ビタミンD依存性カルシウム結合タンパク質)によるカルシウムイオンを吸収させ、結果的に腸のカルシウムの吸収を促進させる。

血清リン濃度の制御

パラトルモンは腎臓の尿細管でリンの吸収を抑制する[3]。これはより多くのリンが尿から排出されることを意味する。またパラトルモンは腸管およびより血中へのリンの取り込み・放出を亢進する。骨では骨吸収によってリンはカルシウムとともに放出されるが、比率としてはややカルシウムの方が多い。腸管では、活性型ビタミンD3の増加により、リンおよびカルシウムはそれぞれ異なる機構によって吸収が亢進する。

フィードバック機構

血液中のカルシウム濃度が増加すると、副甲状腺の細胞上にカルシウム受容体が反応し、パラトルモンの分泌が抑制される[4]

疾患

  • 副甲状腺機能亢進症 - パラトルモンの過剰によって起こる。
    • 原因が副甲状腺にあるなら、原発性副甲状腺機能亢進症と呼ばれる。原因は、副甲状腺腺腫または副甲状腺過形成そして、副甲状腺癌である。
    • 副甲状腺が原因でない場合、二次性副甲状腺機能亢進症と呼ばれる。これは慢性腎不全で起こることが知られている。
  • 副甲状腺機能低下症 - パラトルモンの欠乏によって起こる。

副甲状腺ホルモン関連ペプチド

パラトルモンに類似した物質に副甲状腺ホルモン関連ペプチド(Parathyroid hormone-related peptide, PTHrP)がある。これは141個のアミノ酸からなる蛋白質であるが、アミノ末端の13残基中6個がパラトルモンと同一であるために生物作用がパラトルモンときわめて類似する。生体内にもある程度は存在するが、悪性腫瘍によって大量に産生されると副甲状腺機能亢進症と類似した症状をきたす。悪性腫瘍による高カルシウム血症の80%以上がPTHrPが原因となる。

骨粗鬆症治療への応用

PTH(全長84aa)のN末34アミノ酸(1-34)は、骨粗鬆症治療薬テリパラチドとして臨床応用されている。上記のとおりPTHには骨吸収促進作用があり、副甲状腺機能亢進症で見られるように持続的なPTH投与は骨密度を低下させるが、間欠的投与では逆に骨形成を促進し、骨折リスクを低下させる。ビスホスホネート等、以前の骨粗鬆症治療薬は破骨細胞による骨吸収の抑制を主たる薬理作用とするものがほとんどであるが、本剤は骨芽細胞に作用して骨形成を促進するという特徴的な薬理作用をもつ。1日1回、または週1回、静脈注射または皮下注射で使用される。

出典

[脚注の使い方]
  1. ^ Physiology at MCG 5/5ch6/s5ch6_11
  2. ^ Poole K, Reeve J (2005). "Parathyroid hormone - a bone anabolic and catabolic agent.". Curr Opin Pharmacol 5 (6): 612-7. PMID 16181808
  3. ^ a b http://sprojects.mmi.mcgill.ca/nephrology/presentation/presentation5.htm
  4. ^ Physiology at MCG 5/5ch6/s5ch6_9

副甲状腺ホルモン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 16:18 UTC 版)

骨粗鬆症」の記事における「副甲状腺ホルモン」の解説

テリパラチド - 遺伝子組換えヒトPTH(1-34) ヒトの副甲状腺ホルモンのN末端1番から34番までのみを、遺伝子組換えにより製剤化した物である。骨新生促進効果を持つ。皮下注射であるためコンプライアンスでは短所があるが、骨量増加作用は他の骨粗鬆症治療薬比べて高い。骨折骨壊死治癒促進効果があるが、嘔気などの消化器症状が出易い。『骨粗鬆症予防と治療ガイドライン2015年版』ではBPSERMなどによる治療行って骨折生じた例、高齢複数椎体骨折大腿骨近位骨折生じた例、骨密度著しい例ではテリパラチド使用推奨している。またステロイド骨粗鬆症骨折起こした場合には用いることもあるが、投与期間は2年上の効果証明されていない

※この「副甲状腺ホルモン」の解説は、「骨粗鬆症」の解説の一部です。
「副甲状腺ホルモン」を含む「骨粗鬆症」の記事については、「骨粗鬆症」の概要を参照ください。

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