統計図表 実証的な研究分野における統計図表の活用

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統計図表

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/01 16:42 UTC 版)

実証的な研究分野における統計図表の活用

自然科学社会科学人文科学を問わず、統計を根拠とした実証性が求められる研究分野では、データの整理・分析の一環として、統計図表を作成する局面が多数ある。具体的には、

  • 実験ノート上などの一次的な記録物や計算紙などの上でのデータの簡易的な分析
  • 実験・調査後に行う本格的なデータの分析
  • 論文・講演のスライド等の公表用の資料

など様々な状況がありえる。 そして、いずれの分野においても、

  • 「何を分析するのか」「何を主張するのか」「何を検定するのか」といった目的意識
  • 研究目的に照らして適切に取得・処理された統計データそのもの

といった場面が挙げられる。

変量同士の相関を議論することが主となる場合には、実際に用いられるグラフのほとんどが散布図である。そのほか等高線図や2次元分布図等の広い意味でのカラーグラフ(2D3D)、棒グラフである。棒グラフはヒストグラムの提示に用いられるのがほとんどである。3Dグラフは、正しく使えば値の3次元的な分布を正確かつ直感的に伝えることができるため、特に最近では、権威ある査読つき論文においてもよく使われている。箇条書きにすると、以下がよく使われる。

  • 二次元分布図(2D mapping,カラーマッピング)[14]・等高線図およびそのラインプロファイル(断面プロファイル)[15]
  • 散布図・エラーバー付き散布図およびその回帰曲線
  • ヒストグラム

統計処理に際し、本来的に「データは連続的な量として取得されているはず」という暗黙の前提があり、物理学化学工学経済学心理学問わず「変量同士の相関」を見るのが主な目的であるため、理想的には関数グラフのようなものを得たいという考えが暗にある。そのため圧倒的大多数において散布図を用いて

  • 2種類(あるいは3種類)のデータの相関を散布図にまとめる
  • そのデータに最もフィットし、現象論的にもっともらしい回帰曲線を描く(アレニウスプロットなど)

という処理が行われる。作成される散布図は、少数のデータから全体像を推測する場合には、「実際のデータの測定値」をそのまま散布図上に書き込むことが多い。データのラベルが離散的で、かつデータの量が充分多数で、そのデータの分布が正規分布に従っている場合には、ラベルごとの平均値のみをプロットし、それに適切なエラーバーをつける方法で作成されることが多い。

コンピュータ技術の進展により、統計グラフと画像(写真)の区別が曖昧になってきているという傾向がある。デジタル化された画像は空間座標・色の2種類の系列からなる情報の相関関係を2次元的あるいは3次元的に示したある種のカラーグラフの一種でしかなく、実際カラーグラフとして作成された等高線図などと解像度や、数字の羅列としてのデータ自体のみからでは区別がつかない。

初等教育の過程で重視される折れ線グラフは、ロードマップなどの未来技術予測などには多用されるものの、

  • 自然科学特に物理学において時間的推移(時系列)とは「時間と測定結果の相関」に過ぎない
  • ExcelやOriginなど一部のグラフ作成機能を有するソフトウェアでは「散布図の各点を棒で結ぶ」という方法で折れ線グラフが作成できる
  • 特にExcelでは、仕様上折れ線グラフは「目盛り間隔は必ず等間隔」とされていて、ある特定の時間のデータが欠落した場合などに不自由するが、散布図として作成すればそのような問題が生じない

などの理由から、ほとんどの場合は散布図にとってかわられている。

データの存在しない場合

データのないグラフが描かれる場合もある。例えばある考えを主張する場合、それを説明するために、言葉で行うのが普通であるが、おそらくデータがあればこうなる、という形でグラフが活用されることがある。

例えば島嶼生態学における種数平衡説は、海洋島における生物の種数を島へ新たに入植する種数と島で絶滅する種数の間の平衡によって決定されると論ずるが、前者については大陸からの距離が遠くなるほど低くなる、また後者は島が小さいほど高くなるということは容易に想像できる。これをグラフ化すれば、両者の曲線が中程の特定の点で交差し、そこがその島の種数の平衡点にあたることになるだろうことが容易に理解できる。この場合、実際にその曲線がどのような形であるかは実際の調査が必要であろうが、いずれにせよ右上がり、右下がりであれば議論が成立するので、グラフを作成することは虚偽にならない範囲でそれにわかりやすさをもたらす効果がある。


注釈

  1. ^ グラフの使い方自体を議論・評価する場合には、架空のデータを用いることは問題ない。なお、特殊な例として科学的な予想をグラフ化する場合があり、その場合はデータが存在しないことはあり得る。下に詳述する。

出典

  1. ^ a b 内田治『グラフ活用の技術 データの分析からプレゼンテーションまで』
  2. ^ a b 南川利雄『表とグラフの作り方』
  3. ^ a b c d e 山本 義郎『レポート・プレゼンに強くなるグラフの表現術』(講談社現代新書
  4. ^ 東北大学 自然科学総合実験 グラフの書き方
  5. ^ a b c d http://www.pref.chiba.jp/syozoku/b_toukei/graph-con/gr_tsukurikata.html
  6. ^ 見延 庄士郎『理系のためのレポート論文完全ナビ』
  7. ^ 『実験データを正しく扱うために』
  8. ^ 吉村忠与志『厳選例題Excelで解く問題解決のための科学計算入門』
  9. ^ David Carr Baird・加藤幸弘・千川道幸・近藤康『実験法入門』(ピアソンエデュケーション)
  10. ^ Jane C. Miller『データのとり方とまとめ方―分析化学のための統計学とケモメトリックス』(共立出版)
  11. ^ a b http://office.microsoft.com/ja-jp/excel/HA012337371041.aspx?pid=CH100648751041
  12. ^ a b http://www.hulinks.co.jp/support/kaleida/plot.html#01
  13. ^ a b http://www.lightstone.co.jp/products/origin/graphselect.htm
  14. ^ Originの等高線グラフ-XYZデータから作成した等高線
  15. ^ Originの等高線グラフ-等高線プロファイル


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