System Safetyとは? わかりやすく解説

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システムの安全性

読み方しすてむのあんぜんせい
【英】:system safety

概要

ハードウェア, ソフトウェア, 人間要素組合わさったシステムが, その機能喪失により人間地球環境資材等に損失損傷与え危険な状態に無いことをいう. このためには, フールプルーフ・フェイルセーフ・フェイルソフトリーなどの技術的な作り込みの他, 組織としての管理サイクル徹底し, 過去と同じまたは類似の問題二度と発生させないこと, 人間の認知行動十分にふまえたヒューマンインターフェイス構築等が必要である.

詳説

 システム(system)とは, "所定任務達成するために, 選定され, 配列され, 互いに連係して動作する一連のアイテム(ハードウェア, ソフトウェア, 人間要素)の組合わせ." 安全性(safety)とは, ``人間死傷又は資材損失若しくは損傷与えるような状態がないこと. " とJIS-Z8115 に定義がなされている. 信頼性任務遂行のための機能上の故障対象にするが, 安全性はその機能喪失により人間地球環境資材等に損失損傷与え危険な状態(以下ハザードと呼ぶ)を対象とする. 急速な科学技術発展に伴い, システムの複雑化巨大化自動化進み人間社会大きな恩恵与え一方, ひとたび事故発生する悲惨な結果を招く. また, 航空機などの巨大システムをはじめ, 数多く電子部品からなる車や家電製品等の身近なシステムに関して製造物責任(PL)の問題欧米のみならず全世界でその法律化進み, いかに安全な欠陥のないシステム開発するかがより重要である. ハザード事故の原因多く組織としての管理の問題ヒューマンファクター (human factor) に起因している. 以下ではこれらの要素工学・技術的な視点加え, そのポイントを記す.

1. ハザード分類データベース化ハザード種々の角度からの分類ができる. 1) 現象からの分類:潜在的なものか, 顕在化されたものか. 未知のものか, 経験したことがあるものか(個人的に未知問題であったとしても組織全体・社会全体としてみれば多く過去経験したのである). 2)発生原因からの分類:Man, Machine, Material, Method, Environment, Managementいずれの問題か. システム開発ステップのどの時点作り込まれたものか(例えば, 市場ニーズ, 使用目的, 使用環境条件等を正確に把握することなし開発を行うならば, 市場でのトラブル避け難い). 応急対策の未徹底か, 再発防止の未徹底か, 未然防止へのしくみが不十分であったか. 3)発見すべき時点からの分類:開発ステップのどの時点発見されるべきものであるか. 以上を組織越えてデータベース化し, 共有化活用をはかることが重要である.


2. 安全性作り込みのための基本的なステップ管理的な側面から以下の各ステップが重要である. 1) どのような安全性上の問題市場発生しているのかの調査の実施, あるいは問題顕在化するしくみを構築する. 2) 顕在化した問題関連する部門別区分けし, 各部門において問題の原因分析ならびにその再発防止を行う(故障解析PDCA徹底). 3) これまでのシステム/製品改良したものを市場に出す際に, 過去経験した問題と同じ, あるいは類似なものが発生しないようなシステム構築その実施を徹底するFTA (fault tree analysis) が有用). 4)これまでのシステム/製品と全く異な新しいものついての問題予測とその予防可能ならしめるシステム構築とその運用FMEA (failure mode and effects analysis)・設計審査有用). 5) 上記仕組み見逃され, 運用にいたり, 問題発生してしまった場合に, その影響できるだけ最小限にするための設計上の工夫フェイルセーフ (fail-safe) 等)および応急対策のための仕組み構築その実施.


3. 工学的技術的な検討電子レンジ誤って稼働中開けると自動的にpower offとなる. AT車のシフトレバーDriving Positionのままで車の鍵を抜こうとしても不可能である. このように人の誤操作設計未然防止するフールプルーフが重要である. 一方, システム機能上の喪失生じて事故危険な状態回避し, システムをより安全な状態に向けるフェイル・セーフ有用である. 例え鉄道信号機故障したときには赤信号を示す. ブレイカーヒューズもこの類である. 車の場合, シートベルト・安全ガラス・エアバッグ等により, 万が一事故生じてその影響軽減しうる(フェイルソフト). また, 車のタイヤパンク生じた場合に, 一昼夜車庫におかれた後, 空気抜けるならば大事に至ることはない. また, 腕時計電池が切れかかったときに秒針が2秒づつ進み, 電池交換必要性知らせてくれる仕組み有用である. これらは, 機能一瞬にして失われるではなく徐々にアナログ的に変化していくもので, 特にPL対す製品安全対策として有用である.


4. ヒューマンファクター意識フェーズ製品関連事故において, "誤使用・不注意"は, 原因不明を除くと全事故原因中の50 \sim\, 60%を占める. 例えば, "ストーブ近く可燃物をおいて火事"など, ヒューマンファクター起因する安全上の問題はあとをたたない. ヒューマンファクター考え場合, 人間行動特性熟知する必要がある. 安全分野における人間の認知行動モデルとしてのSRKモデルおよび人の意識フェーズ有用である. RasmussenによるSRKモデル人間行動熟練ベース(skill-base), 規則ベース(rule-base), 知識ベース(knowledge-base)の3段階にわけその行動上の問題を探る(塩見 [1] に詳しい). 橋本 [2] は, 人の意識フェーズを5段階(フェーズ:0, I, II, III, IV)に分類し, 人のエラー内容発生確率等がフェーズによって異なることを示す. 特にフェーズIVパニック状態であり, 理性的な判断行動失われ大脳旧皮質働きのみからの行動しできない. 例え部屋中に火災生じたとき, 多く人々はこのパニック状態となる. このとき非常口開け動作考えれば, 多くの人が "押して開ける" であろう. これは大脳旧皮質がなすわざであり冷静な行動期待できない. 即ち, 外に開く設計が重要となる. 意識集中度の低いフェーズでも同様にエラー発生率が高い. ベストの状態(フェーズIII)は, その持続時間15 \sim\, 20分しか続かない. これらを設計段階考慮し, マン・マシンインターフェイス構築することが肝要である.


5. 衆知結集データベース活用商品機能複雑化により一人または数人技術者のみの経験依存するのでは, 新し技術未知問題等についての誤り早飲み込みといった手落ち生じおそれがある. この難点克服し, 多く専門家集団見識統合化することにより, 設計レベルの向上を企てる為に誕生したものが設計審査(Design Review [5])である. この実施に当たり過去トラブル事故データベース化し, 類似の危険性回避することが重要である.



参考文献

[1] 塩見弘, 『人間信頼性工学入門』, 日科技連出版社, 1996.

[2] 橋本邦衛,『安全人工学』, 中央労働災害防止協会, 1984.

[3] 菅野文友, 額田啓三, 山田雄愛, 『日本的デザインレビュー実際』, 日科技連出版社, 1993.




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