設計審査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/26 21:31 UTC 版)
設計審査は、運輸省航空局の高橋正夫審査官によって行われた、審査に先立って行われた面談で下記項目をアドバイスされた。 捻り下げについて: 翼の失速は水平飛行について考慮されるのはもちろんだが、旋回飛行についても 捻り下げ(3.95°)を理由づけること。治具の精度は、どの程度まで上げられるか。 審査要領等の解釈は、ただ単なる法的解釈だけでなく、航空機の起こりうる諸現象を考慮して、最もsevereな状態で強度計算をして欲しい。 H-24 (CUMULUS)は実用機(練習機)とするか、学問的な種々の要求を満たした理論機とするのか。→実用機とする。 OP(オペレーションリサーチ): 経済的に採算の成り立つ(量産)min.機数を初期に決めて欲しい。その機数によって検査官の態度も違ってくる。純粋にengineeringの立場に立ち、グライダーだからという温情主義はさけ、国際的にも通用する強度、性能を要求していく。 強度計算は細部に注意。各種金具の面圧、剪断力、mass balanceの取付法、縛帯金具等。 飛行機のデータを参考にして、空力計算をもう一度チェックしてほしい。飛行機のものでいいのは次のようなものである。AgardのFlight Test Manual,MIL 0-8785,NACA-TR 主翼翼型633-618の製作技術―境界層の遷移点はすぐ前にきてしまう。表面の粗さ、面精度。 試験方法の計画書をレポートにして出すこと。材料試験、強度計算。 申請書: 初期に出す図面は最終的なものでなくてよい。Outlineを示す。仕様書、三図面。 細部図面は後で可。 計算書の書き方: 出典を明示して欲しい。Symbol 明示してほしい。 V tail の mass balance をつけなくてもよい理由をつける。 Flutterの諸現象をFAの規程で確認。 ソリ、胴体の着陸装置、車輪の強度、タイヤ圧、主翼のmarginはできるだけとっておく。 風洞実験と計算値のつじつまは → レイノルズ数 操縦系統の剛性はBergfalke。飛行機を参考に極力上げておく。H-22も-23も皆不足している。 材料の品質管理: Cr-Mo(クロームモリブデン)鋼の難点 - 溶接 Skylarkの取付金具を参考のこと。 風防強度計算は、チェック程度でよい。 曲技飛行の要求は厳しくする。High performanceそして強い強度、その両方をかねそなえたものにするには、それ相当の準備をとることを要求する。 上記、1964年4月6日に出された課題には、耐空性審査要領には無い項目も含まれている。 1964年12月に下記設計書を以って回答している。 空力計算・風洞試験98頁 荷重計算23頁 主翼強度計算156頁 尾翼強度計算88頁 胴体強度計算66頁 接着剤試験10頁 上記、計441頁。続けて、翌1965年2月に下記設計書を提出し、2月10日に審査に合格した。 ・機体各部位(主翼、胴体、水平尾翼、エルロン、方向舵、昇降舵、タブ関係等) ・治具図面(主桁製作治具、主翼組立治具) 1960年代当時、計算は、計算尺と手回し式のタイガー計算機で行われた。計算には時間が掛かり、当時グライダーでは、曖昧にされていた項目もあったが、全ての項目に計算で答えを出した。高橋審査官はレベルの高さに感心したという。
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