計算尺とは? わかりやすく解説

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けいさん‐じゃく【計算尺】

読み方:けいさんじゃく

乗法除法開平開立などの計算簡単に行うことができる、物差し形の計算器具固定され二つの台尺、その間移動する滑尺目盛り合わせて値を求めカーソルからなる


計算尺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/25 22:46 UTC 版)

計算尺(ヘンミ P45S)
円形計算尺(コンサイス NO.28)

計算尺(けいさんじゃく)とは対数の原理を利用したアナログ式の計算用具である。棒状や円盤状のものがある。円盤状のものは目盛りがループしているため目外れが生じないというメリットがあるが、滑尺のスライドがしづらく内周の尺は目盛りが荒くなるというデメリットがある。

計算尺の基本的なメカニズムは log(a × b) = log(a) + log(b) であることを利用して対数状の目盛り(対数スケール)の加減算で乗除算を行うことと、各種関数値が刻んである目盛りで換算を行うことで、これらを連鎖的に行うことで最終的な解に導く。

殆どの物は乗除算および三角関数、対数、平方根立方根などの計算に対応しており、加減算を行えるものは非常に稀である。そろばんのようなデジタル(離散的)な計算機と異なり、計算尺で得られる値は概数である。目盛りの読み方によって桁の多い数や、小数点のある数の計算も可能で、物理定数などが刻印されているものも多い。

棒状計算尺の長さは10インチ(25cm)が一般的で、このほかに携帯用の4インチ、5インチ、高精度の20インチも存在した。戦艦大和の設計では4メートルの特注の計算尺が使用された。

特定の目的の計算に特化した計算尺も数多く作られている。航空エンジニア向けの航空機の燃料計算、家電セールスマン向けの電球の寿命計算、写真撮影用の計算尺式露出計操縦士航空士が航法計算に用いる「フライトコンピューター」など、さまざまな分野で特化型の計算尺が作られ、現在も様々な計算尺が製造されている。

1970年代頃まで理工学系設計計算や測量などの用途に利用されていたが、1972年に世界初の「ポケットに入る関数電卓」HP-35の登場で市場が徐々になくなり、1980年頃には多くのメーカーで生産が中止された。かつては無線や電気関係の資格試験において持ち込みが認められていたが、2000年代前半ごろから禁止されるようになった。

計算尺の構造

計算尺は固定尺、滑尺、カーソルの3部品からできている。

固定尺とは基尺(きしゃく)ともいい、計算尺において相対的に動かないと考える部分である。下記の「計算方法の例」の図で示されている計算尺における白色の部分である。滑尺を挟んで上下に位置しているがこれら2つの部分は固定されており、お互いに動かせない。

滑尺(すべりしゃく、かっしゃく)、または中尺(ちゅうしゃく)とは、上下の固定尺の間に位置しており、左右に動かせる部分である。下記の「計算方法の例」の図で示されている計算尺における水色の部分である。

カーソルとは固定尺と滑尺をまたいで計算尺の左右に動く部分である。下記の「計算方法の例」の図で示されている計算尺における透明版の部分である。尺をまたいで値を比較する際に用いるカーソル線が1本または複数本刻まれている。カーソル線は毛線(もうせん)ということもある。

尺の名称

計算尺の主要な尺の名称と用途を挙げる。

C尺、D尺
D尺は下側の固定尺に位置している1~10の対数スケールが振られた尺、C尺は滑尺に位置している尺であり存在する位置が違うだけで目盛りの振り方は同じである。これらの尺はかけ算、割り算をはじめ、ほぼ全ての計算において利用される。
C尺には

割り算

6÷3の計算の例である。

  1. D尺の「6」にカーソル線をあわせる。
  2. C尺の「3」をカーソル線にあわせる。
  3. C尺の「1」に対応するD尺の目盛りは答えの2を指している。

歴史

計算尺を用いた技術計算の様子。
背後の机の上に機械式計算機がある。

計算尺は様々な関数の値の対数を計算し、その比率を目盛として固定尺や滑尺に配置したものである。対数は1614年にスコットランドのジョン・ネイピアが発表した。その6年後にイギリスのガンターが対数尺を考案した。これは数の対数や三角関数sin, tanの対数などを幾何的に配置したものであり、コンパスを利用して2つの目盛の長さの加減をしていた。現在の形式の計算尺、つまり複数の尺をずらして計算をするという形の計算尺を発明したのはオートレッドであり1632年のことである。主流となった直線型の計算尺と円形型の計算尺の両者ともオートレッドの発明である。その後様々な計算尺が考案され、電卓(電子式卓上計算機)が普及する1980年代頃まで広く使われた。

マンハッタン計画を記録したニュース映画では科学者が実験結果を検証するために白衣の胸ポケットから小型計算尺を取り出し計算する場面がしばしば映し出された。このように計算尺は電卓が登場するまで科学者技術者をイメージされるアイテムとしてしばしば表象された。

日本での歴史

  • 1894年 - フランスマンハイム(マネーム)計算尺を廣田理太郎内務省官僚近藤虎五郎が欧米視察の土産として持ち帰ってきたのが始祖とされる。
  • 1895年 - 逸見治郎、独自の計算尺完成。
  • 1909年 - 逸見、特許庁に出願(特許第22129號)。
  • 1933年 - 逸見、逸見製作所(現・ヘンミ計算尺)を設立。
  • 1947年 - 唐沢英雄、「計算尺の新使用法と其の活用」(矢島書房)を発刊。富士計算尺株式会社と共同で計算尺を設計開始。
  • 1959年 - 唐沢、富士計算尺を通じD尺、C尺を従来のπではなく

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計算尺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 05:59 UTC 版)

ウィリアム・オートレッド」の記事における「計算尺」の解説

オートレッドの計算尺は、ガンターが既に解明していた1つ対数尺使った計算方法をより簡便にしたものだった。ガンター方法キャリパスを必要とし、対数尺上のある間隔ずらして目盛り読み取るというものだった。オートレッドは2つ対数尺用いて、それらをスライドさせることで計算行った1620年代のオートレッドの計算尺は円形だが、このアイデア出版物公表したのはオートレッドではなく1630年にドラマンが出版したのが最初である。現在の計算尺のように中間部分スライドする真っ直ぐな形状のものが登場したのは、1650年代である。

※この「計算尺」の解説は、「ウィリアム・オートレッド」の解説の一部です。
「計算尺」を含む「ウィリアム・オートレッド」の記事については、「ウィリアム・オートレッド」の概要を参照ください。

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