計算器具
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 10:11 UTC 版)
計算を補助する器具の使用は数千年前から始まり、多くはふつうに指で数を数えるのと同様のやりかたである、1対1に対応させて使うものだった。最初期の計数器具としては tally stick と呼ばれる原始的な割符のようなものがあった。肥沃な三日月地帯で広く使われた記録保管法としては、小石(粘土球、粘土錐など)を家畜や穀物の数のぶんだけ容器に入れて封印しておく方法があった。同様の例として算木がある。 最初期の算術器具としてそろばん(アバカス)がある。「ローマそろばん」(en) は紀元前2400年ごろバビロニアで使われ始めた。その後、様々な計算用の盤や卓が発明されてきた。中世ヨーロッパではテーブルにチェック柄の布を広げ、その上でマーカーをある規則に従って動かし、金額を計算するということが行われていた。 アナログコンピュータは古代から中世にかけて、天文学に関する計算を行う目的で何度か考案されてきた。古代ギリシア(紀元前150年から100年ごろ)ではアンティキティラ島の機械やアストロラーベが作られており、既知の最古のアナログコンピュータとされている。似たような初期の器具として星座早見盤やアブー・ライハーン・アル・ビールーニー(紀元1000年ごろ)の発明した計算機械、アッ=ザルカーリー(紀元1015年ごろ)の発明したどの緯度でも使えるアストロラーベなどがある。他にも中世イスラムでは天文学者や技術者が様々な天文用アナログコンピュータを作っており、中国では宋代の蘇頌(en、紀元1090年ごろ)が天文時計の塔を作った。 1206年、アル=ジャザリが「城時計」という天文時計を発明。世界初のプログラム可能なアナログコンピュータとされている。黄道十二星座、太陽と月の軌道、月相を示すことができる。月相を表した針が門の上を移動し、門が1時間おきに自動的に開く。そして、5体のロボット楽団が音楽を演奏する。その動力源は水車で駆動されたカムシャフトでてこを操作することで得られていた。昼と夜の長さをプログラムの変更で変えられるようになっていた。 スコットランドの数学者で物理学者のジョン・ネイピア (1550-1617) は、乗算と除算がそれぞれ元の数の対数の加算または減算で実現できることに気づいた。世界初の対数表を作る過程で多数の乗算を行う必要があったため、ネイピアは乗算と除算ができるそろばんのような器具「ネイピアの骨」を考案した。実数は直線上の距離または間隔として表現できることから、1620年代に計算尺が発明され、乗算や除算がそれまでより格段に素早く行えるようになった。計算尺は技術者や仕事上で数学的な計算を必要とする人々が数世紀に渡って使い続け、最終的に電卓の登場で役目を終えた。
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