酵素に関する年表
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 09:15 UTC 版)
「生化学の歴史#酵素」も参照 19世紀1833年 フランスのアンセルム・パヤンとジャン・フランソワ・ペルソは、麦芽の抽出液からデンプンを分解して単糖(グルコース)にする物質を分離した。彼らはこの物質を「ジアスターゼ」(現在、フランス語で「酵素」を意味する)と名づけた。 1836年 ドイツのテオドール・シュワンは胃液が動物の肉を溶かす作用があることを発見し、胃液から原因物質を分離した。この物質は「ペプシン」と名づけられた。これは植物だけでなく動物にも同様の活性が存在することを証明したものである。 1857年 フランスのルイ・パスツールがアルコール発酵過程が微生物(当時は酵母の研究)活動に基づくものであると発表した。ただし、これは酵素という無生物が起こすものとはパスツールは証明しなかった。しかし、ドイツのユストゥス・フォン・リービッヒは微生物ではなく、細胞外の無生物因子(当時は「発酵素(fermente)」という用語を用いた)が発酵に関与しているとして、この説を否定した。 1873年 スウェーデンのイェンス・ベルセリウスが「化学反応は触媒作用によって進行する」という概念を提唱した(この概念は酵素の概念が認められたためである)。 1878年 ドイツのウィルヘルム・キューネが酵母(ギリシャ語で "zyme")の内部(ギリシャ語で "en")で発酵が起きることを受けて「酵素(en-zyme)」という概念を提唱。 1894年 ドイツのエミール・フィッシャーが酵素の基質特異性を説明するために、酵素と基質の「鍵と鍵穴説」を発表した。 1894年 日本の高峰譲吉がタカジアスターゼを発見した。 1897年 ドイツのエドゥアルト・ブフナーが、酵母抽出液からアルコール発酵が起きることを証明した。 20世紀1902年 イギリスのフェルディナント・ブラウンとフランスのアンリ・ルシャトリエは、スクラーゼの活性は酵素濃度に規定されることを観察し、反応の最中に基質と酵素は酵素基質複合体を作るという考えに至った(反応速度論の始まり)。 1907年 エドゥアルト・ブフナーが前述の功績を受けてノーベル化学賞を受賞。 1913年 ミカエリス、メンテンらがブラウンとルシャトリエの結果を受けて「ミカエリス・メンテン式」を発表。 1925年 G・E・ブリッグスとJ・B・S・ホールデンがミカエリス・メンテン式を発展させた「ブリッグス・ホールデンの速度論」を発表。 1926年 アメリカのジェームズ・サムナーがナタ豆から「ウレアーゼ」と呼ばれる酵素を結晶化して、酵素の本体がタンパク質であることを突き止めた(ただしこの実験は当時評価されなかった)。 1930年 アメリカのジョン・ノースロップがペプシン、トリプシン、キモトリプシンをタンパク質の結晶として抽出した。 1931年 ドイツのオットー・ワールブルクが、呼吸酵素の特性および作用機構の発見によってノーベル生理学・医学賞を受賞。 1945年 アメリカのジョージ・ウェルズ・ビードルとエドワード・ローリー・タータムは1つの遺伝子が1つの酵素に対応することを発表した(一遺伝子一酵素説)。 1946年 サムナーとノースロップは酵素の本体がタンパク質であることを証明し、ノーベル化学賞を受賞した。 1955年 サンガーらはインスリンの一次構造を決定した。 1955年 スウェーデンのヒューゴ・テオレルが、酸化酵素の研究によってノーベル生理学・医学賞を受賞。 1960年 アメリカのウィリアム・スタインとスタンフォード・ムーアによって、リボヌクレアーゼのアミノ酸配列が決定された。 1962年 ジョン・ケンドリューとマックス・ペルーツが、球状タンパク質の構造研究によってノーベル化学賞を受賞。 1965年 イギリスのデビッド・フィリップスはリゾチームと基質の複合体の立体構造を明らかにした(酵素として立体構造が決定されたのはこれが初めて)。 1965年 フランスのフランソワ・ジャコブ、アンドレ・ルウォフ、ジャック・モノーが、酵素およびウイルスの合成の遺伝的調節に関する研究によってノーベル生理学・医学賞を受賞。 1965年 高崎義幸らが、グルコースイソメラーゼを用いて異性化糖の製造法を発明。 1968年 H.O.Smith, K.W.ウィルコックスらがDNAの制限酵素を発見した。 1968年アメリカのジョー・マッコード、アーウィン・フリドビッチがフリーラジカルを排除する酵素、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を発見。 1969年 アメリカのロバート・メリフィールドが、ペプチド固相合成法を用いて、化学的にリポヌクレアーゼを合成した。 1972年 スタインとムーアは酵素の一次構造決定によってノーベル化学賞を受賞。 1975年 オーストラリア のジョン・コーンフォースが、酵素による触媒反応の立体化学的研究によってノーベル化学賞を受賞。 1978年、アメリカのダニエル・ネーサンズ、ハミルトン・スミス、スイスのヴェルナー・アーバーが制限酵素の発見と分子遺伝学への応用によってノーベル生理学・医学賞を受賞。 1986年 アメリカのトーマス・チェックらによって触媒作用を有するRNAである「リボザイム」が発見された。これによって、触媒作用はタンパク質に依らないという概念ができた。さらに生命の起源はRNAから始まったとする「RNAワールド仮説」の元になっている。 1986年 アメリカのトラモンタノらは抗体酵素(abzyme)を発見した。 1989年 チェックらはリボザイムの発見によってノーベル化学賞を受賞した。 1992年、スイスのエドモンド・フィッシャー、アメリカのエドヴィン・クレープスが生体制御機構としての可逆的タンパク質リン酸化の発見によって(タンパク質キナーゼ) ノーベル生理学・医学賞を受賞。 1997年 アメリカのポール・ボイヤー、イギリスのジョン・E・ウォーカー が、アデノシン三リン酸(ATP)の合成の基礎となる酵素機構の解明によって(ATPシンターゼ)、デンマークのイェンス・スコウがイオン輸送酵素、Na+, K+-ATPアーゼの最初の発見によってノーベル化学賞を受賞。
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