材質と特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 01:04 UTC 版)
土鍋 近年普及が進んでいるIHヒーターは、鉄系素材とは相性がいいが、アルミや銅などの非磁性金属は使用できない製品もあり、できても加熱効率が劣る。また非導電体である土鍋やガラスは原則的に使用できない 陶器 - 土鍋 火のあたりが柔らかく、保温性が高いのが特徴。おでんやお粥など弱火で長時間煮込む料理に適している。陶器製のため衝撃を加えると割れる危険性がある。また、急激な温度変化にも弱いので、鍋底に水滴が付いている状態で火に掛けるとひびが入ることがある。目止めが必要なものとそうでないものがある。土鍋のサイズは号数で表示されるが、号数は寸(3.03cm)と同一なので、7号であれば約21cmとなる。中国でも各地で用いられており、「砂鍋」と称する。 耐熱ガラス 性質は土鍋に近く、中身の様子が確認しやすいという長所が挙げられる。欠点は、やはり衝撃に弱いこと。 本体よりも耐熱性の要求が緩い鍋蓋に関しては多く用いられる。 琺瑯(ほうろう、ホーロー) 鉄や銅製の鍋の上に、ガラス質の釉薬の層を焼き付けたもの。腐食に強いことからアルミやステンレスの普及以前に多く使用されたが、加熱直後に水につけるなどの急激な温度変化や、土鍋やガラス鍋ほどではないが衝撃を受けると表層が破損しやすい欠点がある。しかし現在でも、金属鍋にはない独特の美しさや、熱伝導率の高い金属を使用しつつ耐食性も強化できるなどのメリットから、比較的高級な製品にニッチを確保している。 鉄 古くは鍋の材料として最も多用されていた。丈夫で熱にも強く、油のなじみがとても良いため,強火と油を多用する中華鍋の材料としては主流である。使用することで鉄分の補給ができ、熱伝導率も比較的良好である。錆びやすいこと、重いことが欠点。鋼板をプレス加工したものと鋳物(鋳鉄)製のものがある。過去には鋳鉄鍋は銅鍋よりも廉価な普段使いのものが多く、これの補修を請け負う鋳掛屋が各地で行商していた。現代の鉄鍋は大部分が鋼板プレス製に取って代わられ、鋳鉄鍋は逆に南部鉄器のような高付加価値の工芸品として生き残っている。いずれも、近代以後は防錆力を高めるため表面に琺瑯加工を施した製品が市販されている。中華鍋のようなコーティングされていない鉄鍋は腐食や焦げ付きを起こしやすいため、新品をおろした時には空焼きや鍋ならし(シーズニング)といった表面処理を行う場合がある。 銅 実用できる材質の中で最も熱伝導率がよく、鍋の材質として理想的なものである。しかし、材質的に柔らかいので傷が付きやすく、酸化や電気腐食が起きやすいため、手入れには手間が掛かる。そのため、現代の銅鍋の内側には錫のメッキが施されており、内側が銀色に輝いている。展性に優れていることから鍛造成型されることが多かった。鍛造鍋は鋳造より薄く軽いが、製造には技術力と手間を要する上、地金の銅も鉄より高価であるため高級品であった。安価なプレス成型の雪平鍋に鍛造の鎚跡を模したパターンが成型されているのも、高級品であった名残である。現在でも細々ながら職人の手で製造が続けられており、本物の鍛造鍋は仔細に観察すれば、(製作者の技量レベルにもよるが)鎚跡が完全に一定にはならないのでプレス成型と区別できる。 銅製の調理器具で調理すると料理に銅イオンが染み出す。銅イオンは卵白の泡を安定させたり緑野菜の色を鮮やかにする効果がある反面、人体から排出されにくく大量に摂取すると胃腸障害や肝障害を起こす危険性がある。よって、内側が錫メッキされていない銅の調理器具を毎日使うことは勧められない。 アルミニウム 現在、鍋に最も多用されている材質である。銅につぎ熱伝導率が高く、軽く、錆びにくい。展性にも優れているのでプレス成型で安価に大量生産が可能。柔らかな材質なので、傷が付きやすい。酸に弱いので、耐蝕性を高めるためアルマイト加工が施された鍋も多い。耐久性の点から家庭用のシェアはステンレスに押される傾向だが、特に業務用寸胴鍋のような大型製品では軽さのメリットが代えがたく、依然主流を占める。 ステンレス 錆に強く、硬さと耐衝撃性もあり、一般的な鍋の材質としては最も耐久性に優れる。アルミ材に比べプレス成型にはより高い技術を要するが、現在ではアルミと並ぶ鍋素材の主流となった。表面を磨いた鏡面仕上げはステンレス材の特権と言える。熱伝導率が悪い欠点があるため、後述の多層底構造で改善を図っている。単層鋼 熱伝導率が非常に悪く鍋の材質としてはあまり好ましいものではない。 全面多層鋼(クラッド鋼) 外側の部分にステンレスを配置し、内側に鉄、銅、アルミなどのより熱伝導率の良い材料をはさみ込んで、圧延することで一枚の板状に加工した材料。断面を見ると、サンドイッチ状に複数の材質が重なり合って結合しているのを見ることができる。各材質は熱伝導率が異なるので、境界面で水平方向に熱の拡散がおきて、結果的に鍋全体が均一に加熱されることになり加熱むらが出にくい。複合層は3層、5層、7層のものが多く、これ以上に多層のものもある。 多層底 単層鍋の底の部分のみ多層構造にしたもの。底面の加熱むらは少ないが、側面(特に底に近い下部)に加熱むらが出やすく焦げ付きの原因となりやすい。 チタン 精錬や加工が難しいことから高価で、鍋の材料として利用されるようになったのはごく最近である。熱伝導率は極めて悪いが、重さは鉄の約半分で錆に強い。登山など軽量化が求められる状況では重宝されている。 石 日本料理の鍋物や石焼き丼、または石焼きオムライス、石焼き中華丼、石焼きカレーなど、国内の和・洋・中・エスニックの区別なく多くの料理に用いる。韓国料理でもトルソと呼んで使用し、石焼きビビンバは代表例となっている。石材としては、長水石などが用いられる。九州・沖縄県では室町時代まで滑石製石鍋が使用された。 紙鍋 主に宴会で座敷で食べるために用いられるもので、鍋として使用できるよう紙に耐水加工を施し、直接火が当たらないように用いる。電磁調理器を使い、紙鍋の中、あるいは下に鉄板を置いて熱源とすることもある。 貝殻 東北地方のかやきなど、日本海側には大きなホタテガイやアワビの貝殻を鍋代わりにする料理の例が見られる。
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