戦災地復興計画基本方針
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「戦災復興都市計画」の記事における「戦災地復興計画基本方針」の解説
終戦の年の年末である1945年(昭和20年)12月30日に、戦災復興都市計画の基本方針となる「戦災地復興計画基本方針」が閣議決定された(都道府県都市計画主務課長には9月に、都市計画主任官会議には10月に内示されていた)。この方針は当時の内務省が描く日本の都市の理想像を示した興味深いものである。(原文は漢字と片仮名。適宜、代名詞などの漢字を平仮名に直し、句読点を入れて一部誤字と思われる箇所を修正した。) 戦災地復興計画基本方針昭和20年12月30日 閣議決定 今次の戦災は被害ほとんど全国にまたがり、都市、集落を通じその焼失区域は1億6干万坪におよぶ。これに対する復興計画は産業の立地、都市農村の人口配分等に関する合理的方策により、過大都市の抑制並びに地方中小都市の振興を図るを目途とし、各都市または集落の性格とその将来の発展に即応して樹立せらるべく、計画に属する事業は永年長期にわたり継続して施行するのほかなきも、これが基礎となるべき土地整理事業は性質上出来得る限り、急速にこれを実施すべきものとす 1、復興計画区域戦災地の復興計画を実施する区域は、都市または集落の相当部分に損害をこうむりたる戦災地の主要罹災地域およびこれと関連する地域とす 2、復興計画の目標戦災地の復興計画においては産業の立地、人口の配分等に関する方策により規定せらるる都市集落の性格と規模とを基礎とし、都市集落の能率、保健および防災を主眼として決定せらるべく、かねて国民生活の向上と地方的美観の発揚を企図し地方の気候、風土慣習等に即応せる特色ある都市集落を建設せんことを目標とす 3、土地利用計画(1) 都市、集落の能率、保健および防災に対する充分なる考慮のもとに工業、商業その他の業務および住居に充てらるべき土地の配分を計画的に決定すること(2) 土地利用に関する計画の実現を確保するため、地域および地区に関しては出来得る限り精密に指定し、かつ特にその専用制を高度化すること(3) 特殊の目的のために設けらるる地区にして、その従来の配置が不適当なるものはこの際これが変更、合併を行うこと(4) 官公衙、学校、停車場、郵便、電信電話局舎、市場、墓地その他都市集落構成上の主要営造物については、適正なる配置を為すと共に、罹災の施設または営造物にしてその位置を変更するを適当とするものは、これを他に移転せしむること 4、主要施設(1) 街路 イ、街路網は都市集落の性格、規模並に土地利用計画に即応しこれを構成すると共に、街路の構想においては将来の自動章交通および建築の様式、規模に適応せしむることを期し、かねて防災、保健および美観に資すること ロ、主要幹線街路の幅員は中小都市において36米以上、大都市においては50米以上、その他の幹線街路は中小都市においては25米以上、大都市においては36米以上、補助幹線街路は15米以上とし、やむを得ざる場合といえども8米を下らず、区画街路は6米以上とすること ハ、必要の個所には幅員50米ないし100米の広路または広場を配置し利用上防災および美観の構成を兼ねしむること ニ、地下鉄道、軌道、乗合自動車等の整備を予想せらるる場合においては街路はこれに即応する系統幅員を有せしむること(2) 緑地 イ、公園運動場、公園道路その他の緑地は都市、集落の性格および土地利用計画に応じ系統的に配置せらるること ロ、緑地の総面積は市街地面積の10%以上を目途として整備せらるること ハ、必要に応じ市街外周における農地、山林、原野、河川等空地の保存を図るため緑地帯を指定し、その他の緑地とあいまって市街地への楔入を図ること(3) 港湾、運河、飛行場将来の産業の立地および地方の発展を予想しこれに相応する鉄道、軌道、港湾および運河を整備すると共に、主要なる都市においては飛行場、軌道、地下鉄道等を計画すること(4) その他市街地の整備に伴い電線等は原則としてこれを地下に移設し必要なる水道、下水道の改良新設を行い水利施設の拡充を期するのほか、必要に応じ塵芥および汚物の処理場、火葬場、屠場等を整備し、主要都市においては蔬菜、鮮魚介等の市場の整備を図ること 5、土地整理(1) 街路公園その他の公共用地等の提供および市街地の利用増進を目的として、罹災区域の全体にわたり急速に土地整備を実施すること(2) 土地整理の方法は土地区画整理または買収によることとし、必要に応じて地券の発行等の方法を考慮すること(3) 土地区画整理においては名勝地、旧蹟地、古墳墓地等を除くのほか、関係土地の全部を整理施行地区に編入すること(4) 移転すべき罹災の施設または営造物の跡地、兵舎その他軍用地跡地は官公衙、街路、公園その他公共用地に充つるもののほか、これを市街宅地と為すこと(5) 土地区画整理施行の結果、宅地面積の減少するものに対しては、その減少の一部はこれを無償をもって提供せしむること(6) 市街地の密住を避け、堅牢建築物の建築を促進するため、土地区画整理においては過小画地の整理を行うこととし、整理の施行を容易ならしむるため、必要に応じ小なる敷地に対しては地積を増して換地を交付し、特に大なる敷地についてはその減歩を大ならしむること(7) 土地区画整理の施行を容易ならしむるため、公共団体代行機関等をして住宅敷地造成事業を経営せしむること 6、疎開跡地に対する措置(1) 土地区画整理施行区域内の建物疎開跡地にして、公共団体においていまだ買収しあらざるものについては、区画整理事業の施行を容易ならしむるため関係公共団体をしてこれを買収せしむること(2) 建物疎開跡地にして区画整理施行区域外にあるもの、および戦災地にあらざる都市にあるものは、都市計画上必要あるものに限り関係公共団体をしてこれを買収せしめ、その経費については国庫より補助金を交付すること 7、建築(1) 市街地の不燃、保健および防災を強化し、戦災地に関する復興計画に即応して市街地建築物の構造設備に関する監督を強化し、併せてこれが指導を行うこと(2) 都心部および防火帯に属する地区においては、堅牢建築物以外の建築物を禁止すること(3) その他の地区においても、堅牢建築物以外の建築物はその配置および構造に関する条件を厳格にし、出来得る限りこれが耐火性を高むること(4) 建築物敷地内の空地を確保するため、建蔽率に関する制限を強化すること(5) 堅牢建築物の建築を促進するため、これが有効なる助成の方途を講ずると共に、堅牢建築物の建築上の必要にもとづく同一街廓内の土地の収用の制度を設くること 8、事業の執行復興計画は政府において計画を統制し、その立案にあたりては出来得る限り地方の創意を反映・助長せしむるを主眼とし、これにもとづきて施行すべき事業はなるべく市町村長(東京都の区の存する区域については東京都長官)をしてこれを執行せしめ、市町村長において執行すること困難なるものは府県知事をして執行せしむること 9、復興計画事業費(1) 復興計画事業の費用は公共団体の負担とするも、公共団体の財政において負担に堪えざる部分については国庫より補助すること(2) 公共団体において負担する費用については、その一部を罹災区域外の住民をして負担せしむることを得ること(3) 公共団体の負担する費用に充てしむるため、政府は低利資金の融通をなしかつその利子等の補給を為すこと
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