処刑
『マルコによる福音書』第15章 イエスは十字架を担いで、ゴルゴタまで歩かされた。午前9時に、イエスは十字架にかけられた。昼の12時になると全地は暗くなり、それが3時まで続いた。3時にイエスは、大声で「エロイ、エロイ、レマ、サバクタニ(我が神、我が神、なぜ私をお見捨てになったのですか)」と叫び、息を引き取った。その時、神殿の垂れ幕が、上から下まで真っ二つに裂けた〔*『マタイ』第27章、『ルカ』第23章に類話。『ヨハネ』第19章は内容がやや異なる〕。
イスキリの伝説(谷真介『キリシタン伝説百話』「昭和のキリシタン伝説」) ゴルゴタの丘で磔刑になったのは、キリストと11ヵ月違いの、瓜二つの弟イスキリだった。キリストはイスキリの遺骨の一部を持ってイスラエルを逃れ、中国大陸を横断して、日本の青森県の戸来(へらい)にたどり着いた。キリストは村の娘ユミを娶(めと)って3女をもうけた後、日本全国を行脚して人々を救った。老齢になって戸来へ戻り、〔第12代〕景行天皇11年(A.D.81)4月5日の暮れ6つ刻に、106歳で死去した。
*西郷隆盛や源義経も、死んだのは身代わりの人かもしれない→〔影武者〕3。
★2.絞首刑。
『絞死刑』(大島渚) 在日朝鮮人の青年Rは、強姦殺人罪で絞首刑になったが、なぜかいつまでたっても絶命しなかった。息をふきかえしたRは、自分が誰で何をしたのか、すべて記憶を失っていた。心神喪失の者を処刑するのは法律上許されないので、死刑執行官たちは芝居の形でRの犯行を再現し、彼の記憶をよみがえらせる。Rは自らの犯行を思い出し、再度の絞首刑執行を受け入れて、今度は本当に死んで行く。
*→〔兵役〕7の『私は貝になりたい』(橋本忍)。
★3.火刑。
『好色五人女』(井原西鶴)巻4「恋草からげし八百屋物語」 八百屋八兵衛の娘・16歳のお七は、火事騒ぎで家族ともども旦那寺の吉祥寺に避難し、半月余りを過ごすうち、寺小姓・吉三郎と恋仲になる。その後、自家に戻ったお七は、「また火事があれば吉三郎に逢える」と思い、放火して捕らえられる。お七は市中引き回しの末、鈴が森で火刑になる。人は皆、結局は煙になるというものの、お七の最期はとりわけ哀れだった。
『裁かるるジャンヌ』(ドライヤー) フランス、オルレアンの19歳の少女ジャンヌ・ダルクは、男装してイギリス軍と闘い、捕らえられて裁判にかけられる。彼女は「自分は神から遣わされた者だ」との信念を捨てなかったため、火刑の宣告を受け、柱に縛りつけられる。焔の中で、ジャンヌは「イエス様」と叫んで意識を失う。この時になってようやく、群集は「聖女を火刑にしたのだ」と、怒りをあらわす。
★4.釜ゆで。
『本朝二十不孝』(井原西鶴)巻2-1「我と身を焦がす釜が淵」 盗賊石川五右衛門は七条河原に引き出され、彼の7歳になる子供とともに大釜に入れられて、油で煮られた。五右衛門は熱さに堪えかね、子供を下に敷いた。見物人たちがあざ笑うと、五右衛門は「子供がかわいそうだから、早く楽にしてやろうと思うのだ」と弁解した。
★5a.ギロチン。
ギロチンの伝説 フランスの医師ギロチン(ギヨタン)は、大量に人々を処刑する首切り器械(すなわちギロチン)を発明したが、後にギロチン自身がギロチンにかけられて死んだという〔*事実ではないらしい〕。
*ギロチンで処刑される夢→〔夢と現実〕6の『夢判断』(フロイト)。
『断頭台の秘密』(リラダン) 外科教授ヴェルポーが、ギロチンで処刑される男に、「首が切断された後も自我を持ち得るかどうか、確かめる実験に協力してほしい」と依頼する。処刑が執行され、首が落ちた瞬間、教授は「左眼を開けたまま、右眼で3度瞬(まばた)きしてくれ」と言う。首は左眼を開いて教授を見つめ、右眼を閉じた。「あと2度、瞬いてくれ」と教授は叫ぶ。睫毛がかすかに上がったが、顔面は1秒1秒と硬直し、動かなくなった。
★5b.フランスでは、二十世紀の半ばを過ぎてもなお、ギロチンによる処刑が行なわれていた。
『暗黒街のふたり』(ジョヴァンニ) ジーノは銀行強盗の主犯として逮捕され、10年の刑期を終えて出所した。保護司ジェルマンに見守られて、ジーノは更生への道を歩む。しかし警部ゴワトローは「ジーノはまた悪事をはたらく」と決めつけ、執拗に監視し、不当な理由で拘留する。ジーノは怒りを爆発させ、ゴワトローの首をしめて殺す。ジーノは裁判にかけられる。女性弁護士が「残虐なギロチンを使って、それで文明国と言えるのか」と陪審員たちに訴える。しかしジーノは、ギロチンで処刑された。
★6.銃殺刑。
『間諜X27』(スタンバーグ) 第1次大戦下。オーストリアの女スパイ「X27」は、敵国ロシアのスパイであるクラノウを愛してしまい、捕虜になった彼を逃がしてやる。そのため「X27」は、反逆者として銃殺刑を宣告される。兵たちに銃撃を号令する役目の若い将校が、「女を殺すなんて。これが戦争か。虐殺ではないか!」と叫ぶ。別の将校が銃撃命令を下し、「X27」は何発もの銃弾を浴びて倒れる。
*空砲による銃殺刑だったはずが、実弾が発射される→〔横恋慕〕2の『トスカ』(プッチーニ)。
★7.言葉による処刑。
『河童』(芥川龍之介)12 河童の国に滞在する「僕」は、河童の国の処刑について質問する。裁判官のペップが答える。「河童の国の処刑は文明的で、絞首刑などは行ないません。電気を用いることも、ほとんどありません。たいていは、犯罪の名を言って聞かせるだけです」。僕「それだけで河童は死ぬのですか?」。ペップ「死にますとも。我々河童の神経作用は、あなたがたのよりも微妙ですからね」。
『M』(ラング) 小学生の少女たちを何人も殺した男がいた。精神異常者ゆえ、逮捕されても施設に入れられ、恩赦によって何年か後にはまた社会へ出て来る可能性が高い。それでは納得できないという、町の労働者・浮浪者・前科者たちの集団が男を捕らえ、模擬裁判をして死刑の判決を下し、殺そうとする。その寸前に警官隊が踏み込み、法のもとに男を保護し、裁く。殺された少女の母親が「私たちの子供は生き返らない」と言う。
★9.処刑執行から絶命までの一瞬の間に、意識の中では長い時間が経過する。
『アウル・クリーク橋の一事件』(ビアス) 1人の男が橋上で絞首刑になる。身体が橋から落ちた時、首に巻かれた綱が切れて、彼は川に落ちる。彼は懸命に泳いで岸辺にたどり着き、そこから丸1日歩いて、妻の待つ家に帰る。妻を抱きしめようとした瞬間、彼は首筋に激しい打撃を感じ、一切が暗黒になった。橋の横木にぶら下がる彼の死体は、ゆるやかに揺れていた。
『隠れた奇跡』(ボルヘス) ヤロミール・フラディークは、ユダヤ人であるとの理由でゲシュタポに逮捕され、銃殺刑を宣告される。彼は、創作途中の詩劇『仇敵たち』を完成させるために、あと1年を与え給え、と神に祈る。神はその願いを聞き入れた。銃弾が発射されてから身体に届くまでに、彼の意識内では1年間が経過したのである。彼は頭の中で詩劇を完成させ、死んでいった。
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