処刑執行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 13:52 UTC 版)
「ベニート・ムッソリーニの死」の記事における「処刑執行」の解説
ムッソリーニとペタッチが死亡した状況について、ヴァルテル・アウディージオが語った証言は、(戦後いくつかの異説が唱えられてきたものの)少なくともその大枠においては依然として最も信憑性の高いものであり、イタリアでは公式な見解として扱われる場合もある。アウディージオの証言は、アルド・ランプレーディによる証言とも大枠で一致していた。1960年代にはベッリーニ・デッレ・ステッレ、ラッザロやジャーナリストのフランコ・バンディーニによる著作が出版され、これらはムッソリーニ処刑についての「古典的」な説明を提示した。それぞれの人物が語るムッソリーニの死の経緯は、細部に違いは見られるものの、重要な事実関係については共通していた。 1945年4月28日の早朝、ロンゴから下された命令を遂行するため、アウディージオとランプレーディはミラノを離れた。2人はドンゴに到着すると、地元パルチザンの団長ピエル・ルイジ・ベッリーニ・デッレ・ステッレと会見し、ムッソリーニを引き渡させるように話を取り決めた。この任務中、アウディージオは「ヴァレリオ大佐」との偽名を名乗っていた。午後になると、アウディージオはランプーレディやミケーレ・モレッティらの同志を引き連れてデ・マリアの農家まで車を走らせ、ムッソリーニとペタッチの身柄を引き取った。2人を車に乗せたあと、アウディージオらはジュリーノ・ディ・メッツェグラと呼ばれる集落へと向かった。車は細い道に面した「ベルモンテ荘」の入り口 (北緯45度58分52秒 東経9度12分13秒 / 北緯45.981221度 東経9.203558度 / 45.981221; 9.203558)で停止し、そこでムッソリーニとペタッチは車から降りるように指示され、塀の前に立たされた。その後、アウディージオは(自分の銃が故障していたため)モレッティから短機関銃を借り、午後4時10分にムッソリーニとペタッチを射殺した。 アウディージオの証言とランプレーディの証言にはいくつかの差異が存在する。アウディージオは、死の直前にムッソリーニが臆病に振る舞っていたと語るが、ランプレーディはそれを否定している。アウディージオはまた、処刑前に死刑判決を読み上げたと主張したが、ランプレーディの証言にそのような事実は含まれていない。他方、ランプレーディはムッソリーニの最期の言葉が「心臓を狙え」であったと語るが、アウディージオの証言におけるムッソリーニは処刑直前、処刑中に一切の言葉を発していない。 アウディージオの証言には、ラッザロやベッリーニ・デッレ・ステッレを含む他の関係者の証言とも食い違う部分がある。ベッリーニ・デッレ・ステッレの証言では、ドンゴでアウディージオとベッリーニ・デッレ・ステッレが会見した際、アウディージオは前日に囚われたファシスト党関係者の名簿を要求したあと、名簿上のムッソリーニとペタッチの名前に処刑対象であることを示すマークをつけた。ベッリーニ・デッレ・ステッレはペタッチが処刑対象とされたことに疑問を呈し、アウディージオに抗議した。それに対しアウディージオは、ペタッチがムッソリーニの相談役であったと語り、ムッソリーニの政策決定に影響を与えたために「ムッソリーニと同罪である」と述べた。ベッリーニ・デッレ・ステッレによれば、このやりとり以外に処刑についての議論や手続きは一切行われなかったという。一方、アウディージオは、1945年4月28日にドンゴでアウディージオを議長とする「戦争裁判」が開かれ、ランプレーディ、ベッリーニ・デッレ・ステッレ、モレッティ、ラッザロらが参加したと主張した。この裁判ではムッソリーニとペタッチに死刑が言い渡されたほか、全ての処刑が反対なしで可決されたという。のちにラッザロは、このような戦争裁判が開かれたことを否定した上で、次のように語った。 私は、ムッソリーニは死刑になるべきだと信じていた。……だがその前に、法にのっとった裁判にかけられるべきだった。あのように処刑するのはひどく野蛮だった。 アウディージオは1970年代に著した本の中で、ドンゴで4月28日に下されたパルチザン幹部によるムッソリーニ処刑の決定は、戦争裁判開催に関するCLNAI規則の第15項に準拠したものであり、正当な判決として認められると主張した。しかし、裁判長およびCLNAI規約が求める戦争委員(Commissario di Guerra)が裁判に不在だったことから、この主張には疑問が持たれている。
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