伝承の世界とは? わかりやすく解説

伝承の世界

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 14:01 UTC 版)

源義家」の記事における「伝承の世界」の解説

前九年の役の時、天喜5年11月数百死者出し大敗した黄海の戦いで、僅か六騎となって逃れたが、その戦いの中で「将軍長男義家驍勇絶倫にして、騎射すること神の如し。白刀を冒し重圍突き、賊の左右 に出でて、大鏃の箭を以て頻りに賊の師を射る。矢空しく発たず。中たる所必ず斃れぬ。如く奔り、風の如く飛び神武命世なり」。と『陸奥話記』にある。 同じ『陸奥話記』には、その後清原武則が「君が弓勢を試さんと欲す。いかに」と問うと、義家は「善し」と。そこで武則は「堅き甲(かぶと:と読むが鎧のことか)三領重ねて、これを懸る義家一発にて甲三領を貫かせしむ」。武則大い驚いて「これ神明変化なり。あに凡人堪える所ならんや。宜し武士の為に帰伏する所、かくの如し」と語ったという逸話がも残る。 義家2歳時に用いた源太が産衣」という鎧と、生け捕った敵千人の首を髭ごと切ったことから「髭切」と名付けられた刀は、河内源氏嫡子伝えられる宝となり、後の平治の乱では源頼朝用いたという逸話鎌倉時代初期の『平治物語』にある。これは源頼朝源氏嫡流であると印象づけるための創作といわれている。 鎌倉時代中期説話集古今著聞集』には前九年の役の後、捕虜となった後、家来とした(事実ではないが)安倍宗任との話がいくつかあり、射芸秀で、意味もなく動物殺そうとしない優しさ、更に射た矢を取ってきたかつての敵・宗任に背中を向け背負った矢入れ入れさせた剛胆さ、更には神通力まで備えた超人的な武士として描かれている。 しかしその一方では以下のような伝承残されている。 京の義家屋敷近所の者が、ある夜に義家が鬼に引きずられて門を出て行く夢を見た。そこで義家屋敷を覗うと、屋敷の中では義家死んだ大騒ぎになっていた。あれは義家地獄に引きずられていくところだったに違いない。 父頼義も殺生罪人で、本来なら地獄堕ちるべき人間である。前九年の役切り落とした首は1万八千、その片耳取り集めて、乾して皮古二合に入て上洛した。しかし、後年仏門に入って、その耳を堂(京・六条坊門北の耳納堂)の土壇の下に埋めて弔い自分殺生悔いたために最後成仏できた。しかし義家は罪も無い人を沢山殺して、それを悔いるところも無かったので無限地獄へ堕ちた。(『古事談』) 今様狂い後白河法皇編纂した『梁塵秘抄』巻第二にある「棲む深山には、概ての棲むものか、同じき源氏申せども、八幡太郎恐ろしや」はそのような言い伝え反映しているものと思われる。 それらの伝承平安時代末期から鎌倉時代初期にかけてのものであるが、同時代藤原宗忠その日記『中右記』に「故義家朝臣年来武者長者として多く無罪の人を殺すと云々積悪余り遂に子孫に及ぶか」と記したことも合わせ考えると、それらの説話個々には事実ではあり得ないが、当時の京の人間義家観として、義家実像一面伝えているようにもとれる。 後三年の役私戦とされて恩賞が出なかったため、義家河内石川荘の自分私財投じて部下将士報奨与え武家の棟梁としての信望高めたといわれる。ただし平安時代末期の『奥州後三年記』にはその記述はない。後世では、東国における武門習い義家整備したといわれ、その名声武門の棟梁としての血脈としての評価を一層高めることとなったというのは、主に南北朝時代の末に、義家の子孫である足利幕府正統性をうたう為に書かれた『源威集』にある「諸家輩、源家将軍代々仁王ト奉仰ハ此故也」からの派生義家名声恐れた白河法皇や、摂関家陰謀によって河内源氏凋落していったとされるのは主に戦後である。現在研究者の間では本稿紹介したような見直しが行われているが、その陰謀説いまだに非常に根強い今川貞世(了俊)の『難太平記によれば義家は「われ七代の孫に生まれ代わり天下を取るべし」という遺言残し義家から七代目にあたる足利家時は、自分の代では達成できないため、三代の子孫に天下取らせよ祈願し願文残して自害したと言われ、了俊自身もその願文見た記している。かつては、貞世の証言鵜呑みにし、足利尊氏北条氏打倒後醍醐天皇打倒立ち上がったのは、家時から三代の子孫としてそれを見せられたという説があった。しかし、20世紀半ば以降、この説はほとんど支持されていない。家時の置文実在し尊氏の弟の直義がそれを見たことは直義書状から確実であるが、それは後醍醐天皇との対決から15年後のことであり、尊氏挙兵の動機としては考えにくい。それどころか、「足利氏源氏嫡流である」という認識そのもの室町幕府成立後創作されたものであり、貞世の語る義家・家時の伝説もその源氏嫡流工作一つであるという。詳細足利尊氏#置文伝説参照

※この「伝承の世界」の解説は、「源義家」の解説の一部です。
「伝承の世界」を含む「源義家」の記事については、「源義家」の概要を参照ください。

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