かすい‐たい【下垂体】
脳下垂体
下垂体
脳下垂体
脳: | |
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脳下垂体 | |
名称 | |
英語 | Pituitary gland |
ラテン語 | hypophysis, glandula, pituitaria |
略号 | Pit, Hp |
関連構造 | |
上位構造 | 内分泌器 |
構成要素 |
脳下垂体前葉 脳下垂体中葉 脳下垂体後葉 |
動脈 |
上下垂体動脈 下下垂体動脈 |
画像 | |
アナトモグラフィー | 三次元CG |
関連情報 | |
Brede Database | 階層関係、座標情報 |
NeuroNames | 関連情報一覧 |
NIF | 総合検索 |
MeSH | Pituitary+Gland |
グレイ解剖学 | 書籍中の説明(英語) |
脳下垂体(のうかすいたい)または下垂体(かすいたい)は、脊椎動物の体に存在する内分泌器官の1つである。脳に接して、脳の直下(腹側)に存在し、脳の一部がぶら下がっているように見えることからこの名がある。
解剖学
脳下垂体は、脳とともに硬膜に包まれており、脳の腹側に接している。視交叉の後方、間脳の視床下部に接する位置にある。下側は、頭蓋骨の蝶形骨に接する。ヒトなどの蝶形骨には、脳下垂体がちょうどはまり込むようなくぼみがあり、トルコ鞍と呼ばれる。内分泌器官である下垂体は、血管が発達しており、分泌されたホルモンが効率よく血流に乗って全身に運ばれる仕組みになっている。脳下垂体前葉のホルモンの分泌を調節するホルモンは、視床下部から分泌されており、脳下垂体を通る血管のうちの一部は、視床下部を経由してから脳下垂体に入るため、視床下部の分泌調節ホルモンの刺激が効率よく脳下垂体前葉に伝わるようになっている。一方、脳下垂体後葉ホルモンは、視床下部の神経細胞で産生され、神経細胞の軸索をとおして運ばれる。この軸索は視床下部から脳下垂体後葉にまで達しており、ここで血管に放出される。
構造
脳下垂体を、大きく2つの部分に分けることができる。主に前下方にある部分は、腺性下垂体(脳下垂体腺葉)と呼ばれ、発生過程で口蓋の上皮が増殖してできた、ラトケ嚢と呼ばれる袋状のくぼみに由来する上皮性細胞塊からなる。
一方、主に後上方にある部分は神経性下垂体(脳下垂体神経葉または後葉)と呼ばれ、脳の間脳が発生過程で伸びてきて形成される部分である。腺性下垂体は、更に2つに分けられ、神経葉に接する薄い部分を、下垂体中葉または中間部、それ以外を前葉と呼ぶ。こうして分けられた3つの部分からは異なったホルモンが分泌される。
前葉からは、副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン、ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(サイロトロピン、TSH)、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)、成長ホルモン(GH)、プロラクチンなど、他の内分泌器官の機能を左右し、そこからのホルモンの分泌を調節する多種のホルモン(動物種によって違いがある)が分泌される。中葉からは、メラニン細胞刺激ホルモン(メラノトロピン、MSH)。神経葉からは、抗利尿ホルモン(バソプレシン)や、オキシトシンが分泌される。
分泌するホルモン
- 前葉
- 中葉
- MSH (メラニン細胞刺激ホルモン,melanocyte-stimulating hormone) Caw1
- 後葉
前葉
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と略すと、視床下部、脳下垂体前葉、標的臓器、から分泌されるホルモンは表.1の様になる。
表.1 視床下部、脳下垂体前葉、標的臓器、から分泌されるホルモン | ||||||||||||
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視床下部 | GHRH | SS | TRH | PRF | PIF | CRH | GnRH | |||||
↓ | ↓ | ⊥ | ⊥ | ↓ | ↓ | ↓ | ⊥ | ↓ | ↓ | ↓ | ||
脳下垂体前葉 | GH | TSH | PRL | ACTH | LH | FSH | ||||||
↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ||||
標的臓器 | (-) | T3,T4 | (-) | コルチコステロイド | アンドロゲン | P | E |
過労による影響
脳下垂体は過労によって異常をきたすことが示唆されている。これはラットでの実験結果だが、一定期間にわたって疲労ストレスをラットにかけ続けたところ、脳下垂体の様々な場所で機能異常が生じていた上に、脳下垂体の中葉においては細胞が死んでいるのが観察された[1]。なお、3日間程度での疲労ストレスをラットにかけ続けただけの場合に細胞死こそ見られなかったものの、脳下垂体の機能異常はすでに生じていたことも観察された[1]。
参考画像
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脳下垂体
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鼻道と蝶形骨洞と脳下垂体の位置関係
-
脳下垂体の血管走行
出典
関連項目
下垂体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/23 00:05 UTC 版)
また、哺乳類、鳥類ともに下垂体は大きく、下垂体腺葉(かすいたいせんよう; または腺(性)下垂体、せん(せい)かすいたい、adenohypophysis)および下垂体神経葉(かすいたいしんけいよう; または神経(性)下垂体、しんけい(せい)かすいたい、neurohypophysis)に分けられる。これらは発生学的に全く起源が異なり、前者は発生初期に現れる口窩(口蓋)の上皮が間脳底に向かって嚢状に突出し、後に離れたものであるラトケ嚢であるのに対し、後者は間脳壁から出た漏斗突起に由来する。また、下垂体腺葉は中葉(ちゅうよう、intermediate lobe、pars intermedia; 中間部)、隆起葉(りゅうきよう、pars tuberalis; 隆起部、りゅうきぶ; 結節部、けっせつぶ)、主葉(しゅよう、distal lobe、pars distalis; 主部、しゅぶ; 末端部、まったんぶ)の3部からなり、下垂体神経葉は正中隆起(せいちゅうりゅうき、median eminence、eminentia mediana; 正中隆起部)および神経葉(しんけいよう、neural lobe、pars nevrosa; 漏斗突起、ろうととっき、proc. infundibuli)の2つに分けられる。下垂体腺葉は(下垂体)前葉((かすいたい)ぜんよう、anterior lobe, lobus anterior)、下垂体神経葉は(下垂体)後葉((かすいたい)こうよう、posterior lobe, lobus posterior)と呼ばれることもあるが、隆起葉と主葉を合わせて前葉、中葉と神経葉を合わせて後葉とすることもある上、主葉のみを前葉、神経葉(漏斗突起)のみを後葉とすることもある。 鳥類では中葉がなく、下垂体腺葉は頭部と尾部に分けられる。魚類では前葉が吻部および基部に分けられ、隆起葉を欠く。うち真骨魚類はかつて下垂体腺葉に入り込む神経全体を神経葉と呼んだが、現在ではこのうち前方部を正中隆起の相同部とし、後方を神経葉とする。円口類では脳底の前方部が正中隆起、広報部が神経葉に相当する。また、板鰓類は(下垂体)腹葉(かすいたいふくよう、ventral lobe of hypophysis)が下方に発達する。下垂体腹葉は下垂体の後部が下方に細長く突出し、その先端が嚢状の構造をなして広がった領域のことを指す。下垂体腹葉は板鰓類でのみに発達し、下垂体隆起部と相同であると考えられる。全頭類には同様の構造として下垂体主葉の前方に独立した口蓋葉(こうがいよう、独: Rachendachhypophyse)が存在する。 下垂体の区分下垂体 下垂体腺葉(腺下垂体・腺性下垂体)(下垂体前葉) 主葉(主部・前葉) 前葉 隆起葉(隆起部・結節部) 中葉(中間部) 後葉 下垂体神経葉(神経下垂体・神経性下垂体)(下垂体後葉) 神経葉(神経部・漏斗突起)(後葉) 漏斗茎 漏斗 正中隆起(正中隆起部)
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「下垂体」の例文・使い方・用例・文例
- 脳下垂体を削除する
- 下垂体腺の外科的な切除
- 下垂体の、または、下垂体に関する
- 脳下垂体の関する、またはそれの
- 下垂体ホルモン
- 手術で取り除かれた脳下垂体を持つ
- 脳下垂体除去されたオタマジャクシ
- 体の様々な漏斗形の部分のいづれか(特に下垂体茎)
- 副腎皮質を刺激する脳下垂体前葉によって作り出されるホルモン
- 脳下垂体前葉と胎盤によって分泌されるホルモン
- 下垂体後葉によって分泌されたホルモン(商標名ピトシン)
- それらが前方の脳下垂体ホルモンのリリースを刺激する脳下垂体前葉まで視床下部で作り出されて、静脈によって運ばれた数個のホルモンのいずれも
- 脳下垂体前葉によって作り出されるホルモン
- 後部の脳下垂体によって、およびさらに視床下部中の神経終末によって分泌されたホルモン(商標名ピトレシン)
- 内分泌系の脳下垂体
- 下垂体を視床下部に接続している漏斗形軸
- 下垂体の前葉
- 下垂体前葉の前部
- 下垂体後葉の部分になる組織の薄い片
- 下垂体の後葉
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