ムコ多糖症の病型とは? わかりやすく解説

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ムコ多糖症の病型

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/27 03:46 UTC 版)

ムコ多糖症」の記事における「ムコ多糖症の病型」の解説

ムコ多糖症は以下のようにI型IX型の病型分けられている。医療者向け資料などではMPSという略称で使う事が多いようで、例えムコ多糖症I型場合MPS I表記する。なお、以下の記述中のオーストラリアでの発症率はMeikleらの論文よる。ただし、発症例各病型数十程度しか存在しないため、統計的誤差多分に含んでいると考えられる点に注意されたいMPS Iリソソーム酵素であるα-L-イズロニダーゼは、GAG一種であるデルマタン硫酸ヘパラン硫酸のα-L-イズロン酸加水分解する酵素であり、MPS I患者においては常染色体劣性遺伝により先天的に欠損している。本酵素欠損によりリソソーム中にデルマタン硫酸ヘパラン硫酸蓄積することにより、MPS I患者においては慢性かつ進行性の、多様な症状を示す。MPS Iはさらに重症型のMPS I H型ハーラー症候群; Hurler syndrome)、中間型MPS I H-S型(ハーラー-シャイエ症候群; Hurler-Scheie syndrome)および軽症型のMPS IS型(シャイエ症候群; Scheie syndrome)に分類されるオーストラリアでの発症率148,000人に1人である。 1994年組換えα-L-イズロニダーゼのCHO細胞内での過剰発現系が構築されまた、1997年にはα-L-イズロニダーゼ欠損マウス作成により本病態モデル動物作成された。2001年には酵素補充療法によるMPS I臨床試験結果発表され実際患者10名)への本酵素補充により肝脾腫縮小身長と体重増加、肩と肘関節動き改善睡眠時無呼吸頻度低下心不全状態の改善といった効果認められた。一方半数(5名)の患者アレルギー症状である蕁麻疹発生しまた、ほぼ半数(4名)の患者中和抗体認められ一定の副作用観察されたことも事実である。本はGenzymeによりAldurazymeとして製剤化され、アメリカ合衆国EUでは2003年承認された。また日本においてもアウドラザイム(一般名:ラロニダーゼ(遺伝子組換え))という商品名2006年製造販売承認された。本製剤を週1回点滴静脈投与することによりMPS I患者不足している酵素外的に補充することで、MPS I患者有する特有の症状改善寄与する。ただし、タンパク質一般に血液脳関門通過できないため、中枢神経症状対す有効性認められていないことに注意が必要である。なお、動物実験ではあるがくも膜下腔投与を行うことにより、中枢神経症状改善見られることが報告されており、血液脳関門中枢神経側に安全に投与する技術開発され場合ムコ多糖症による中枢神経症状改善される可能性がある。 MPS II型MPS II型ハンター症候群; Hunter syndrome)はCharles A. Hunter1873年-1955年)によりはじめて報告され疾患であり、イズロン酸-2-スルファターゼ先天的欠損によりGAG分解ができずに細胞内のリソソーム蓄積することにより引き起こされるのである。本タンパク質ゲノム上でX染色体上に位置しており、従って本疾患性染色体劣性遺伝による遺伝性代謝異常症である。 本疾患有している新生児は、出生した時点では他の新生児外見上の違い見られないが、成長に伴い騒音呼吸初発症状として気道感染肝脾腫経て、1~2歳ごろから特徴的な身体機能特徴的な顔貌、骨変化角膜混濁関節可動性低下)や精神発達遅滞観察される。本疾患進行性のものであり、重症場合成人することなく死亡する。しかし、循環器系問題有しない場合若年致死することは少なく軽症場合精神発達遅滞見られないこともある。尿中ムコ多糖であるデルマタン硫酸ヘパラン硫酸多量に排泄されることも知られている。 MPS II日本における本疾患約半分占めており、日本における患者数120~140人とされている。またオーストラリアにおいては136,000人に1人新生児が本疾患発する前述通り疾患進行性のものであるため、可能な限り早期鑑別し、早期治療開始する必要があった。しかしながら従来骨髄移植対症療法しか治療法選択肢がなく、文字通り難病である。 前述通り、本疾患1917年Hunterにより報告されその後の研究により、患者らは何らかの酵素欠損していることが明らかとなったが、永年その原因不明であった。しかし、1973年Bachらにより患者らが欠損している酵素イズロン酸-2-スルファターゼであることが明らかとなり、さらに1990年にはWilsonらにより本酵素クローニングされ、遺伝子配列が明らかとなったことにより、この遺伝病への治療の道が拓かれた。2006年、2007年には本酵素用いた酵素補充療法臨床試験結果報告された。患者において6分間歩行試験での歩行距離延長及び尿中GAG排泄量減少観察され、本療法有効性証明された。本酵素はElapraseとして米国及び欧州ではShireにより発売され日本においてもエラプレース(一般名:イデュルスルファーゼ遺伝子組換え))という商品名2007年製造販売承認された。本酵素を週1回点滴静脈内投与することによりイズロン酸-2-スルファターゼ体内補充しリソソーム中に蓄積したGAG分解し症状の進行遅らせることが可能となった。ただし、タンパク質血液脳関門通過できないため、中枢神経症状対す有効性認められていないことに注意が必要である。 MPS III型 - サンフィリッポ症候群 (Sanfilippo syndrome)1963年にSanfillipoらがヘパラン硫酸尿と知能障害特徴とする症例発表したのが疾患名の由来である。蓄積するGAGヘパラン硫酸で、尿中への大量排泄認められるが、高値示さない場合もあるので尿中GAG定性分析による確認が必要である。 MPS III欠損酵素違いによりMPS III-A型~III-D型の4つ亜型分類されるが、臨床症状ほとんど同じである欠損酵素はIII-A型:ヘパラン N-スルファターゼ、III-B型:α-N-アセチルグルコサミニダーゼ、III-C型:アセチルCoA α-グルコサミニド N-アセチルトランスフェラーゼ、III-D型:N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ)。遺伝形式常染色体劣性遺伝である。日本MPS III患者数は、衛藤班による平成13年全国調査では19であったオーストラリアでの発症率はIII-A、III-B、III-C及びIII-D型がそれぞれ169,000230,000、593,000、514,000人に1人重度精神発達遅滞アルツハイマーの様な知能記憶障害特徴的な容貌主が主症状であり、骨・関節異常や肝脾腫といった症状軽度である。4~5歳頃から睡眠障害精神運動発達遅滞現れ多く場合多動かつ攻撃的である。症状進行するにつれ興奮性強くなり、けいれん発作合併することも多い。運動機能末期まで保たれることが多いが次第歩行困難をきたし、最終的に歩行不能、要重介護態となる。寿命概ね20歳代である。 MPS III中枢神経系症状主徴であるため骨髄移植などの効果期待し難く、その治療対症療法限られている。 MPS IV型 - モルキオ症候群 (Morquio syndrome)1929年にMorquioら及びBrailsfordららにより各々独立詳細な報告なされた疾患である。後年尿中GAG一種であるケラタン硫酸排泄報告されムコ多糖症であることが明らかとなった欠損酵素違いによりMPS IV-A型MPS IV-B型亜型があるが、圧倒的にIV-A型のほうが多い(欠損酵素IV-A型N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(GALNS)、IV-B型β-ガラクトシダーゼ)。遺伝形式常染色体劣性遺伝である。日本MPS IV患者数は、衛藤班による平成13年全国調査では32であったオーストラリアでの発症率IV-A型206,000人に1人。 骨及び関節障害特徴的で、ムコ多糖症中でも最も強い骨変形を示す。MPS IV-A重症型の場合出生直後から胸腰椎の後・側湾、胸骨突出といった変形認められる幼児期以降、短胴性の低身長股関節などの形成不全を伴う四肢変形脊椎側湾症/後湾症、環軸椎脱臼といった骨変形症状著しくなる。特に環軸椎脱臼生命予後直接影響するので管理が重要である。関節障害は他のムコ多糖症異なり関節の過伸展靭帯弛緩により不安定性をきたすのが特徴である。そのほか臨床症状としては角膜混濁難聴心臓弁膜症みられる。なお、精神発達遅滞はなく知能は正常である。無治療の場合10歳後半に環軸椎脱臼に伴う呼吸不全などで死亡することが多い。軽症型の場合でも同様の症状認められるが、その程度軽度進行比較的に序であり、成人以降まで生存することが多い。 MPS IV-B型症状IV-A型場合と同じであるが、比較的に軽度IV-A軽症型に近い。生命予後良いといわれている。 MPS IV治療骨髄移植術の効果乏しいため、対症療法中心である。現在のところ、酵素補充療法薬剤承認されていないMPS VI型 - マロトー・ラミー症候群 (Maroteaux-Lamy syndrome)1963年にMaroteauxら、及び1965年にMaroteauxとLamyが、尿中大量デルマタン硫酸排泄認め兄妹例を報告したことが疾患名の由来である。 MPS VI乳児期から症状現れ急速に進行する重症型をMPS VI-A型(急速進行型)、緩徐進行する軽症型をMPS VI-B型(緩徐進行型)と分類することがあるが、いずれも欠損酵素はN-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼで、症状の進行度の相違のみに基づく分類であり、基本的に同じ病態である。責任酵素遺伝子座は5q13.3で遺伝形式常染色体劣性遺伝である。日本MPS IV患者数は、衛藤班による平成13年全国調査では5例で、ムコ多糖症中でも少な部類に入るが、ブラジルでは100例以上の患者同定されており地域的な偏りがある。オーストラリアでの発症率242,000人に1人。 急速進行MPS VI臨床症状Hurler症候群(重症型のMPS I)と類似しているが、基本的に精神遅滞はなく知能は正常であるのが特徴である。出生直後から特有顔貌水頭症胸骨などの形態異常が認められ、5~7歳頃には成長止まるため著し低身長となる。また気道感染(風邪)を繰り返しやすい。疾患進行につれて重度関節拘縮に伴う運動制限、強い骨変形角膜混濁視力障害滲出性中耳炎難聴肝脾腫、臍・鼠径ヘルニア気道狭窄に伴う呼吸困難睡眠時無呼吸心臓弁膜症手根管症候群などの神経症状といった種々の障害をきたす。無治療の場合10歳後半から20歳前半心不全肺炎などに伴う呼吸不全死亡することが多い。 緩徐進行型でも手指運動制限手根管症候群といった症状認められるが、青年期以降まで症状現れずに成人することもある。しかしながら末期には顕著な消耗性症状をきたすことが多い。寿命概ね40歳代だが、50以降まで生存した例もある。 MPS VII型 - スライ病スライ症候群 (Sly syndrome)オーストラリアでの発症率726,000人に1人 MPS IX全世界で数例の患者報告されているのみ なお、MPS V(5型)とMPS VIII(8型)は欠番である。

※この「ムコ多糖症の病型」の解説は、「ムコ多糖症」の解説の一部です。
「ムコ多糖症の病型」を含む「ムコ多糖症」の記事については、「ムコ多糖症」の概要を参照ください。

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