バルーンの用途
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/22 21:46 UTC 版)
日本ではゴム風船は玩具店をはじめ、百貨店・スーパーマーケットからコンビニエンスストアまでの幅広い分野の小売店の玩具・文房具・バラエティグッズ売場などで市販されているが、マイラーバルーンや、バルーンアート用途や縁日などで多用されるゴム風船は、バルーンショップなどの専門店でないと入手できないことが多く、インターネットによる通信販売が専門店により行われていることが多い。風船は玩具として、手でついたり、屋内で飛ばしたりして遊ぶ用途のほか、以下のような目的でも用いられている。 販促・サービス用途 空気を入れた風船は販売店の装飾用途のほか、公共のイベントやスーパーマーケットや家電量販店などで風船プラ棒やバルーンスティックなどのプラスチック製の棒を付けたゴム風船は販売には用いられず、販促グッズとして配布されることが多い。一方で、富山の薬売りなどの配置薬の行商では子供に紙やゴムの風船がおまけのサービスとして配られた。 バルーンアート・バルーンデコレーション 日本ではツイストバルーンに代表されるバルーンアートが普及している。 また16インチ程度の透明なゴム風船の中にぬいぐるみなどの角のない物をクラッシーラップ(Classy wrap)などのラッピング装置で封入するバルーンラッピングという包装形態もプレゼントの装飾などに使われる。 このほかイベント会場の装飾用の一手法であるバルーン装飾(バルーンデコレーション)では、複数のバルーンを組み合わせるクラスターバルーンの手法としてゴム風船を4個組み合わせた4つ玉クラスターを基本に、それを3セット組み合わせて1つのかたまりにしたビーハイブや、4つ玉クラスターを規則正しく多数配置し作られるバルーンオブジェとしてバルーンアーチやバルーンポール、テグスに同様に多数配列したバルーンモール、風船を壁面に規則正しく配列したバルーンウォールなども使われる。 多くのバルーンでできた大きなキャラクターオブジェも丈夫な針金で骨組みを作り、大量のクラスターバルーンを取り付ければ製作は可能だが、滞りなく製作できるようになるためには多くの経験が必要である。 パレードの行進で走行する車両にまんべんなくバルーンデコレーションを施した山車はバルーンフロート、ヘリウムガスで浮かせた巨大な人気キャラクターをかたどった係留気球の手綱を多数の参加者が持ちながら行進するイベントはバルーンパレードといわれる。 ゴム風船によるバルーンデコレーションは屋外の直射日光や通風の多い場所など周囲の環境によっては半日であっても表面のつやを失いくすんでくるが、風船用つや出し剤のバルーンシャイン(Balloon shine)の使用により従来より長く風船のつやや発色を保つことができる。また数ヶ月程度の長期の展示用にはデコバルーンが用いられる。 バルーンアトラクション バルーンを使い人々の心を引きつける特殊効果として、コンサートなどでは天井から観客席に大量に風船を降らせるバルーンドロップや巨大バルーン投入などのイベントの演出に使われている。また結婚式や祝祭イベントでは、くす玉代わりに使われるスパークバルーンや風船の中から人が登場するビッグバルーン(エアロバルーン)などの派手なバルーン演出がバルーンデコレーションと共に使われることも多い。 屋外では風船飛ばし(バルーンリリース)をはじめ、各種の係留気球やインフレータブルバルーンはイベント会場の雰囲気を盛り上げ、ふわふわなどのトランポリン遊具は子供に大人気である。また日本では多くないが、巨大な係留気球で人が浮揚するジャンピングバルーンや大量のバルーンで人が浮揚するクラスターバルーニング(Cluster ballooning)が行われることがある。 常設的なアトラクションとしては、ショッピングセンターなどの室内遊園地で、仕切られたスペースにたくさんの風船を舞わせるバルーン遊戯施設が日本国内に相次いで登場している。 風船ゲーム・科学実験 膨らましたゴム風船はゴム膜が伸びるエントロピー弾性によりエネルギーを蓄積することから、空気が抜けるときに物を動かす運動エネルギーを放出し、膨らましすぎたり押しつぶしたり、鋭利な物を刺してゴム膜が破れると割れて発音する一方、浮揚ガスを入れれば浮き、空気を入れれば風に翻弄され自由落下に反しゆっくり不規則に落ちたり、静電気を帯電しやすいなどゴム風船には多くの独特の特性を持つことから、コンピュータゲームを含め、風船を使うゲームのバリエーションは数多く(風船バレーや風船割りの項目も参照)、ニュースポーツのキンボールで使われる巨大で軽い布ボールの中にも空気を入れた大型のゴム風船が使われている。 一方それらの特性を生かした科学実験の動力源や実証実験の素材としてもよく用いられ、その一環で天然ゴム製品がゴム溶剤に溶けることを利用した柑橘系植物から抽出した天然溶剤リモネンで風船を割る実験や、CDのディスクにゴム風船を付けて遊ぶ風船ホバークラフトの実験工作も知られるようになった。 また化学実験では実験容器内を不活性ガスで置換する際の供給側ガス袋にも使われる。ゴム風船の内圧は大気圧(1atm=1013.25hPa)に加えゴム膜の縮む力により15 - 30hPa程度加圧されているが、風船の種類やゴム膜の伸び具合によっても大きく変化する。 そのほか黒いビニール袋を貼り合わせて作った巨大なバルーンに空気を入れ太陽熱で浮力を生み出すソーラーバルーン(太陽熱気球)は大型の科学実験の一つとして知られるほか、農業用ビニールシートを貼り合わせて作られた巨大バルーンに送風機で常時空気を入れて使われるシーバルク(Seabulk)は、子供達が中に入り遊ぶ遊具として児童福祉系のイベントに使われることがある。 バルーンマジック ゴム風船を使った手品の総称。はさみで切ったゴム風船が元に戻る復活芸をはじめ、二重に入れた色違いのゴム風船に針を刺して割る色の変わる風船や、グラスなどに置いた風船が突然割れる手品や、針を突き刺しても割れない風船の手品、膨らました風船の中にコインを入れる手品、風船を割るとハトやワインボトルが出る手品、ツイストバルーンを飲み込んだように見せるバルーンドリンキングなど多くのバリエーションがある。 医療用途 医療ではカテーテルに特殊な微細のバルーンを付けたバルーンカテーテルにより大切開が不要な多部位の治療が多く行われている。また滲出性中耳炎の治療やダイビング初心者の耳抜き練習に鼻の片方をふさぎ、もう片方でゴム風船を膨らませるオトヴェント(OTOVENT)と呼ばれる自己耳管通気治療も行われている。富士山7合目の山小屋「大陽館」では高山病治療のために意識的に腹式呼吸を行うためにゴム風船を膨らませる風船治療が行われているという。そのほか過去にはゴム風船による風船ダイエットが痩身法の一つとして注目されたこともあった。 プロパガンダ 風船に政治宣伝や体制批判を目的としたビラ等をつけて飛ばす手法で、対立する国や地域へのプロパガンダが行われることがある。1960年代には日本の八重山諸島に毛沢東語録をくくりつけた風船がしばしば飛来。中国大陸から台湾へ向けた政治工作が行われていたと見られた。また、2020年までは韓国から北朝鮮に向けて体制批判のビラを載せた風船を飛ばす行為が行われていたが、北朝鮮側からの度重なる抗議や韓国国会で禁止法が成立したこともあり下火となった。 目的外用途の利用 ゴム風船に小麦粉などの粉体を入れて使うことがある。元々のゴム風船の大きさに小麦粉を入れた物は、独特の感触を楽しむことのできる小麦粉ふうせんといわれる手作り玩具になるが、粉を入れて膨らました物を割る行為は、テレビ番組の被害者となる出演者へのいたずら目的や罰ゲーム用の演出となる場合が多い。 罰ゲーム用の演出としては、この他に、ヘリウムや窒素ガスにホースをつなぎ、その先に風船をつけて体につけたり服の中に入れて割ったりするものもある。千丸などの巨大風船が使われると、衣服からはみ出して膨らんだり、衣服が避けることもあり、そういう演出をする場合もある。ただしこれらの場合皮膚に密着したり体に近かったりするため、ゴム風船が割れたときにゴム片が当たって痛みを生じたり、場合によってはミミズ腫れが起こることがある。 また膨らましたゴム風船やアドバルーンが各種立体物(球体の氷、ピニャータ、お面、バルーンシェード、かまくらの室など)の造型の際の型枠として使われる。 そのほか超人の呼吸器官の強靱さを誇示したり、大道芸のパフォーマンスの目的で、ゴム製の袋状製品(氷枕、ゴム手袋、医療用使い捨てゴム手袋など)を息で破裂するまで膨らませる行為が行われることもある。 葬儀では自然葬の散骨法のひとつで、バルーン葬という遺灰をガス風船に入れて飛ばし、上空で破裂させて散骨するものがある。 スポーツの応援で拍子木代わりに使うチアスティックという細長い風船が存在する。
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