オゾン‐ホール【ozone hole】
読み方:おぞんほーる
オゾン層の濃度が、南極大陸や北極圏の上空で春(南極は9〜10月、北極は3〜4月)に急激に下がり、穴があいたようになる現象。また、その部分。オゾン分子を破壊することによって起こり、地球温暖化をもたらし、皮膚癌(ひふがん)を引き起こす。原因は、大気中に放出されたフロンガスが有力とされる。
[補説] オゾンホールは1980年代に南極大陸の上空で初めて確認された。北極は、海陸の分布が複雑なため成層圏の気温が南極よりも高く、オゾン層の破壊に密接にかかわる極成層圏雲が発達しにくいことから、大規模なオゾンホールは観察されなかったが、2011年、北極圏上空でも南極に匹敵する規模のオゾンホールの存在が確認された。
オゾンホール
オゾンが極端に薄くなったところをいいます。地表から20~25km上空の成層圏内に,高い濃度のオゾンが層をなしています。このオゾン層は,太陽からの有害な紫外線を吸収する役割を果たしています。人間が紫外線を大量に被曝すると,細胞や遺伝子が傷つくことから,地上に住めなくなります。その貴重なオゾン層がフロンガスなどによって破壊が進行しており,とくに北極・南極という地球の両極に,オゾンが極端に薄いオゾンホールが出現しています。オゾンホール
成層圏のオゾン層に生じるオゾン濃度が激減して、孔状を呈する部分をいう。オゾン層は、地表から約10~50kmの成層圏にある比較的オゾン濃度の高い領域をいい、太陽からの有害な紫外線の大部分を吸収し、人体や生態系を守る重要な役割を果たしている。1980年代初頭ごろから、9月から11月にかけて南極上空でオゾンホールの現象が現れるようになり、92年以降は大規模なものとなっている。近年は北極や中緯度地域でも生じており人体や生態系への影響が懸念されている。このオゾン層の破壊は冷蔵庫、エアコンの冷媒、スプレーなどのフッ素化合物(総称フロン)が使用後大気中に放出され、成層圏に到達して太陽光により分解される際に生ずる塩素原子によって起こされる。フロンを規制するため1987年に採択されたモントリオール議定書に基づき、日本でも88年に「オゾン層の保護に関する法律」が制定されている。
オゾンホール
オゾンホールの存続が過去最高に
南極のオゾンホールは、毎年8月ごろ発達し12月の中旬ごろに消滅するのが普通ですが、1999年は、12月下旬まで持続し、観測史上最も遅い記録となりました。気象庁の分析によると、1999年は8月中旬ごろから発達し、9月に最盛期を迎えて、その大きさは約2,500万km2に達しました。これは観測史上3番目の大きさで、南極大陸の約1.8倍に相当します。その後徐々に縮小をはじめ、12月14日にはいったん消滅しましたが、3日後の17日に再び出現し、最後に消滅したのは、結局12月の26日でした。過去にも復活したケースはありましたが、数日間で消滅するのが通例で、このように10日間も続くのは初めてのケースでした。
アメリカの観測衛星「TOMS」がとらえた1999年9月15日のオゾンホール(左)とオゾンホールがいったん消滅した12月14日の画像(右)
オゾンの薄い大気が流れこんだのが原因か
オゾン層は、有害な紫外線から地上の生物を守る働きをしていますが、フロンの分解でできる塩素などによって破壊され、それが大きな穴となってオゾンホールとなります。このオゾン層の破壊は、温度と密接な関係があるといわれ、南極上空の気温が低下しはじめると出現し、気温が上昇すると消滅する傾向があります。フロンによってオゾン層の破壊量が多ければ、それが気温を低下させて、さらにオゾン層の破壊を促進するともいわれています。また、地球が温暖化すると成層圏の温度は反対に低くなり、これがオゾン層の回復をおそくするという説もあります。1999年は、これに加え対流圏からオゾンの薄い大気が成層圏にたくさん流れこんだことにより消滅次期が遅れたのではないかと考えられています。
オゾンホール
オゾンホール
オゾンホール
人類の生存に紫外線は必要であるが(Vit Dの合成など)、過剰な紫外線への暴露は皮膚ガン、白内障等の健康上の悪影響を与える。地球上では、大気中のオゾン(O3)が紫外線を吸収するために、地上に到達する紫外線の量が減衰して、生物の生存に適した量になっている。
冷蔵庫の冷媒として使われていたフロンガスは、化学的に安定しているという利点を有するが、いったん大気中に放出された場合には、分解されず大気中に残り上空に拡散する。その結果、成層圏においてフロンガスが紫外線と反応を起こし、上空のオゾンが分解され、大気中のオゾン層が破壊されるという現象が生じる。南極大陸上空で、オゾン層が破壊されオゾン濃度の低下した地域の人工衛星の画像では大きな穴のように見えることから、オゾンホールと命名されている。
南極域の春季に発生するオゾンホールに顕著に現れる。そして、その原因がフロンガスであることが判明した。これを契機として、オゾン層の破壊を守るための国際的取り決めが始まり、ウイーン条約・モントリオール議定書が1987年に締結されフロンガスの使用が禁止されることとなった。一方で、代替フロンとして使われるガスは、温室効果ガスであり、神経・肝毒性等の側面もありその安全性に関する評価も検討されている。(山本秀樹)
参考URL:
気象庁ホームページ http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/ozonehp/diag_...
環境省オゾン層保護 ホームページ
http://www.env.go.jp/earth/index.html#ozone
外務省 ウイーン条約/モントリオール議定書 ホームページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/o...
オゾンホール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/02 09:54 UTC 版)

オゾンホール(英語: Ozone hole)は、南極や北極上空の成層圏のオゾン層における春期のオゾンの濃度の減少を指す。
歴史
春から初夏にかけてのオゾンの減少は、1970年代前半には発生していたことがわかっている。
発見
人工衛星から地球を撮影した画像で、まるで穴があいたように見えることからオゾンホールと呼ばれるようになった。南極上空のオゾンが毎年春期に減少することの発見は、ジョセフ・ファーマン、ブライアン・ガードナー、ジョナサン・シャンクリンの1985年の論文 (Farman et al. 1985 "Large losses of total ozone in Antarctica reveals seasonal ClOx/NOx interaction." Nature, 315, 207-210) によって発表されているが、最初の報告は1983年12月の極域気水圏シンポジウムおよび翌1984年ギリシャで開かれたオゾンシンポジウムでの、気象庁気象研究所(当時)の忠鉢繁らによる日本の南極昭和基地の観測データの国際発表である。
その後、ストラスキーらが人工衛星ニンバス7号の解析映像を発表し(Stolarski et al. 1986 "Nimbus 7 satellite mesurements of the spring time Antarctic ozone decrease" Nature, 322, 808-811)、オゾンホールがマスメディアを通じて一般に認知されるようになった。
モントリオール議定書
1987年のモントリオール議定書(Montreal Protocol)により、オゾン層破壊物質の削減・廃止への道筋が定められた。この議定書では、5種類のフロンについて1998年までに半減すること、3種類のハロン(フッ化炭素類)を1992年以降に増加させないことが定められている。
2022年現在、この議定書の締約国は、198か国及びEUである[1]。日本では1988年に、「オゾン層保護法」が制定され、1989年7月より、フロン等の生産規制が始まっている。
近状
- 2002年には、オゾンホールが2つに分裂したが、これは最高気温のためと言われている。
- 2003年には、いままでで最大のオゾンホールの発生が確認された。
- NASAが発表した2015年の調査結果では、モントリオール議定書以降の取り組みによりオゾンホールは着実に縮んでおり、21世紀末にはこの問題は解決する見通しである[2]。
- 2019年は、南極オゾンホールの最大面積が1990年以降最小となり、消滅が最も早かった。この原因を気象庁は、南極域上空の冬の気温が高い特異な状態によるとしている[3]。
特徴
- 南極上空に顕著にあらわれる。
- 春から初夏の極夜にかけてあらわれる。
- 年々規模が拡大する。
オゾンがもっとも減少するのは、成層圏の下層部分であるが、オゾンホールは単位面積あたりのオゾン全量(ドブソン単位によって計測される)によって示させるのが普通である。
発生原因

オゾンホールの発生は、フロンやハロンが紫外線によって分解(破壊)され、生成した塩素ラジカルが触媒としてオゾンを破壊するために引き起こされると言われている。この作用は、極成層圏雲と呼ばれる氷の雲の存在によって早められる。極成層圏雲を反応の媒体として、気相-固相の不均一反応が起こり、オゾンが急速に破壊されることが知られている。[4]
極成層圏雲の存在は、冬の間に急激にエアロゾルが増加することによって判明してきた。火山により硫酸エアロゾルが放出されるとオゾン層破壊が顕著に観測される。[5]極成層圏雲は、低温であるほど発生しやすい。南極の場合、極渦と呼ばれる強い偏西風帯が南北方向の熱輸送を阻害することにより、放射冷却で気温が低下しやすく、極成層圏雲が生成しやすい。
北極でもオゾンホールの存在は確認されているが、南極ほど大きくない。南半球は陸地が少なく、起伏の大きな地形も少ないが、北半球の場合、チベット高原、ロッキー山脈のような大規模山塊があり、陸地と海洋のコントラストも大きい。このため、北半球では大規模山塊や海陸のコントラストで励起されたロスビー波が成層圏に伝播して極渦を弱め、南極に比べて気温が低下せず、極成層圏雲が生成されにくい。
影響
紫外線の増大
オゾンは大気中では微量な存在に過ぎないが、太陽光に含まれる紫外線を吸収し、地上に紫外線を到達させない役割を担っている。
オゾンが減少すると対流圏に紫外線が到達し、成層圏で起きていたオゾン生成の光化学反応が対流圏で生じるようになるが、対流圏でのオゾンは存在期間が短いため、地表へはより多くの紫外線が到達することになる。
地球温暖化への影響
成層圏では対流圏よりも強力な紫外線が酸素に当たる。その際に光化学反応が起きオゾンが発生するが、それに伴い熱も発生させるため成層圏では高度の上昇に伴い気温が上昇する[6]。近年、成層圏ではオゾン層の希薄化に伴う光化学反応の減少と思われる気温の低下が報告されており、その代わりに対流圏付近でその光化学反応が行われ気温が上昇する事が考えられる。またオゾンホールの形成により通常よりも明るい色の雲が形成され、これが太陽光をより多く遮断するため温暖化を防いでいるとする研究結果も報告されている[7]。
人体・生物への影響
南極圏でのオゾンホールは、オーストラリアやニュージーランドの南部にまで広がることがある。そのため、この地域での紫外線の増大は、帽子をかぶらないと肌が荒れてしまうほど強烈であるし、ヒトの健康に無視できない影響を及ぼす。定住人口が多い北極圏においても健康被害が懸念されている[8]。
強度の紫外線は、皮膚がんを誘発する要因になる。紫外線の10%の増大は、男性に対しては19%、女性に対しては16%の皮膚がんの増加になるという研究結果もある。太陽光に含まれる紫外線A波・B波・C波が、細胞やDNAを傷つけてしまう。これらの地上到達を減らすオゾン層が減少すると、あらゆる生物の身体に悪い影響を及ぼす。
脚注
- ^ “2. a Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer”. 2022年5月30日閲覧。
- ^ NASA | Big Ozone Holes Headed For Extinction By 2040 NASA (2015年5月8日)
- ^ 『今年の南極オゾンホール ~南極オゾンホールの最大面積が1990年以降最小、消滅は最も早く~』(プレスリリース)気象庁、2019年11月20日 。2019年11月22日閲覧。
- ^ “気象庁 | 南極でオゾンホールが発生するメカニズム”. www.data.jma.go.jp. 2025年1月13日閲覧。
- ^ “オゾン層破壊のメカニズム” (PDF). 環境省. 2025年1月13日閲覧。
- ^ 南極のオゾン減少とアフリカ南部における夏季の気温上昇との関係を 世界で初めて解明 独立行政法人海洋研究開発機構 (2013年10月14日)
- ^ “オゾン層保護は地球温暖化を加速する?”. ナショナルジオグラフィック (2010年1月28日). 2023年11月27日閲覧。
- ^ 大場あい「【イチからオシえて】北極オゾンホールに懸念 南極より住民多く健康被害の恐れ」『毎日新聞』2016年4月27日、朝刊。オリジナルの2017年3月14日時点におけるアーカイブ。2017年10月29日閲覧。
関連項目
外部リンク
オゾンホール
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