行政機関 行政機関の概要

行政機関

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/24 14:53 UTC 版)

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欧米の行政法学上の概念

行政法学において行政活動を行う行政主体を行政組織を認識するための手段として、アメリカの行政法学では「行政機関」概念を用いてきたのに対し、ドイツでは「行政庁」概念を中心とする行政官庁論が用いられてきた[1][2]

アメリカ行政法における行政機関概念

アメリカ合衆国憲法のもとでの行政機関の位置づけは複数のアプローチで理解されることが通例である[3]。ピーター・ストラウス教授は行政機関の位置づけを3つに区分し、第一に専制政府を防ぐために三権を別々の場所に置く権力分立、第二に手続的デュープロセスに基づく機能分離、第三に政府内に複数の長を置いて専制を防ぐ抑制と均衡のアプローチがあるという[3]

ドイツ行政法学上の行政庁概念

ドイツ行政法学では「機関」とは区別して、または「機関」とは別のメルクマールで定義される「行政庁」という概念が用いられてきた[2]。「機関」と「行政庁」の関係は学者により異なり、O.マイヤーやW.イェリネックは「行政庁」とは別の「機関」の概念を排していたが、F.フライナーは「行政庁」と「機関」を別々に論じたほか、E.Rフーバーは「機関」を前提に「行政庁」を論じた[2]

日本法上の行政機関概念

日本法の「行政機関」概念には、権限分配の単位として用いられる講学上の行政機関(行政官庁法理論上の行政機関)と、行政事務の分配の単位として用いられる国家行政組織法上の行政機関がある[4]

第二次世界大戦前の日本の行政法の法理論はドイツから移入された行政法学とりわけ美濃部達吉の行政法の体系が負っていたものが大きい[1]。ただし、ドイツから移入された「行政庁」の概念や行政官庁論は、日本の行政法学ではドイツの行政法学とは相当異なる変容もみられると指摘されている[1]。第二次世界大戦後、日本の国家行政組織法はアメリカ型の「行政機関」概念を採用したため、それまでの「行政庁」概念や行政官庁論の有用性については議論がある[1]

講学上の行政機関概念

行政は、国や地方公共団体などの公法人が「行政主体」となり、その名(名義)と責任において実施する。この行政主体は法人であるため、実際にその手足となって行為するのは、自然人によって構成されるその機関である。これを講学上(行政官庁法理論上)、「行政機関」という[4]。行政機関や後述の行政庁、行政官庁といった語は、一般的な用法では組織や建物を指すが、ここでは法律により一定の行政上の権限および責務を与えられた自然人またはその合議体を指す。たとえば「財務省」といえば行政機関としては「財務大臣」の職にある自然人であり、都道府県であれば知事職にある自然人が「行政機関」である[4]

行政機関は、その機能から次の6種に分類される[要出典]

  1. 行政庁 - 行政主体の法律上の意思を決定し、外部に表示する権限を持つ機関[4]。公権力の行使の場面で用いられる。特に国の行政庁(すなわち官庁である行政庁)を行政官庁という。
    独任制:国における内閣総理大臣各省大臣、各庁長官、検察官[要出典]など、地方公共団体における都道府県知事市町村長など、ほとんどの行政庁。
    合議制:国における内閣国家公安委員会公正取引委員会人事院など、地方公共団体における教育委員会選挙管理委員会公安委員会 など。
  2. 諮問機関 - 行政庁から諮問を受けて、審議、調査し、意見を具申する機関[4]
    各種の審議会、調査会(公務員制度調査会)など。
    諮問機関の意見に法的拘束力は無いが、できるだけ尊重されるべきとされている。
  3. 参与機関- 行政庁の意思を法的に拘束する議決を行う行政機関[4]
    電波監理審議会(電波法94条に基づく総務大臣の決定を拘束する)
    検察官適格審査会検察庁法23条に基づく法務大臣の決定を拘束する)
    労働保険審査会など。
  4. 監査機関 - 行政機関の事務や会計の処理を検査し、その適否を監査する機関。
    会計検査院監査委員など。
  5. 執行機関 - 行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関[4][5]
    自衛官警察官海上保安官、徴税職員、消防職員など。
  6. 補助機関 - 行政庁その他の行政機関の職務を補助する機関[4]。日常的な事務を遂行する。
    副大臣事務次官局長課長から一般職員の多く。

国家行政組織法上の行政機関概念

国家行政組織法上の「行政機関」は、委員会など、事務配分の単位としての官署そのものを指す[6]。例えば、総務省であれば総務省で一つの行政機関であり、法務省なら法務省で一つの行政機関である。国家行政組織法上、「内閣の統轄の下における行政機関で内閣府以外のもの」を「国の行政機関」とし(同法1条)、同法により組織の基準が定められる。内閣の統轄下にありながら同法の適用を受けない内閣府人事院などは、同法にいう「国の行政機関」ではないものの、公の「行政機関」と位置付けられるものである[7]

また、会計検査院も行政機関であるが、これは内閣から独立した地位が保障された憲法機関であり、行政府たる内閣および内閣官房・内閣府・人事院・各省庁や委員会などの内閣のすべての下部組織のみだけでなく、司法府(最高裁判所を含むすべての裁判所およびその機関)・立法府(衆議院参議院およびその機関のみならず、両院をもって組織される弾劾裁判所裁判官訴追委員会等の機関も含まれる)などをも会計検査権限の行使対象とする点で、他の行政機関と異なる特質がある。

講学上の独任制行政官庁は、「行政機関の長」とする[6]。省の長は大臣であり、庁の長は長官である。合議制行政官庁である委員会については、委員長が「行政機関の長」となる。省は「内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関」として置かれる行政機関であり、委員会と庁は、省にその外局として置かれる行政機関である。なお、会計検査院の長は「会計検査院長」であり、人事院の長は「人事院総裁」である。

行政手続法第2条第5項に定義される行政機関や行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項に定義される行政機関もまた、国家行政組織法上の行政機関概念を踏まえたものである。

各国の行政機関


  1. ^ a b c d 小林博志「行政組織法・行政作用法上の基礎カテゴリーと「行政庁」概念」『早稲田法学会誌第35巻』。
  2. ^ a b c 小林博志「「行政庁」概念の位相」『早稲田法学会誌第31巻』。
  3. ^ a b 中川丈久「行政活動の憲法上の位置づけ」『神戸法学年報第14巻』。
  4. ^ a b c d e f g h 櫻井・橋本(2011)42頁
  5. ^ 地方自治法では、議会を「議決機関」とし、その対比として知事部局を「執行機関」と定める。講学上の言葉遣いとは異なるので注意を要する。
  6. ^ a b 櫻井・橋本(2011)43頁
  7. ^ 国家行政組織法1条参照。また、国家公務員法4条4号。


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