磁性 磁性・電気と特殊相対性

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磁性

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/15 00:21 UTC 版)

磁性・電気と特殊相対性

アインシュタインの特殊相対性理論の帰結として、電気と磁気は根本的に相互に関連していると理解されている。電気を伴わない磁気や磁気を伴わない電気は、ローレンツ力が速度に依存する点から特殊相対性理論と整合しない。しかし、電気と磁気を両方考慮する電磁気学の理論は特殊相対性理論に完全に整合している[6][14]。従って、ある観察者から見て完全に電気に見える現象は、別の観察者から見れば完全に磁気に見える可能性があり、電気と磁気は系に依存した相対的なものである。つまり、特殊相対性理論では電気と磁気は1つとなり、分けて考えることができない。

磁場と力

棒磁石の上に紙を置き、その上に砂鉄を撒くと、磁力線が目に見えるようになる。

磁気現象は磁場によってもたらされる。電流または磁気双極子は磁場を生み出し、その磁場内にある他の粒子に磁力が与えられる。

マクスウェルの方程式(定常電流の場合はビオ・サバールの法則に単純化される)は、そういった力を生み出す場の起源とその振る舞いを説明する。電荷を持つ粒子が運動すると(例えば、電子の運動によって電流が流れる場合や原子核の周りを電子が軌道を描いて回る場合)、磁力が観測される。そして、その源泉は量子力学的スピンから生じる真性磁気双極子である。

荷電粒子が電流として運動したり原子内で運動する、あるいは真性磁気双極子によって磁場が生まれると、磁力も生じる。次の式は運動する荷電粒子についてのものである。

磁場 B の中を運動する荷電粒子は、以下のベクトル積で表される力 F(ローレンツ力)を受ける[15]

ここで、

  • は粒子の電荷
  • は粒子の速度ベクトル
  • は磁場

この力は外積なので、粒子の速度と磁場の両方に対して垂直な方向に働く。このため仕事はなされず、磁力は粒子の運動の方向だけを変え、速さは変えない。その力の大きさは次の式で表される。

ここで、vB の間の角度である。

移動する荷電粒子と磁場の方向から力のかかる方向を知るにはフレミング右手の法則を応用すればよい。v人差し指B中指で表せば、力 F の方向は親指で表される。

磁気双極子

通常、磁場は双極子場として現れ、S極N極を持つ。「S極」「N極」という用語は磁石を方位磁石として使っていたことに由来している(方位磁石は地球の磁場すなわち地磁気と相互作用し、地球上での北 (North) と南 (South) を指し示す)。

磁場はエネルギーを蓄える。物理系は普通、エネルギーが最小となる配置で安定となる。そのため、磁気双極子を磁場の中に置くと、磁場と反対の方向に自らの磁極を向けようとし、これによって正味の磁場の強さをできるだけ打ち消して磁場に蓄えられるエネルギーを小さくしようとする。例えば、2つの同じ棒磁石を重ねると普通、互いのN極とS極がくっついて正味の磁場が打ち消されるようになり、同じ方向に重ねようとする力には逆らおうとする。(これが、方位磁石として使われる磁石が地球磁場と作用して北と南を向く理由である。)なお、2つの同じ磁場を持った棒磁石を無理矢理同じ方向に重ねた場合、2つの棒磁石を同じ方向で重ねるために使われたエネルギーは重なった2本の磁石が作る磁場に蓄えられ、その強さは1本の磁石の2倍になる。

磁気単極子

棒磁石が強磁性を持っているのは、棒全体に電子が均一に分布しているからであり、棒を半分に切ってもそれぞれの断片が小さい棒磁石になる。(N極側とS極側で色分けがなされたデザインの棒磁石も存在するが、仮に色が分けられている場所で切断したとしても、それぞれの色の2本の棒磁石ができるだけである。)いずれにしても磁石にはN極とS極ができてしまい、磁石を切断してもN極とS極を分離することはできない。もしも磁気単極子というものが実在するならば、全く新たな磁気効果を生じるだろう。それはN極またはS極がもう一方と対ではなく単独で存在するものを指す。1931年以降2010年現在まで磁気単極子の体系的な探索が行われてきたが、未だに発見されておらず、実在しないと見られている[16]

以上のような通常の経験に反して、いくつかの理論物理学のモデルでは磁気単極子(モノポール)の存在を予言している。1931年ポール・ディラックは、電気と磁気にはある種の対称性があるため、量子論によって単独の正あるいは負の電荷の存在が予言されるのと同様に、孤立したS極あるいはN極の磁極も存在するはずだ、と述べた。しかし実際には、荷電粒子は陽子電子のように個々の電荷として容易に孤立して存在できるが、SとNの磁極はばらばらには現れない。ディラックは量子論を用いて、もしも磁気単極子が存在するならば、なぜ観測される素粒子が電子の電荷の整数倍の電荷しか持たないのか、という理由を説明できることを示した。なお、クォークは分数電荷を持つが、自由粒子としては観測されない。

現代の素粒子論では、電荷の量子化は非可換ゲージ対称性の自発的破れによって実現されるとされている。現在のある種の大統一理論で予言されているモノポールはディラックによって考えられた元々のモノポールとは異なることに注意する必要がある。今日考えられているモノポールはかつての素粒子としてのモノポールとは異なり、ソリトン、すなわち局所的に集まったエネルギーの「束」である。こういったモノポールが仮にも存在するとすれば、宇宙論の観測結果と矛盾することになる。宇宙論の分野でこのモノポール問題を解決する理論として考えられたのが、現在有力とされているインフレーションのアイデアである[17]




  1. ^ Fowler, Michael (1997年). “Historical Beginnings of Theories of Electricity and Magnetism”. 2008年4月2日閲覧。
  2. ^ Vowles, Hugh P. (1932年). “Early Evolution of Power Engineering”. Isis (University of Chicago Press) 17 (2): 412–420 [419–20]. doi:10.1086/346662. 
  3. ^ Li Shu-hua, “Origine de la Boussole 11. Aimant et Boussole,” Isis, Vol. 45, No. 2. (Jul., 1954), p.175
  4. ^ Li Shu-hua, “Origine de la Boussole 11. Aimant et Boussole,” Isis, Vol. 45, No. 2. (Jul., 1954), p.176
  5. ^ Schmidl, Petra G. (1996-1997). “Two Early Arabic Sources On The Magnetic Compass”. Journal of Arabic and Islamic Studies 1: 81–132. 
  6. ^ a b A. Einstein: "On the Electrodynamics of Moving Bodies", June 30, 1905.
  7. ^ Heisenberg, Werner K. (1928年). “zur theorie des ferromagnetismus”. Zeitschrift für Physik A Hadrons and Nuclei 61 (3-4): 619-636. 
  8. ^ Bloch, Felix (1930年). “zur theorie des ferromagnetismus”. Zeitschrift für Physik A Hadrons and Nuclei 61 (3-4): 206-219. 
  9. ^ Stoner, Edmund C. (1930年). “The magnetic and magneto-thermal properties of ferromagnetics”. Philosophical Magazine Series 7 10 (62): 27-48. 
  10. ^ Mott, N. F. (1949年). “The Basis of the Electron Theory of Metals, with Special Reference to the Transition Metals”. Proceedings of the Physical Society. Section A 62 (7): 416. 
  11. ^ Anderson, P.W. (1959年). “New Approach to the Theory of Superexchange Interactions”. Physical Review 115 (1): 1. 
  12. ^ B. D. Cullity, C. D. Graham (2008). Introduction to Magnetic Materials (2 ed.). Wiley-IEEE. p. 103. ISBN 0471477419. http://books.google.com/?id=ixAe4qIGEmwC&pg=PA103. 
  13. ^ Catherine Westbrook, Carolyn Kaut, Carolyn Kaut-Roth (1998). MRI (Magnetic Resonance Imaging) in practice (2 ed.). Wiley-Blackwell. p. 217. ISBN 0632042052. http://books.google.com/?id=Qq1SHDtS2G8C&pg=PA217. 
  14. ^ Griffiths, David J. (1998). Introduction to Electrodynamics (3rd ed.). Prentice Hall. ISBN 0-13-805326-X. OCLC 40251748. , chapter 12
  15. ^ Jackson, John David (1999). Classical electrodynamics (3rd ed.). New York: Wiley. ISBN 0-471-30932-X 
  16. ^ Milton, Kimball A. (2006年6月). “Theoretical and experimental status of magnetic monopoles”. Reports on Progress in Physics 69 (6): 1637–1711. doi:10.1088/0034-4885/69/6/R02. http://arxiv.org/abs/hep-ex/0602040.  - Milton はいくつかの決定的でない事象に言及し (p.60)、「磁気単極子が存在したという証拠は全く残っていない」と結論している (p.3)。
  17. ^ Guth, Alan (1997). The Inflationary Universe: The Quest for a New Theory of Cosmic Origins. Perseus. ISBN 0-201-32840-2. OCLC 38941224. .




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