国際博覧会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/18 10:17 UTC 版)
目的
国際博覧会条約によれば、「博覧会とは、名称のいかんを問わず、公衆の教育を主たる目的とする催しであって、文明の必要とするものに応ずるために人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一若しくは二以上の部門において達成された進歩若しくはそれらの部門における将来の展望を示すものをいう」[1]とされている。
歴史
様々な物品を集めて展示する博覧会(国内博覧会)は1798年、フランス革命の時期のパリで初めて開催された。1849年までにパリで11回開催され、徐々に規模が大きくなっていった。同様の博覧会がベルギー、オランダなど各国でも開催されるようになると1849年、フランスの首相が国際博覧会を提唱し、1851年に第1回国際博覧会がロンドンで開催された。
初期の万博として、クリスタル・パレス(水晶宮)が造られたロンドン万国博覧会(第1回、1851年)やエッフェル塔が建設されたパリ万国博覧会(第4回、1889年)などが著名である。
スペインのバルセロナでも1888年と1929年の2回開催されている。メイン会場は前者はシウタデリャ公園(バルセロナ要塞跡地)、後者はモンジュイックの丘であった。
アフリカ分割がなされた1880年代以降は、欧米各国が国力誇示と植民地気運を高めるため母国やその植民地で競って開催した植民地博覧会も国際博覧会の一種である。1883年のアムステルダム国際植民地貿易博覧会、1886年の植民地・インド博覧会、1894年のリヨン国際植民地博覧会などをはじめ、1924年のイギリス帝国博覧会、1933年のパリ植民地博覧会など、第二次世界大戦後まで数十回開催された。1880年のメルボルン博覧会など、植民地内博覧会も各地で開催され、欧米列強に倣い20世紀初頭には日本も朝鮮・台湾で博覧会を開催した。
史上初の公式認定博(特別博)で初めて開催されたのは、1936年のストックホルム国際博覧会である。
史上初の公式国際園芸博で初めて開催されたのは、1960年のロッテルダム国際園芸博覧会である。
史上初の公式マスコットが登場したのは、1984年のニューオーリンズ国際河川博覧会で、「シーモア・D・フェア(Seymore D. Fair)」である。
開催年 | 国際博覧会の名称 | 開催地 | 詳細 | 主催 | 開催日数 | 会場坪数 | 入場者概数 | 写真 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1851年 | ロンドン万国博覧会 | ロンドン | 史上初の国際博覧会 クリスタルパレスを用いた 会場建物を建てた |
民間協会 | 141日 | 26000坪 | 604万人 | |
1853年 | ニューヨーク万国博覧会 | ニューヨーク | 非公式の大会 | 民間協会 | 5か月 | 76000坪 | 125万人 | |
1855年 | パリ万国博覧会 | パリ | フランス初の大会 | 政府 | 200日 | 51000坪 | 516万人 | |
1862年 | ロンドン万国博覧会 | ロンドン | 民間協会 | 171日 | 38000坪 | 621万人 | ||
1867年 | パリ万国博覧会 | パリ | 政府 | 210日 | 208000坪 | 1020万人 | ||
1873年 | ウィーン万国博覧会 | ウィーン | オーストリア初の大会 日本が初参加 |
政府 | 186日 | 705000坪 | 726万人 | |
1876年 | フィラデルフィア万国博覧会 | フィラデルフィア | アメリカ初の大会 | 官民 | 159日 | 348000坪 | 986万人 | |
1878年 | パリ万国博覧会 | パリ | 政府 | 190日 | 227000坪 | 1610万人 | ||
1880年 | メルボルン万国博覧会 | メルボルン | オーストラリア初の大会 | 政府 | 477日 | 75625坪 | 133万人 | |
1883年 | アムステルダム国際植民地輸出博覧会 | アムステルダム | 非公式の大会 28か国参加の植民地博覧会 |
官民 | 5か月間 | 66550坪 | 140万人 | |
1888年 | バルセロナ万国博覧会 | バルセロナ | スペイン初の大会 | 236日 | ||||
1889年 | パリ万国博覧会 | パリ | エッフェル塔の完成の大会 | 政府 | 180日 | 327000坪 | 3235万人 | |
1893年 | シカゴ万国博覧会 | シカゴ | 民間会社 | 183日 | 775000坪 | 2754万人 | ||
1897年 | ブリュッセル万国博覧会 | ブリュッセル | ベルギー初の大会 | |||||
1900年 | パリ万国博覧会 | パリ | パリオリンピックと同時期 19世紀の最後の大会 |
政府 | 210日 | 327000坪 | 4768万人 | |
1904年 | セントルイス万国博覧会 | セントルイス | セントルイスオリンピックと同時期 20世紀の最初の大会 |
民間会社 | 185日 | 1518000坪 | 1970万人 | |
1905年 | リエージュ万国博覧会 | リエージュ | 民間会社 | 185日 | 1518000坪 | 1970万人 | ||
1906年 | ミラノ万国博覧会 | ミラノ | イタリア初の大会 | |||||
1910年 | ブリュッセル万国博覧会 | ブリュッセル | ||||||
1913年 | ヘント万国博覧会 | ヘント | ||||||
1915年 | サンフランシスコ万国博覧会 | サンフランシスコ | 民間会社 | 288日 | 960000坪 | 1883万人 | ||
1926年 | フィラデルフィア万国博覧会 | フィラデルフィア | 非公式の大会 | 民間会社 | 184日 | 1331000坪 | 650万人 | |
1929年 | バルセロナ万国博覧会 | バルセロナ | ||||||
1933年 | シカゴ万国博覧会 | シカゴ | 初めてテーマが掲げられた大会 テーマは「進歩の一世紀」 |
民間会社 | 170日 | 516000坪 | 2257万人 | |
1935年 | ブリュッセル万国博覧会 | ブリュッセル | 150日 | 2000万人 | ||||
1936年 | ストックホルム国際博覧会 | ストックホルム | 史上初の認定博 | 17日 | ||||
1937年 | パリ万国博覧会 | パリ | 93日 | 870万人 | ||||
1938年 | ヘルシンキ国際博覧会 | ヘルシンキ | フィンランド初の大会 | |||||
1939年 | ニューヨーク万国博覧会 | ニューヨーク | 340日 | 4500万人 | ||||
リエージュ国際博覧会 | リエージュ | ベルギー初の認定博 | ||||||
1947年 | パリ国際博覧会 | パリ | 第二次世界大戦後の最初の大会 フランス初の認定博 |
|||||
1949年 | ストックホルム国際博覧会 | ストックホルム | ||||||
リヨン国際博覧会 | リヨン | |||||||
ポルトープランス万国博覧会 | ポルトープランス | 発展途上国初の大会 ハイチ初の大会 |
||||||
1951年 | リール国際博覧会 | リール | ||||||
1953年 | ローマ国際博覧会 | ローマ | イタリア初の認定博 | |||||
エルサレム国際博覧会 | エルサレム | イスラエル初の大会 | ||||||
1954年 | ナポリ国際博覧会 | ナポリ | ||||||
1955年 | トリノ国際博覧会 | トリノ | ||||||
ヘルシンボリ国際博覧会 | ヘルシンボリ | |||||||
1956年 | ベト・ダゴン国際博覧会 | ベト・ダゴン | ||||||
1957年 | ベルリン国際博覧会 | ベルリン | ドイツ初の大会 | |||||
1958年 | ブリュッセル万国博覧会 | ブリュッセル | 186日 | 4150万人 | ||||
1960年 | ロッテルダム国際園芸博覧会 | ロッテルダム | 史上初の国際園芸博覧会 | |||||
1961年 | トリノ国際博覧会 | トリノ | ||||||
1962年 | シアトル万国博覧会 | シアトル | 184日 | 964万人 | ||||
1963年 | ハンブルク国際園芸博覧会 | ハンブルク | ドイツ初の国際園芸博覧会 | |||||
1964年 | ウィーン国際園芸博覧会 | ウィーン | オーストリア初の国際園芸博覧会 | |||||
ニューヨーク万国博覧会 | ニューヨーク | 非公式の大会 | 360日 | 5167万人 | ||||
1965年 | ミュンヘン国際博覧会 | ミュンヘン | ||||||
1967年 | モントリオール万国博覧会 | モントリオール | カナダ初の大会 | 185日 | 5031万人 | |||
1968年 | サンアントニオ国際博覧会 | サンアントニオ | アメリカ初の認定博 | |||||
1969年 | パリ国際園芸博覧会 | パリ | フランス初の国際園芸博覧会 |
主な国際博覧会
※「区分」の定義は後述。
開催年 | 名称 (通称・略称) |
区分 | 詳細 | 写真 |
---|---|---|---|---|
1970年 | 日本万国博覧会
|
一般博 | アジア初の大会 日本初の大会 |
|
1971年 | ブダペスト国際博覧会 | 特別博 | 社会主義初の大会 ハンガリー初の大会 |
|
1972年 | アムステルダム国際園芸万博 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
1973年 | ハンブルク国際園芸博覧会 | |||
1974年 | ウィーン国際園芸博覧会 | |||
スポケーン国際環境博覧会 | 特別博 | |||
1975年 | 沖縄国際海洋博覧会
|
アジア初の認定博の大会 日本初の認定博の大会 |
||
1980年 | モントリオール国際園芸博覧会 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
カナダ初の国際園芸博覧会の大会 | |
1981年 | プロヴディフ国際博覧会 | 特別博 | ブルガリア初の大会 | |
1982年 | アムステルダム国際園芸万博 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
ノックスビル国際エネルギー博覧会 | 特別博 | |||
1983年 | ミュンヘン国際園芸博覧会 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
1984年 | ニューオーリンズ国際河川博覧会
|
特別博 | 公式マスコットを持った史上初の大会 | |
リバプール国際庭園博覧会 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
イギリス初の国際園芸博覧会の大会 | ||
1985年 | 国際科学技術博覧会
|
特別博 | ||
プロヴディフ国際博覧会 | ||||
1986年 | バンクーバー国際交通博覧会 | カナダ初の認定博の大会 | ||
1988年 | ブリスベン国際レジャー博覧会 | オーストラリア初の認定博の大会 | ||
1990年 | 国際花と緑の博覧会
|
特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
アジア初の国際園芸博覧会の大会 日本初の国際園芸博覧会の大会 |
|
1991年 | プロヴディフ国際博覧会 | 特別博 | ||
1992年 | セビリア万国博覧会 | 一般博 | 22年ぶりの登録博の大会である。 | |
ジェノヴァ国際船と海の博覧会 | 特別博 | |||
ハーグ・ズータメア国際園芸博覧会 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
|||
1993年 | 大田国際博覧会
|
特別博 | 韓国初の大会 | |
シュトゥットガルト国際園芸博覧会 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
|||
1998年 | リスボン国際博覧会 | 特別博 | ポルトガル初の大会 | |
1999年 | 昆明世界園芸博覧会 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
中国初の大会 | |
2000年 | ハノーヴァー万国博覧会 | 一般博 | 20世紀の最後の大会である。 | |
2002年 | ハールレマミーア国際園芸博覧会 | 特別博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
2003年 | ロストック国際園芸博覧会 | 認定博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
2005年 | 2005年日本国際博覧会
|
登録博 | 21世紀の初の大会である。 | |
2006年 | チェンマイ国際園芸博覧会 | 認定博 (大国際園芸博覧会区分) |
タイ初の大会 | |
2008年 | サラゴサ国際博覧会 | 認定博 | 21世紀のヨーロッパ初の大会である。 | |
2010年 | 上海国際博覧会
|
登録博 | 中国初の登録博の大会 | |
2012年 | 麗水国際博覧会
|
認定博 | ||
フェンロー国際園芸博覧会 | 認定博 (大国際園芸博覧会区分) |
|||
2015年 | ミラノ国際博覧会 | 登録博 | 21世紀のヨーロッパ初の登録博の大会である。 | |
2016年 | アンタルヤ国際園芸博覧会 | 認定博 (大国際園芸博覧会区分) |
トルコ初の大会 | |
2017年 | アスタナ国際博覧会 | 認定博 | カザフスタン初の大会 | |
2019年 | 北京世界園芸博覧会 | 認定博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
2021年 | ドバイ国際博覧会 | 登録博 | 中東初の大会 アラブ首長国連邦初の大会 |
|
2022年 | アルメーレ国際園芸博覧会
|
認定博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
2023年 | ドーハ国際園芸博覧会 | カタール初の大会 | ||
ブエノスアイレス国際博覧会 | 認定博 | 開催中止 | ||
2025年 | 2025年日本国際博覧会
|
登録博 | ||
2027年 | 2027年国際園芸博覧会
|
認定博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
ベオグラード国際博覧会 | 認定博 | セルビア初の大会 | ||
2029年 | ウッチ国際園芸博覧会 | 認定博 (大国際園芸博覧会区分) |
||
2030年 | リヤド国際博覧会 | 登録博 |
国際博覧会の区分と手続き
国際博覧会条約に基づく博覧会を行うには開催を希望する政府が博覧会国際事務局(BIE)に申請(立候補)し、総会で承認される必要がある。
国際博覧会は会場の規模やテーマなどから、主に登録博覧会(登録博)と認定博覧会(認定博)の2つに大別されている(以前は「一般博」と「特別博」に区分されていた)。最大の規模の国際博覧会である登録博は1995年以降は5年ごとに開催され、その開催地はBIEでの投票で決定される。開催期間は最大で6か月である。パビリオンの建設は各参加国が行う。一方の認定博は各国政府が様々な目的から登録博の間に開催するもので、2つの登録博の中間期間に1つの認定博が開催できる。認定博のパビリオンは開催国が用意しなければならない。認定博は開催規模に厳しい制限があり開催期間も最大で3か月までとなっている。
国際園芸家協会が認定した「国際園芸博覧会」のうち大規模なものでBIEが認めたものと「ミラノ・トリエンナーレ」でBIEが認めたものは、「認定博(以前は「特別博」)」として国際博覧会と称することが出来ることとなっている。
一般的に国際博覧会は開催国政府が主催する事が多いが、政府以外が主催者になっても良いことになっている。ただし、国際博覧会条約の事務局である博覧会国際事務局(BIE)に国際博覧会開催を申請(立候補)出来るのは各国政府のみである。政府以外の団体が主催者となった場合、その主催者はBIE条約上、政府機関とみなされる。具体的には2005年日本国際博覧会(愛知万博、愛・地球博)の主催者の財団法人の2005年日本国際博覧会協会などがこれにあたる。BIE条約の非加盟国も、国際博覧会に参加することはできる。大規模な国際博覧会の場合、参加国はBIE条約の加盟国の数よりも多くなることが多い。また、BIE条約の非加盟国が国際博覧会開催を申請することも制度上は可能である。ただしその場合、申請と同時にBIE条約に加盟することが多い。日本は日本万国博覧会(大阪万博)の開催申請直前にBIE条約を批准した。詳細は博覧会国際事務局を参照のこと。
- ^ “外務省:国際博覧会(万博):「国際博覧会条約」抜粋”. www.mofa.go.jp. 2021年12月4日閲覧。
- ^ 吉田(1985)、p.134.
- ^ 吉見(2010)、pp.115-120.
- ^ a b c d 外交資料に見る日本万国博覧会への道 - 外務省
- ^ 世紀の祭典 万国博覧会の美術 東京国立博物館ニュース第666号 2004年7-8月号
- ^ 100年来の夢、五輪で結実 東京湾岸で国家イベント - 日本経済新聞 2014年3月8日閲覧
- 国際博覧会のページへのリンク