著名な数理物理学者
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初期初期の数理物理学の先駆者として、11世紀のイラクの物理学者・数学者イブン・アル・ハイサム(ラテン語名Alhacen、965年-1039年)を挙げることができる。彼の数学的モデルと、それらが彼の著書「光学の書」(1021年)において感覚・知覚の理論に果たした役割は、後の数理物理学の基礎となる重要なものである。 他にもこの時代には、アル=ビールーニーやアル=カジニなどが、代数学や精密な計算手法を統計学や力学に導入した。 17世紀イギリスの物理学者・数学者アイザック・ニュートン(1642年-1727年)が、物理学上の問題を解くための重要な数学的手法(微分法や、ニュートン法などの数値解析手法)を開発した。また、(光の波動論で知られる)オランダのクリスティアーン・ホイヘンス、天体運動に関する方程式の発見で知られるドイツのヨハネス・ケプラー(1571年-1630年)などが活躍した。 18世紀スイスの(流体力学や弦の振動などについて業績を残した)ダニエル・ベルヌーイ(1700年-1782年)や(変分原理、力学、流体力学や、その他多くの業績を残した)レオンハルト・オイラー(1707年-1783年)が数理物理学を大きく発展させた。また、フランスのジョゼフ=ルイ・ラグランジュ(1736年-1813年)は、力学と変分法に関して顕著な業績を残した。 18世紀後半から19世紀初頭フランスでは(数理天文学、ポテンシャル理論、力学で有名な)ピエール=シモン・ラプラス(1749年-1827年)や、力学、ポテンシャル理論の発展に貢献したシメオン・ドニ・ポアソン(1781年-1840年)が、またドイツでは(磁性の研究を行った)カール・フリードリヒ・ガウス(1777年-1840年)や(力学や調和変換に関する業績を残した)カール・グスタフ・ヤコブ・ヤコビ(1804年-1851年)などが活躍した。ガウスは、オイラーとともに三大数学者の一人とされている。彼の非ユークリッド幾何学への貢献は、彼に続くベルンハルト・リーマン(1826年-1866年)によるリーマン幾何学の基礎となった。これは後述する一般相対性理論の核心をなすものである。 19世紀ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831年-1879年)がマクスウェル方程式を確立し、同じくイギリスのケルヴィン男爵ウィリアム・トムソン(1824年-1907年)は、熱力学に関して本質的な発見を行った。イギリスでは他にもレイリー男爵ジョン・ウィリアム・ストラット(1842年-1919年)が音波についての研究を行い、ジョージ・ガブリエル・ストークス(1819年-1903年)が光学、流体力学の研究を発展させた。アイルランドでは、ウィリアム・ローワン・ハミルトン(1805年-1865年)が力学の研究を行った。ドイツでは、ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(1821年-1894年)が電磁気学、波動、流体、音波の研究で業績を残した。アメリカでは、ウィラード・ギブズ(1821年-1903年)による先駆的研究が、統計力学の基礎となった。これらはいずれも、電磁気学、流体力学、統計力学の基礎を成している。 19世紀末から20世紀初頭特殊相対性理論 オランダのヘンドリック・ローレンツ(1853年-1928年)、アンリ・ポアンカレ(1854年-1912年)らによって特殊相対論の先鞭が付けられた後、アルバート・アインシュタイン(1879年-1955年)によって完全に明瞭な形で定式化された。アインシュタインはこれを推し進め、一般相対性理論を構成する、幾何学的なアプローチを用いた重力理論に到達した。これは19世紀のガウスとリーマンによる非ユークリッド幾何学に基づくものである。アインシュタインの特殊相対性理論は、時間と空間のガリレイ変換を、ミンコフスキー空間での4次元のローレンツ変換に置き換えた。また一般相対性理論は、平面上のユークリッド幾何学を、曲率が質量分布によって決まるリーマン多様体上の幾何学に置き換えた。これはニュートンのスカラー重力をリーマン曲率テンソルに置き換えたものである。 量子力学 20世紀におけるもう一つの革命的成果として、量子力学を挙げることができる。量子力学は、マックス・プランク(1856年-1947年)による黒体輻射の研究、及びアインシュタインによる光電効果の研究から生まれた。これは当初、アルノルト・ゾンマーフェルト(1868年-1951年)とニールス・ボーア(1885年-1962年)の発見的方法によって定式化されたが、間もなくマックス・ボルン(1882年-1970年)、ヴェルナー・ハイゼンベルク(1901年-1976年)、ポール・ディラック(1902年-1984年)、エルヴィン・シュレーディンガー(1887年-1961年)、及びヴォルフガング・パウリ(1900年-1958年)らによって発展した量子力学によって置き換えられた。量子力学は、状態の確率的な解釈と、ダフィット・ヒルベルト(1862年-1943年)によって導入された無限次元ベクトル空間(ヒルベルト空間)上での自己共役作用素に関する理論に基づいている。例えばディラックは、電子の相対論的なモデルを代数的な構造を用いて構築し、これによって生じる磁気モーメントや、その反粒子であるポジトロンの存在を予言した。 20世紀その後の20世紀の数理物理学の発展は、サティエンドラ・ボース(1894年-1974年)、ジュリアン・シュウィンガー(1918年-1994年)、朝永振一郎(1906年-1979年)、リチャード・ファインマン(1923年-1988年)、湯川秀樹(1907年-1981年)、ロジャー・ペンローズ(1931年-)、スティーヴン・ホーキング(1942年-2018年)、エドワード・ウィッテン(1951年-)らによるところが大きい。
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