日本紅斑熱とは? わかりやすく解説

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日本紅斑熱

紅斑熱群リケッチア症は広く世界分布し北米大陸みられるロッキー山紅斑熱地中海沿岸みられる地中海紅斑熱、オーストラリアみられるクインズランドダニチフスなどが代表的なものである。わが国でも1984 年患者初め報告され、日本紅斑熱とよばれるようになった。本症は紅斑熱群リケッチア一種 Rickettsia japonica起因病原体とし、野山入りマダニに刺咬されることにより感染する

疫 学
本症はダニ媒介性疾患一つであり、発生ダニ性質生息域活動など影響を受ける。
媒介ダニは、キチマダニHaemaphysalis flava)、フタトゲチマダニHaemaphysalis longicornis)、ヤマトマダニIxodes ovatus)などのマダニであることが強く示唆されている。いずれのマダ ニヒトへの嗜好性強くキチマダニからはリケッチア分離され、他からはP C R によりリケッチ ア遺伝子検出されている。ヒト野山入ったときにこれらのマダニに刺咬され、感染する。 しかし、全てのダニリケッチアをもつわけではなくリケッチアをもつダニ有毒ダニ)に刺咬されたときだけ感染するリケッチアダニからダニへと継卵感染により受け継がれるまた、マダニ幼虫若虫成虫いずれも哺乳動物を刺咬し、吸血する。したがって自然界保菌あるいは感染動物は本症のリザーバー感染巣)となり、動物ダニヒト感染もある。この感染巣と して、げっ歯類野生シカなどが重要である。

 症例数は1994 年まで年間1020程度であったが、1995 年頃より増加転じ19992001 年には年間40近くになった(図1)。発生地域は、1998年以前鹿児島県、宮崎県高知県徳島県兵庫県淡路島)、島根県和歌山県三重県神奈川県千葉県などであったが、1999 年以降拡大し広島県長崎県静岡県でも発生みられるようになった(図2)。

日本紅斑熱

1. 日本紅斑熱発生推移

日本紅斑熱
日本紅斑熱
日本紅斑熱

今後発生地域およびその周辺では発生する可能性が十分あり、注意が必要である。また、本症を媒介するマダニ広くわが国生息しており、発生地域が主に太平洋側温暖な地域限局している理由については不明である。発生時期をみると、1998年以前7~9月ピークに 4~11月の間に発生がみられ、夏を中心に発生するといわれていた。しかし、1999 年以降4月10月継続して多く発 生がみられ、さらに3月11月および12月にも発生がみられた(図3)。今後は、発生時期地域差みられるものの(図4)、その年の天候などの影響も受けるので、全国的に春~秋の長い間注意が必要である。
また、本症はわが国特有の疾患であるが、同様の紅斑熱群リケッチア症は広く世界分布しており、輸入感染症としても重要である。

病原体
本症の病原体リケッチア一種リケッチ ア・ジャポニカ(Rickettia japonica )であり、細 胞外では増殖できない偏性細胞内寄生細菌で ある(写真1)。ロッキー山紅斑熱など他の紅斑 熱群リケッチア症の病原体と同じ属である。

日本紅斑熱
日本紅斑熱
日本紅斑熱

臨床症状
頭痛発熱倦怠感伴って発症する潜 伏期は2~8日と、ツツガムシ病1014日比べやや短い。また、ツツガムシ病同様に発 熱発疹写真2)、および刺し口(写真3)が主 要三徴候であり、ほとんどの症例みられる
ツツガムシ病との臨床的鑑別は困難である。 しかし詳細に観察すると、ツツガムシ病では発 疹が主に体幹部にみられるのに対し、本症で は体幹部より四肢末端部に比較強く出現す ること、またツツガムシ病比べ刺し口の中 心痂皮部分小さいなどの特徴がある。検査所見では、ツツガムシ病同様にCRP の上昇、肝酵素ASTALTの上昇、白血球減少および血小板減少などがみられる

病原診断
確定診断は主に、間接蛍光抗体法による血清診断行われている。紅斑熱群リケッチアは種間で血清学交差反応強くR. japonica抗原として用いれば全ての紅斑熱群リケッチア症の診断が可能であるため、輸入感染症にも対応できるまた、類似疾患鑑別のため、ツツガムシ病リケッチア抗原併用することが望ましい。
また病原体診断としては、末梢血中からのリケッチアDNA 検出が行われている。ツツガムシ病場合同様にEDTA全血からbuffy coat 分画単離しDNA抽出PCR法による検出行っている。リケッチア分離マウス培養細胞用いて行われるが、P3 実験施設が必要であり、時間がかかるので診断には実用的ではない。

治療・予防
ダニ媒介性リケッチア症の一般的な治療および予防法準じて行う。治療には、本症を早期疑い適切な抗菌薬投与することが極めて重要である。第一選択薬テトラサイクリン系抗菌薬である。また、ニューキノロン系が有効であるとの報告もある(ツツガムシ病には無効)。βラタム系の抗菌薬は全く無効である。また、本症の予防には、ワクチン利用できず、ダニの刺咬 を防ぐことが極めて重要である。発生時期および発生地知り汚染地域立ち入らないこと、農作業森林作業やむを得ず立ち入る際には、(1) 皮膚の露出少なくダニ付着を防ぐ、(2) ダニ忌避剤使用する(3) 作業入浴し注意深く付着ダニ除去を行う。この際感染を防ぐためダニを指でつぶさず、頭部ピンセットなどで摘んで除去する、(マダニ口器長く皮膚深く 刺咬していて、入浴だけでは除去できない可能性がある。)などに注意することが必要である。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
日本紅斑熱は4類感染症定められており、診断した医師直ち最寄り保健所届け出る報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断血清学診断なされたもの。
 ・病原体検出
  例、血液からのリケッチア分離など
 ・病原体遺伝子検出
  例、PCR 法など
 ・病原体対す抗体検出
  例、間接蛍光抗体法抗体価の4 倍以上上昇か、IgM 抗体上昇)など

国立感染症研究所ウイルス第二部 小川基彦)





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