サルモネラ感染症とは? わかりやすく解説

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サルモネラ感染症

サルモネラ感染症の原因菌サルモネラSalmonella enterica )である。サルモネラはその中が2,000種類上の血清型細分されており、チフス疾患をおこすチフス菌(S .Typhi )およびパラチフス菌(S .Paratyphi A)も含まれるが、ここではヒト胃腸炎、つまり食中毒原因となるサルモネラについてのみ述べる。

疫 学

わが国におけるサルモネラ食中毒事例はここ数年間常に、腸炎ビブリオと一、ニを争う代表的食中毒原因菌である(図1)。
サルモネラ食中毒カンピロバクターと同様大型事例多く学校福祉施設病院多発している。その血清型との関係では、1980 年後半からS .Enteritidis が鶏卵関連食品原因急増してきた。また、多剤耐性のS .Typhimurium DT105 の発生世界的にその予防対策公衆衛生上の大きな問題になっており、多くはないが、最近わが国においても本発生見られる
サルモネラ健康な成人ではその症状胃腸炎にとどまるが、小児高齢者では重篤となることがある1999 年1~5 月全国規模多発した子供用イカ菓子原因のS .Oranienburg は、後者典型的事例であった

図1a.主な病原体別にみた件数年次推移19852002年

図1b. 主な病原体別にみた患者数年次推移19852002年

病原体

サルモネラグラム陰性通性嫌気性桿菌腸内細菌科属し、周毛によって運動する(図2)が、べん毛を欠く非運動性もある。
一般にサルモネラの中で胃腸炎をおこすサルモネラ亜種I の菌種のみで、その他のサルモネラ非病原性とされている。サルモネラ自然界あらゆるところに生息しペット鳥類爬虫類両生類保菌している。

図2. Salmonella Enteritidis電子顕微鏡写真

とくに家畜ブタニワトリウシ)の腸管内では、常在菌として保菌していることが知られている。

臨床症状
サルモネラ臨床症状多岐にわたるが、最も普通にみられるのは急性胃腸炎である。通常8~48 時間潜伏期経て発病するが、最近のEnteritidis 感染では3 ~4 日後の発病珍しくない症状はまず悪心および嘔吐始まり数時間後に腹痛および下痢起こす下痢1 日数回から十数回で、3~4 日持続するが、1 週間以上に及ぶこともある。小児では意識障害痙攣および菌血症高齢者では急性脱水症および菌血症起こすなど重症化しやすく、回復も遅れる傾向がある。

病原診断
その他の食中毒による急性胃腸炎でも共通することであるが、症状患者背景により臨床診断をし、平行して確定診断を行う。38 上の発熱1 日10 回以上の水様性下痢血便腹痛などを呈する重症例では、まず本症が疑われることが多い。検査所見では、炎症程度に応じて白血球数CRP 等の炎症反応増加見られる菌血症胃腸炎でもトランスアミラーゼ上昇することがある確定診断糞便血液穿刺液、リンパ液等より検出を行う。
サルモネラ特異的な迅速診断法はない。

治療・予防
サルモネラのみならず細菌性胃腸炎では、発熱下痢による脱水補正腹痛など胃腸炎症状緩和中心に対症療法を行うのが原則である。強力な止瀉薬除菌遅らせたり麻痺性イレウス引き起こす危険があるので、使用しない解熱剤ニューキノロン薬併用禁忌のものがある上、脱水悪化させる可能性があるので、できるだけ使用避ける。抗菌薬軽症例では使用しないのが原則であるが、重症例で使用必要な場合には、つぎのことに考慮が必要である。
サルモネラ試験管内では多く抗菌薬感受性であるが、臨床的に有効性認められているものは、アンピシリン(ABPC )、ホスホマイシンFOM )、およびニューキノロン薬限られる
わが国の非チフスサルモネラ薬剤耐性率はABPC に2030%、FOM対し10%未満であり、ニューキノロン薬耐性はほとんどみられない
上記のようにサルモネラ症では、症状改善されても排菌が続くことがある抗菌薬投与によって腸内細菌叢撹乱され除菌が遅れるうえ、耐性菌誘発サルモネラ対す易感染性高めるなどの理由で、単純な胃腸炎には投与すべきではないとの意見欧米では一般的であるが、わが国では、ニューキノロン薬7 日間投与腸内細菌叢対す影響もなく、除菌率も高いという成績に基づき使用されている。

処 方
ニューキノロン薬下記いずれか1 剤)
ノルフロキサシンシプロフロキサシン300 ~400mg ,分3 ,7 日間
トスフロキサシン450mg ,分3 ,7 日間
レボフロキサシン300mg ,分3 ,7 日間
ホスホマイシン2.0g ,分3 ~4 ,7 日間
アンピシリン1.5 ~2.0g ,分3 ~4 ,7 日間

サルモネラ予防原因食品、特に食肉および鶏卵低温保存管理また、それらの調理時および調理後の汚染防止基本である。低年齢層では、ペットおよび衛生昆虫からの接触感染無視することはできない

食品衛生法における取り扱い
食中毒疑われるときには24 時間以内最寄り保健所届け出る

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
感染性胃腸炎は5類感染症定点把握疾患定められており、全国約3,000カ所の小児科定点より毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
○  診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下の2つ基準満たすもの
 1. 急に発症する腹痛新生児乳児では不明)、嘔吐下痢
 2. 他の原因よるもの除外
○  上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清学診断によって当該疾患診断されたもの

国立感染症研究所細菌第一部 田村和満)





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