排気ガス規制対応と燃費改善
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/02 07:50 UTC 版)
「マツダ・12A型エンジン」の記事における「排気ガス規制対応と燃費改善」の解説
1973年から1981年までの期間。この間は、エンジン型式としてサブタイプの呼称もない。主として、排気ガス規制対応のシステムによって内容が異なる。 REAPS1: 1970年から1972年。アメリカのカリフォルニア州では、光化学スモッグ対策のため他州よりも厳しい排気ガス規制を行っていた。REは、NOxの排出は少ないがHCの排出が多いので、HC対策をとらないとアメリカのカリフォルニア州での販売ができなかった。REのHC対策として、排気管内に二次エアを供給し、HCを強制的に再燃焼させるためのサーマルリアクター技術を用いる浄化システムを採用した。サーマルリアクターでの酸化を促進させるために空燃比をリッチ側(13:1)にセットしているので燃費が悪かった。エンジンには、補機として、二次エア供給用のエアポンプ・二次空気制御用のコントローラが付加されている。キャブレタがセミオートチョークに変更になっている。出力は、120psが115ps/130psが125psへと5ps低下している。*エンジン本体 ・ローターハウジング排気ガス温度の低下を防止するために、3孔のハニカムポートから1孔のポートに変更。排気ポートの出口側にポートライナを設置して排気ガスがハウジングに直接触れないようにして温度低下を防止した。 また排気ポート内に排気ガスの流れに対して垂直方向に二次エア噴霧ノズルを設置した。 *エアポンプ サーマルリアクターの反応用二次エアとサーマルリアクターの冷却用空気の空気を送るためにベーンタイプのエアポンプを採用し,エンジン前面のVベルトで駆動した。 *コントロール装置 点火時期と二次エア流量のコントロールを同時に行う装置を採用。点火時期としては、リーディング側のみ点火を行う範囲を本装置にて新規に設定した。 *サーマルリアクタ 三重の一体溶接構造で、反応室の外側に冷却エア通路とインシュレーター層を設けている。排気ポートからのインレットパイプが反応室の中に設置され、排気ガスの反応室での滞留時間を増加させ、燃焼効率を上げるようにしている。 *プロテクター 排気ガス処理に伴い排気菅の温度が上昇するので、サーマルリアクターからプリサイレンサーまでの排気菅にプロテクターを設置して、枯れ草の排気菅への接触時に発生する火災のリスクを軽減している。 REAPS2: 1972年から1974年。REAPS1を改良して、アメリカのマスキー法や日本の50年規制対策車として市販された最初の量産車。REAPS1の構造をベースに、減速時のエンジンの不整燃焼により発生するアフターバーンを防止するために、コースティングリッチャを設け、燃料の供給状況を改善した。また 燃焼温度がREAPS1より上がるので、排気菅全体をプロテクターで覆うようにした。 REAPS3: 1973年から1974年。サーマルリアクターの形状を反転型に変更して、サーマルリアクターの反応性を改善。13Bに採用した技術を取り入れた。 REAPS4: 1974年から1975年。エンジンのガスシール性の改善/サーマルリアクターの反応性の改善/2次エア制御の改善の3項目によりREAPS3より約20%の燃費改善を実施 REAPS5: 1975年から1978年。エンジン本体で一時側吸気ポート形状の変更/サーマルリアクターの反応性改善のため熱交換器による二次エアの加熱等の改善により気化器のセッティングをリーン側へ移行させることでREAPS3より約40%の燃費改善を実施 希薄燃焼型ロータリーエンジン: 1979年から1981年。三元触媒を排気ガス対策に採用。REは、レシプロより未燃HCの排出が多いのでそのまま触媒で反応させると触媒が高温になり、触媒の熱劣化等の技術的問題があった。そのため 触媒に入る前のHCの排出量を、エンジン本体の改良と触媒流入前の前処理により削減させる必要がある。エンジン本体の改良としては、「ガスシール性の改善」「点火エネルギーの向上」「減速時の失火の防止」でエンジンから発生する未燃HCを削減する。*ガスシール性の改善 アペックスシールの分割位置を、サイドからアペックスシール摺動面(トップ)へ移動して、アッペクスシールからの混合気も漏れを低減させた。 *点火エネルギの向上 着実に点火させるために高エネルギ点火システムを開発。無接点式ディストリビューター・ICイグナイター・高エネルギ点火コイル・ワイドギャップ点火プラグが採用された。点火プラグは、4極タイプになり、リーディング側の点火プラグの電極位置を燃焼室側へ3mm近づけ着火性を向上させた。 *減速時の失火防止 減速時に発生する失火を防止するために、リア側の吸気通路にシャッターバルブを設置して、減速時に混合気をフロント側のみに吸入させて充填効率を二倍に上げて安定燃焼をさせている。 *触媒に入る前処理としては、「排気ポート内での未燃HCの酸化」が挙げられる。 排気ポートに空間を設けて、低速域および減速時に排気ポートに二次空気量を吹き込みこみ、未燃HCの酸化を行う。サーマルリアクターとの違いは、高温での処理を行わない(あくまでメインの浄化システムは触媒)ことである。 *排ガス対策の触媒は、「2ベッド型触媒コンバータ」を採用し、反応性と耐久性を向上させている。 具体的には、低速域と減速時には、触媒は酸化触媒として機能する。二次空気が排気ポートに供給され、触媒に排ガスが入る前にHCとCOを酸化させて触媒の孵化を低減後触媒で酸化を行う。中高速域では、排気ポートへの二次空気はカットされ、前方の触媒が三元触媒として働く。後方の触媒には、二次空気が供給され酸化触媒として機能してHCとCOを浄化する。 結果としては、気化器のセッティングを理論空燃比に設定することによって、REAPS5より約20%の改善を実施。 6PI: 1981年から1985年。1ローターあたり2個のインテークポートにシリンダー状の回転するバルブを有する補助ポートが追加される。この補助ポートのバルブは、エンジン負荷によって開度が調整される。(6-PI)結果として、1ロータあたりの吸気ポート数が従来の2個から3個になり、低回転域ではプライマリポートのみ/中回転域ではプライマリポート+セカンダリポート/高回転域ではプライマリ+セカンダリ+補助ポートが動作することになる。この結果、プライマリポートのオープンタイミングを遅らせることが可能となり、排気ポートとのオーバーラップ削減し充填効率を高めることが可能になった。またプライマリポートの面積を小さくして、混合気の微粒化を改善することで、燃費と低速トルクの改善を行っている。
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排気ガス規制対応と燃費改善
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「マツダ・13B型エンジン」の記事における「排気ガス規制対応と燃費改善」の解説
1973年から1981年までの期間。この間は、エンジン型式としてサブタイプの呼称もない。主として、排気ガス規制対応のシステムによって内容が異なる。この期間は、全て4バレルキャブレタを採用している。 REAPS3: 1973年から1974年。REはNOxの排出は少ないがHCの排出が多いため、排気ポートへの二次エアの供給によりHCの燃焼熱で安定した浄化反応が得られる。そのため、排気ポートにサーマルリアクタを設置する浄化システムを採用した。サーマルリアクタに関しては、反転型を採用して浄化性能を向上させている。 REAPSでは、サーマルリアクターでの酸化を促進させるため、空燃比をリッチ側(13:1)にセットしており燃費が悪かった。 REAPS4: 1974年から1975年。エンジンの「ガスシール性の改善」「サーマルリアクターの反応性の改善」「2次エア制御の改善」の3項目により、低速トルクを改善して全体のギア比をハイギヤードにすることによってREAPS3より約20%の燃費改善を実施。 *ガスシールの改善アペックスシールとコーナシールの形状を改善して、シール性能を上げて混合気の漏れを低くした。その結果 トルク向上に伴う走行時のスロットル開度の減少と、エンジン内部での燃焼改善による気化器のリーンセット化を可能として、燃費改善に大きな効果を示した。 ・アペックスシール材質は、特殊鋳鉄の側面分割の2分割シールであるが、シール頂点からの側面シールと本体側シールの分割位置の距離を短くして混合気の漏れ口を少なくした。また、メインピースには、すずめっきを施し初期なじみ性を向上させた。サイドピースは、焼結合金製である。 ・コーナシール今までは、コーナーシールは、アペックスシールの挿入部分のみに溝を切ったムクの形状であったが、アペックスシール溝の下部の中心部をくり抜き(肉抜き)を行い、半径方法に弾力を与え、ロータのコーナーシール溝とのクリアランスを狭くし、ガス漏れ面積を減らすことができた。更にこの方式では、アペックスシールを持ち上げる混合気がコーナーシールの肉抜き部に入り、混合気の圧力で内部が膨張することによって、コーナーシールがロータに更に密着することになって混合気の漏れ部を抑えるようにした。 *サーマルリアクターの反応性の改善ロータハウジングの排気ポート部に挿入しているポートライナをピンによる固定に変更して、熱伝導面積を減少させた。 また サーマルリアクタ内部の板厚を下げ熱容量を低下させると同時に、外部のインシュレータ厚を熱くして保温性を向上させてサーマルリアクタの反応性を改善した。 *2次エア制御の改善2次エアの排気ポートへの供給は、従来からのエアインジェクションノズルに加えて排気ポートインサートの先端から供給するようにして、排気ガスへの混合を促進するようにした。 REAPS4E: 1975年 REAPS4にサーマルリアクターの反応性改善のため熱交換器による二次エアの加熱を追加したもの。ロードペーサのみに搭載 REAPS5: 1975年から1978年。エンジン本体で「一次側吸気ポート形状の変更」「サーマルリアクターの反応性改善のため熱交換器による二次エアの加熱」等の改善により気化器のセッティングをリーン側へ移行させることで、REAPS3より約40%の燃費改善を実施 *一次側吸気ポート形状の変更混合気を燃焼室の進み側に導入して、軽負荷時の燃焼効率を改善すると同時に、吸気ポートの締めるタイミングを早め低速トルクを向上させた。 *二次エアの加熱サーマルリアクタの反応性を改善するために、サーマルリアクタの容量拡大に合わせて、サーマルリアクタから反応後の排気ガスによる二次エアの加熱を行い、サーマルリアクタに入る前の排気ガスの温度低下を防止してサーマルリアクタの反応性を改善した。この二次エアの加熱によって、車の最後尾における排気ガスの温度が大幅に下がることになった。 希薄燃焼型ロータリエンジン: 1979年から1981年。三元触媒を排気ガス対策に採用 REは、レシプロより未燃HCの排出が多いのでそのまま触媒で反応させると、HCの酸化により触媒が高温になり、触媒の熱劣化等の技術的問題があった。そのため 触媒をREで使用するためには触媒に入る前のHCの排出量を、「エンジン本体の改良」と「触媒に入る前処理」により削減させると同時に触媒自体の熱劣化性の改善の必要がある。 エンジン本体の改良としては、「ガスシール性の改善」「点火エネルギの向上」「減速時の失火の防止」でエンジンから発生する未燃HCを削減する。 ・ガスシール性の改善アペックスシールの分割位置を、サイドからアペックスシール摺動面(トップ)へ移動して、アッペクスシールからの混合気の漏れを低減させた。 ・点火エネルギの向上着実な点火で失火を防止するシステムとして、高エネルギ点火システムを開発。無接点式ディストリビュータ・ICイグナイタ・高エネルギ点火コイル・ワイドギャップ点火プラグが採用された。点火プラグは、4極タイプになり、リーディング側の点火プラグの電極位置を燃焼室側へ3mm近づけ着火性を向上させた。 ・減速時の失火防止減速時に発生する失火を防止するために、リア側の吸気通路にシャッタバルブを設置して、減速時に混合気を全てフロント側に充填吸入させて充填効率を二倍に上げて安定燃焼をさせている。 触媒に入る前処理としては、「排気ポート内での未燃HCの酸化」が挙げられる。排気ポート出口直下に空間を設けて、低速域および減速時に排気ポートに二次空気を吹き込みこみ、未燃HCの酸化を行う。サーマルリアクタとの違いは、高温での処理を行わない(あくまでメインの浄化システムは触媒)ことである。 排ガス対策の触媒は、「2ベッド型触媒コンバータ」を採用し、反応性と耐久性を向上させている。具体的には、低速域と減速時には、2個の触媒は酸化触媒として機能する。二次空気が排気ポートに供給され、触媒に排ガスが入る前にHCとCOを酸化させて触媒の負荷を低減後触媒で酸化を行う。中高速域では、排気ポートへの二次空気はカットされ、前方の触媒が三元触媒として働く。後方の触媒には、二次空気が供給され酸化触媒として機能してHCとCOを浄化する。 結果としては、気化器のセッティングを理論空燃比に設定することによってREAPS5より約20%の改善を実施。 13Bは、1981年に12Aのターボ搭載のめどがたったことによって、生産が中止される。
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