小人
『親指小僧』(グリム)KHM37 百姓夫婦に親指の大きさの子が生まれ、親指小僧と名づけられる。親指小僧は馬の耳に入って馬方の仕事をし、泥棒の仲間になるふりをしつつ大声で人を呼び、牛や狼に呑まれたりする冒険の末、家に戻る。
『親指小僧』(ペロー) 木樵りの7人の息子は、長男が10歳・末子が7歳だった(つまり双子が何組かいた)が、末子は身体が弱く小さく、生まれた時は親指ほどの大きさだったので、親指小僧と呼ばれた→〔闇〕2。
『小男の草子』(御伽草子) 大和国に丈1尺、横8寸の小男がいた。男は上京し、清水参詣の美女を見そめ、すぐれた歌を詠んで美女の心を得、夫婦となる。後、男は五条天神・女は道祖神となった。
『親指姫』(アンデルセン) チューリップの花のめしべから生まれた女の子は、親指ほどの大きさだったので親指姫と呼ばれた。親指姫は、ヒキガエルやモグラの花嫁にされそうになるが、魚や燕に助けられる。親指姫は、白い花の上にいた美しい小さな王子と出会い、結婚して、花の女王様になる。
穀物の神・矮姫(サヒメ)の伝説 矮姫は、人並みならぬ小さな身体だった(*→〔遺言〕5)。彼女は赤雁の背に乗り、日本の島根地方へ渡って、さまざまな穀物の種をまいた。また、人々の脅威であった足長土(あしなづち)の神に妻を与えて東国へ旅立たせ(*→〔二人一役〕2)、島根一帯を「安国(やすくに)」(あるいは「心安国(うらやすぐに)」)となした(島根県那賀郡三隅町)。
★2.小人の国。
『御曹子島渡』(御伽草子) 御曹子義経は蝦夷が島を目指して船出し、途中、背丈1尺2寸ばかり、扇の長さほどの人たちが住む小さ子島に着く。そこは菩薩島ともいい、昼夜3度ずつ25菩薩が姿を現し、住人の寿命は8百歳だった。
『ガリヴァー旅行記』(スウィフト)第1篇 「私(ガリヴァー)」の乗った船は1699年5月4日にブリストルを出航したが、半年後、暴風雨のため南太平洋上で難破した。「私」は、身長6インチ足らずの小人たちが住むリリパット国に漂着し、1年9ヵ月余りをそこで過ごした。
『風流志道軒伝』(平賀源内)巻之3 浅之進(志道軒)は、風来仙人から得た羽扇で空を飛び、身長1尺2~3寸の人たちが住む小人島に降りる。奥へ行くほど人は小さく、5寸・3寸の人があり、奥小人島に到れば豆人形ほどであった。
『海の水はなぜからい(塩挽き臼)』(昔話) 森の神様のお堂の後ろに穴があり、そこに小人たちが住んでいる。小人たちは宝物の石の挽き臼を、訪れた貧しい男に与える。その挽き臼は、右に回せば欲しい物がいくらでも出、左に回せば止まるのだった(岩手県上閉伊郡)。
『魔法を使う一寸法師』(グリム)KHM39「一番目の話」 靴屋が翌日の仕事のための革を用意して、翌朝起きると、いつのまにか靴ができあがっている。何日もそれが続くので、夜見張っていると、裸の一寸法師2人が来て、せっせと靴を縫う。靴屋夫婦は返礼に、一寸法師に服を作ってやる。一寸法師は以後来なくなったが、靴屋は生涯幸せに暮らした。
コロポックルの伝説 アイヌ来住以前から、北海道にはコロポックルという小人たちがいた。彼らは絶対に姿を見せないが、川や海で獲った魚を、深夜にアイヌの家の前へ置いて行った。コロポックルの姿を見たいと思う若者が、ある夜1人をつかまえたが、逃げられてしまった。コロポックルは背丈1メートルほどで、顔にいれずみをしていた。この出来事の後、コロポックルたちは皆どこかへ行ってしまったらしく、魚が届くこともなくなった(北海道宗谷宗谷郡猿払村)。
『ちんちん小袴』(小泉八雲) 毎夜、丑の刻に、身の丈1寸ほどの小人が何百となく、武士の若妻の枕元に現われて、「ちんちん こばかま 夜も更け候・・・」と歌い、踊る。小人たちは裃を着て、刀を差していた。夫が小人たちに刀を振りかざすと、たちまち彼らは無数の楊枝になった。若妻は怠け者で、自分の使った楊枝を片付けず、畳と畳の間に刺し込んでいた。それらの楊枝が、小人に化したのである。
*夜中に、背丈5寸の小人が10人ほど現れる→〔うちまき〕1aの『今昔物語集』巻27-30。
★7.海から来る小人。
『古事記』上巻 オホクニヌシが出雲の御大(みほ)の御前(みさき)にいた時、たいへん小さな船に乗った神が、海の向こうから波の上を渡って近づいて来た。この神はスクナビコナで、母神カムムスヒの手の指の間から、漏れこぼれた子供だった(*→〔手〕7)。スクナビコナはオホナムヂ(=オホクニヌシ)と力を合わせて国を造り固め、後、常世国へ去って行った〔*『日本書紀』巻1・第8段一書第6では、スクナビコナは淡嶋へ行って粟茎(あはがら)に登り、弾かれて常世郷(くに)へ行った、と記す〕。
浪小僧(『水木しげるの日本妖怪紀行』) 曳馬野(ひくまの。現・浜松市)に住む少年が、田を耕して小川で足を洗っていると、草むらから、親指ほどの小さな子供が呼びかけた。「私はこの前の海に住む浪小僧です。大雨に浮かれて陸へ上がりましたが、日照りになってしまい、家に帰れません。どうか海までお連れ下さい」。少年は、浪小僧を海まで送ってやった→〔波〕3。
『一寸法師』(御伽草子) 背1寸で生まれた一寸法師は、12~13歳まで育てても人並みの背丈にならなかった。彼は家を出て都の宰相殿に奉公し、16歳の時、姫君とともに興がる島(きょうがるしま)へ行って、鬼から打出の小槌を奪い取る。小槌を打って背丈を大きくし、金銀もたくさん打ち出して、一寸法師と姫君は都へ上る。2人の間には、若君が3人できた。
★8b.小判が出て来るのと引き換えに、一人前の人間が縮んで小人になる。
『宝下駄』(昔話) 欲ばり男の権造(ごんぞう)が、1本歯の下駄を得た。この下駄をはいて転ぶと、転ぶごとに小判が出て来る。けれども、あまりごろごろ転んでいると、背が低くなる。権造は何度も何度も転び、小判は山のように出て来たが、権造の身体はしだいに小さくなり、しまいには虫のようになってしまった。今いる「ごんぞう虫」という虫は、この欲ばり権造がなったものだ(岡山市)。
*身体が無限に小さくなるが、ゼロにはならない→〔無限〕1の『縮みゆく人間』(マシスン)。
『踊る一寸法師』(江戸川乱歩) 三十男の顔に子供の胴体がついた一寸法師の緑(ろく)さんは、曲馬団の仲間から、いつもからかわれ、いじめられていた。ある夜、彼は怒りを爆発させ、美人玉乗りのお花を、胴体串刺しの見世物に使う箱に入れ、何本もの日本刀で突き殺す。さらに、青龍刀で首を切断し、テントに火をつける。月光の下、一寸法師はスイカに似た丸いものを、提灯のようにぶら下げて、踊り狂った。
*首と西瓜→〔首〕5b。
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